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第8章 泣き虫な王子様
(13)王位継承権
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ナハンネの不機嫌な目は老人を伴って歩きながらも鋭く周囲を威圧して、護衛を買って出たシュタイナーの部下にさえ眉目をひそめさせる。
「全く、ガキのような見かけのクセにいちいちマウンテングするんだからやってられないわ。あのガキ、いつか引きずり下ろしてやる」
本人のいない前では公言して憚らない。
「お前さんのその口は、その身を滅ぼすものだ」
「あら、クサカリ。あんた、減らず口叩いてないで、ジェレメールをなんとかしてよ」
ナハンネも、ジェレメールが死んでしまっては旨い汁を吸えなくなる立場だ。クサカリは扇に口許を隠して笑う。
「ふふ、目星が付けば直ぐにマニス様にお知らせするがな」
「マニスにではなく、私に知らせて」
「お前さんの企みを私が知らないとでも思っておるのか」
ナハンネは顔色を変えた。
「クサカリ……」
ナハンネの手下も、ナハンネの背後に回ってクサカリ老人と対峙する。クサカリ老人の側にはシュタイナーの部下が付く。二人、睨み合うともなく見つめ合う。
二波に別れたマニスの手先は、ナハンネが後宮の側女、第七夫人までいる王様の二十人目か三十人目かわからないお手付き女で、第八夫人に昇る可能性のある立場だ。
却ってクサカリは、この男は危うい骨董品に似て何者なのか正体不明だが、王宮殿に常駐してジェレメールだけでなく第一王子とも通じており、世界を知る者として重宝されている骨董の目利きだ。
「お前さんの立場なら仕方のないことだが、殿下を呼び捨てにはせぬ方が身のためだ」
「ふん、何も知らないクセに」
私が妊娠したら……
ナハンネは、そうなったら第一王子と第二王子のジェレメールも邪魔になると考えている。
しかし、ジェレメールはナハンネの味方をしてくれているのだ。王位継承権の為だが、それがわかっていても手を組まなければならない。
第一王子は早くに結婚したが子供ができず、夫人を次々と与えても寝所も訪ねず、おかしな噂を振り撒かれて、その噂は下々まで広がった。
王位継承者としてはジェレメールが優位なのだが、第一王子の近辺がそれでおさまるはずがない。第一王子は教養と人間性と優れた外見と語彙力があり、国政に参加している。
ジェレメールは活動的で弁論が得意な堂々とした王になるだろう予想のつく、明るく爽やかな性格で愛されている。
どちらも一歩も引かない王位継承権争いの主人公たちだ。
クサカリは「ふふ」と扇の影で笑う。
ナハンネは「第一王子の手先としてやって来たんじゃないわよね」と言いたげな鋭い目付をぶつけた。
「全く、ガキのような見かけのクセにいちいちマウンテングするんだからやってられないわ。あのガキ、いつか引きずり下ろしてやる」
本人のいない前では公言して憚らない。
「お前さんのその口は、その身を滅ぼすものだ」
「あら、クサカリ。あんた、減らず口叩いてないで、ジェレメールをなんとかしてよ」
ナハンネも、ジェレメールが死んでしまっては旨い汁を吸えなくなる立場だ。クサカリは扇に口許を隠して笑う。
「ふふ、目星が付けば直ぐにマニス様にお知らせするがな」
「マニスにではなく、私に知らせて」
「お前さんの企みを私が知らないとでも思っておるのか」
ナハンネは顔色を変えた。
「クサカリ……」
ナハンネの手下も、ナハンネの背後に回ってクサカリ老人と対峙する。クサカリ老人の側にはシュタイナーの部下が付く。二人、睨み合うともなく見つめ合う。
二波に別れたマニスの手先は、ナハンネが後宮の側女、第七夫人までいる王様の二十人目か三十人目かわからないお手付き女で、第八夫人に昇る可能性のある立場だ。
却ってクサカリは、この男は危うい骨董品に似て何者なのか正体不明だが、王宮殿に常駐してジェレメールだけでなく第一王子とも通じており、世界を知る者として重宝されている骨董の目利きだ。
「お前さんの立場なら仕方のないことだが、殿下を呼び捨てにはせぬ方が身のためだ」
「ふん、何も知らないクセに」
私が妊娠したら……
ナハンネは、そうなったら第一王子と第二王子のジェレメールも邪魔になると考えている。
しかし、ジェレメールはナハンネの味方をしてくれているのだ。王位継承権の為だが、それがわかっていても手を組まなければならない。
第一王子は早くに結婚したが子供ができず、夫人を次々と与えても寝所も訪ねず、おかしな噂を振り撒かれて、その噂は下々まで広がった。
王位継承者としてはジェレメールが優位なのだが、第一王子の近辺がそれでおさまるはずがない。第一王子は教養と人間性と優れた外見と語彙力があり、国政に参加している。
ジェレメールは活動的で弁論が得意な堂々とした王になるだろう予想のつく、明るく爽やかな性格で愛されている。
どちらも一歩も引かない王位継承権争いの主人公たちだ。
クサカリは「ふふ」と扇の影で笑う。
ナハンネは「第一王子の手先としてやって来たんじゃないわよね」と言いたげな鋭い目付をぶつけた。
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