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第2章 帰依

九話 作戦

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「今日は姉様と一緒に寝る~☆」


ーーそろそろ床に着く時刻。ミオが重度としか言い様が無いシスコン振りで、姉のアミに甘えた。


「あ! ちなみにユキは蚊帳の外なんだから、離れたとこで寝なさいね」


ミオがユキへ向けて、手をひらひらと動かす。所謂あっちいけジェスチャー。


「聞き捨てなりませんねミオ。アミと一緒に寝るのは私です!」


珍しくユキが、むきになって反論した。自分の中で譲れない線が有るのだ。


「はぁ? 何寝ぼけた事言ってんの! これだけは譲れないわよ!」


「それはこちらの台詞です!」


売り言葉に買い言葉。お互いに譲れぬ想い。


“――また始まった……”


「やる気!?」


「受けて立ちますよ」


些細な事で張り合おうとする二人に、アミはため息を漏らすしかない。


三人一緒に寝ようという考えが、二人の頭には無いらしい。


“――あっ! 良い事思いついちゃった”


子供みたいに(実際子供だが)いがみ合っている二人を尻目に、アミにある考えが浮かぶ。その表情は悪戯っぽく笑みを浮かべていた。


「はい、二人共喧嘩はやめなさい」


アミは二人の間に仲裁に入る。


「だって姉様、ユキが!」


「人のせいにしないでください!」


勿論これは本気でいがみ合っているというよりは、本当の意味での子供の喧嘩だ。


ミオはともかく、ユキがこんなにも感情を顕にするのは本当に珍しい事。アミはそれが微笑ましかったが、先ずは現状を解決せねばならない。


「二人共こんな事で喧嘩しないの。これから何時でも一緒に寝れるでしょ?」


そう、これはごもっともな事。だが子供同士の喧嘩に、ごもっともという正論は通用しない。


「し……しかしですね」


「そうよ! 私は納得いかない!」


“はぁ……この調子じゃ、これから先が思い知らされるわ。やっぱりここはーー”


「いい加減にしなさい! 喧嘩した罰として、今日は二人で寝る事」


それがアミが考えていた事。


やはりお互い打ち解けるには、同じ布団で一緒に寝る事が一番と。


「じょっーー冗談でしょ姉様!?」


「そうですよ! 何でそんな馬鹿な事を……」


アミの提案に、当然の如く二人は目を丸くさせて反論した。


「二人で寝る事。いい?」


二人の意見等、全く意に介さないアミの口調は穏やかだが、表情は笑っていない。


「はっ……はい姉様!」


「わ……分かりました」


その有無を言わせぬ圧力にはミオはおろか、ユキまで牢籠ぐ。不本意ながら二人共、押し黙り従うしかなかった。
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