ゲイバージキルハイドへようこそ

藤森馨髏 (ふじもりけいろ)

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お前の未来は見えた

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占い師の游湖ユウコが薄く引いた。

こいつは同胞の人間を軽蔑して生きている。でなければ喰っているのか嘲笑っているのどちらか。

腹黒い奴ではあるが、こいつを腹黒と言ってしまうと、俺様はその上を行くことになってしまう。

「ねえ、スメラギ。お前さんはこのヒトにどうやって帰ってもらう」

俺様に聞くな
それと、俺様の名前は
エンペラー深遠みおん
スメラギミオンだと
思っているのか
いつもいつも
当然のように間違えるなよ
抱っこされるときに
爪を出してやるぞ

占い師の真正面にいるのはオカマだ。ほとんど女と変わらない見かけだが、まだ息子がついていると言う。

ここはゲイバー「ジキルハイド」の真下に当たる三十二階の占いの部屋。「ジキルハイド」と秘密裏に往き来できる階段がある。

立場のあるVIPの出入り口だから、王宮殿のような造りだ。街には脱落者がゴロゴロしているのに、金を掛ける処が間違っている。

「帰すつもりなのっ。アンタ、アタシを釜茹でにしておいてからそれはちょっと酷くないっ」

そうそう、このオカマ。かなり息巻いているこのオカマの名前は黒子台瑠花クロコダイルか

シミなく輝いているノーメイクみたいに見える肌と、ツケマツゲ三枚重ねで瞬きの度にバサバサ音が鳴るデカ目メイクは、見る者を生き地獄に引き込もうという下心丸出しだ。

頭はヘアピースで膨らみ大きなイヤリングで耳たぶが仏像のように垂れている。赤い衣服と黒いショール。占い師に負けない数の指輪にブレスレット。

家にある貴重品全部身につけているのは治安が悪い地方から出てきた性なのか。逆に狙われるぞ。

「酷くないと思います」

「エセ占い師は直ぐに帰そうとするのよね。いつもいつもアンタの占いはアタシの人生の邪魔ばかりして、まるでボンビー商店街のくじ引きみたいよね。イイ奴に当たった試しがないわよ。ほれ、今日だってこのカードよ。これさぁ、この前、恋人のカードって言わなかったっけ」

向き合う男女のカードか。
おい、それはな、出会いのカードだ。恋人になれるかどうかはお前次第だろう。ふふん、失敗したんだな。

「ですから、このカードと組合わさるカードが良ければ恋人のカードになるんですけどね。でも、今回は詐欺に遭いそうな具合ですからね。新しい出会いにはお気をつけて……」

「だから、何でそうなるのっ。また、詐欺。結婚詐欺。買い物詐欺。恋人詐欺。デート詐欺。配管調査詐欺。どんだけ詐欺にかかれって言うのよ、全く。結構詐欺だらけよっ」

わははは……
占い師が引くのもわかるが、それだけ詐欺に遭ってもまだ懲りないのか。マシンガンが手に入ってもこのオカマを殺すのだけはやめておこう。哀れすぎる。

それから、うちの店「ジキルハイド」はゲイバーだが、オカマは立入禁止だということを徹底的に教えなくてはな。何だかんだと文句を言っては三十三階への階段を上がろうとするのはご法度だ。

階段に敷かれたクッションの上で、俺様がふんぞり返って阻止しているうちは、噂でしか知らない「象を倒す蟻」くらいしか通させはしないさ。

オカマバーは他にあるからそこに行け。女装コスプレバーも他所にある。このビルの中にな。

うちは純粋なゲイバーだ。ランクも高い。つまりは、客層が貴族並みなのさ。

黒子台瑠花の落胆ぶりには俺様の同情という奴もすっかり騙されてしまうが、こいつはめげないオカマだ。

「アタシがわざわざピンヒールの靴底を減らしてやって来る訳を知りたい。アタシは親切だから、アンタみたいにぼったくらないで無料で教えてあげるわよ。アタシはね、セックス目当てのバカなんかいらないのよ。ちゃんとした恋人がほしいの。それも、大金持ちのね。こんな当たりもしない占いよりも直接アクセスした方が成功率が高いとわかっているから、三十三階に行きたいの。じゃあ、邪魔しないで」

「ま、待ってください。本当に今夜は駄目なんです。見てください」

おや、三枚のカードだな
フムフム、これは
一枚目は倒れた大木と木こり
二枚目は目隠しされた子供
三枚目は燃える家
危ないではないか

「これは、悪い出会いによってあなたに悪運が訪れるということを示しています。この、燃える家は滅多に出ません。全てを失うという意味ですから、命の危険もあります」

「命の危険って、そんな出会いなんか求めてないから」

「この木こりは『変革』を表します。組み合わせによっては良いカードなのですが、これは盲目的な幼児のあなたを打ち倒すと……」

「待って。それ、恋愛占いよね。やっぱりアンタってバカよね。人間って、何もかも失うような恋愛なんて、できないんじゃない。私の周りにはいないわよ、そんな頭の悪いオカマなんて」

「頭ではなく心の問題です」

「だから、いない……あ、いたわ。貢ぎまくって死んだ子が……」

俺様はふと、何故か意地悪な気分になって階段から降りてみた。俺様の愛人だったオーナーが死んで「ジキルハイド」は新オーナーが引き継いだ。

オカマよ、黒子台瑠花
お前さん
命がけの恋愛で
死んでみるか……








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