雫 -SIZUKU- 最終特異少年戦記~破

ユキナ

文字の大きさ
4 / 55
第1章 蒼月の侍

三話 第十二軍団長の落胆

しおりを挟む
「死ぬ前に、奇襲という大それた事を仕出かした、貴様の目的でも聞かせて貰おうか?」


アルマは鞘から大剣を抜きつつ、蒼髪の男に問い掛ける。


勿論、どんな返答でも殺る事に変わりは無い。どんな理由が有るにせよ、部下を一名殺されているという事実。その報いは死を以って、贖わなければならない。


「奇襲?  虫相手にそんな大それた事する理由が無いな。噂の当主直属部隊とやらを殺ったとかいう奴の事を、聞いてみたかっただけだ。まあ、ここまで大袈裟になってしまった以上、面倒だが駆除するしかないな……」


蒼髪の男は怯む事も無く平然と言い放つが、それに対しアルマは、頭に血が昇っていくのを実感していく。


“こいつ、我々の事を虫……だと? しかもこいつは自分の置かれた状況も垣間見ず、まるで我々に興味が無いとでも言わん態度ーー”


“許せん!!”


アルマは今すぐにでも斬り掛かりたい衝動を抑え、腕に装着したサーモの測定ボタンを押す。


部下の手前、取り乱すといった失態は見せられない。此処は冷静な判断を。


瞬時に蒼髪の男の、侍レベルが数値化される。


サーモの液晶画面に表示された侍レベルを見て、アルマは思わず噴き出しそうになるのを堪える。


「フッ……侍レベル、たったの二十一だと?  やけに自信有りげだから、どれ程の者かと思いきや……」


アルマはその数値に笑うというよりは、むしろ落胆していた。


本当の強者で在れば、尋常の勝負として申し分ない。だが一般兵卒以下の者等、闘う価値も無い。


結論ーー


“やはりこいつは只の、身の程知らずの馬鹿だ”


「アルマ様が闘う迄もありません。この様な者、我々で充分です」


軍団員が我も我もと、アルマに戦闘の意思表示を告げる。


「好きにするがいい……」


アルマは完全に、蒼髪の男への興味を失っていた。


“狂座第十二軍団長アルマーー侍レベル96”


レベルカテゴリーという枠内に於いては、トップクラスの実力者で在る事に間違い無い。


侍レベル21との対比は、象と鼠の闘い位の差がある。最早それは勝負として成立せず、只の虐殺にしかならない。


「そんな玩具に頼りきってるようでは、十二軍団とやらも長くないな。まあ、すぐに終わる事になるがな」


蒼髪の男は、この期に及んでまだ不敵な態度を崩さない。


「どうやら死への恐怖で狂ったみたいだぜ」


「ハハハハハッ、馬鹿かこいつは」


誰もが蒼髪の男を、身の程知らずと罵る。


アルマのみならず、軍団員の誰もがこの蒼髪の男より強い。


そう、あくまで表面的なレベルカテゴリーという“通常枠内”に於いては。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

お姫様は死に、魔女様は目覚めた

悠十
恋愛
 とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。  しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。  そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして…… 「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」  姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。 「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」  魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……

廃城の泣き虫アデリー

今野綾
ファンタジー
領主の娘だったアデリーはある日家族を殺され育った領地から命からがら逃げ出した。辿り着いた先は廃城。ひとり、ふたりと住人が増える中、問題が次々とおこって… 表紙はフリー素材です

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

【完結】お父様の再婚相手は美人様

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 シャルルの父親が子連れと再婚した!  二人は美人親子で、当主であるシャルルをあざ笑う。  でもこの国では、美人だけではどうにもなりませんよ。

レオナルド先生創世記

ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...