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第3章 似て非なる者

四話 対峙

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――――同時刻――――


アミとユキは家内にて、今夜の夕食へ向けての準備の真っ最中であった。


「狂座の者が攻めて来たぞぉ!!」


突如、家外にて叫び声が響き渡った。


「アミ!」


まさか白昼堂々攻めて来るとは思っていなかったのか、ユキも思わず声を上げる。


“――嘘!? まさかここまで気付かれずに侵入してくるなんて……”


アミは狂座の者の侵入に対して、自然の警告の声が聴こえなかった事を疑問に思うが、今はそれ処では無い。


再び闘いが始まる。ユキは既に雪一文字を腰へ差していた。


ミオはまだ、帰って来ていない。


「ユキ!」


二人は顔を見合せる。


ミオ一人で狂座の者を相手にするのは、さすがに分が悪い。アミですら、狂座の師団長クラスには及ばないのだから。


「ミオが危ない!」


「急ぎましょう!」


ユキの号令を皮切りに、二人は家を飛び出したのだった。


“――果たして、どれ程の者が?”


家を飛び出し、二人走る最中ユキは攻めて来た狂座に対する戦力思考を施す。


師団長や軍団長クラスなら、彼にとっては全く問題では無い。ただもし、いや十中八九そうだろう。当主直属部隊クラスが相手ならと考える。


勝てるかどうかも難しい上、周りにも多大な犠牲を出しかねない。


出来れば侵入する前に、片付けたかったと。


「ミオちゃんが敵に捕まっている。急いで!」


途中、前方から走ってきた住人に、すれ違い様に二人は声を掛けられる。


「ミオ……」


妹を心配するあまり、アミは表情が蒼白に引きつりながら呟く。


最悪の事態は回避せねばと、二人は走る速度を更に早める。そして、漸く見えてきた。


八間(約18M)程先にへ垂れ込んでいるミオに、それを見下ろしている一際目立つ蒼髪の人物の姿を。


周りには住人達が、恐れおののく様にがやついていた。


「アイツは!!」


ユキはその蒼髪の人物を目視確認するなり、目を見開きながら口を開いていた。
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