36 / 55
第5章 阿鼻叫喚~ 辺獄空間の死闘
五話 水の龍
しおりを挟む
その姿は正に、空想伝説上の“龍”そのものであった。
ゴクリュウ エンスイレキ
“獄龍 閻水礫”
流派として伝えられる事は無い、特異点シグレのみが考案した特異能との複合剣ーー“蒼閻剣”の秘奥。
その巨大な水龍は、まるで生きているかの様に蠢いている。
その威圧感に誰もが震撼。それはまるで“地獄”からの使者で在るかの如く。
「喰らい尽くせ……」
シグレの号令を皮切りに、水龍が獲物と定めたかの様に、倒れて動けないユキへとその矛先を向ける。
「に……逃げ……」
“――逃げてユキ!!”
上手く声を出す事が出来ないアミの、その心の叫びは届かない。無情にも水龍は倒れている彼へ、猛然と襲い掛かる。
その小さな身体の全てを喰い尽くすが如く、水龍は地面を抉り、其処は破裂し凄まじい程の水飛沫が巨大な水柱に見えるかの様に吹き上がった。
“――生きて……る?”
水龍が直撃した筈だった直後の出来事。そして疑問。
“生きている筈がない”
距離的にも状況的にも、あの水龍を避けられる筈は無かったからだ。
「――はっ!?」
だが、その疑問はすぐに氷解する事になる。何故なら肌に感じられる、愛しき人の温もり。
「ア……ミ?」
自分を守るかの様に、彼女が覆い被さっていた事を。
そのすぐ隣では、地面が抉られた様に損壊している。水龍の直撃は避けられていたのだ。
「ユキ……大丈夫?」
アミは、はにかむ様な笑顔をユキへと向けるが、その表情は何処か蒼白い。
ーーあの時、シグレの“獄龍 閻水礫”がユキへ直撃する寸前、アミはこの高濃度の霧で身体中の自由も上手く効かない中、それでも身を呈して倒れている彼の下へ飛び出し庇い、寸での処で直撃を避ける事が出来たのだ。
「どう……して?」
ユキは上半身をゆっくりと起こすが、アミは項垂れたまま。
そして、その意味を理解した。感じられる彼女の温もりに有る、また別の違和感。
「あ……あぁ!」
左手に感じられるそれは、生温かいぬめり。
「アミぃぃぃぃぃ!!」
ユキの絶叫ーー慟哭が辺りに響き渡る。
項垂れる彼女のその腹部からは、止めどなく鮮血が流れ続けていた。
ゴクリュウ エンスイレキ
“獄龍 閻水礫”
流派として伝えられる事は無い、特異点シグレのみが考案した特異能との複合剣ーー“蒼閻剣”の秘奥。
その巨大な水龍は、まるで生きているかの様に蠢いている。
その威圧感に誰もが震撼。それはまるで“地獄”からの使者で在るかの如く。
「喰らい尽くせ……」
シグレの号令を皮切りに、水龍が獲物と定めたかの様に、倒れて動けないユキへとその矛先を向ける。
「に……逃げ……」
“――逃げてユキ!!”
上手く声を出す事が出来ないアミの、その心の叫びは届かない。無情にも水龍は倒れている彼へ、猛然と襲い掛かる。
その小さな身体の全てを喰い尽くすが如く、水龍は地面を抉り、其処は破裂し凄まじい程の水飛沫が巨大な水柱に見えるかの様に吹き上がった。
“――生きて……る?”
水龍が直撃した筈だった直後の出来事。そして疑問。
“生きている筈がない”
距離的にも状況的にも、あの水龍を避けられる筈は無かったからだ。
「――はっ!?」
だが、その疑問はすぐに氷解する事になる。何故なら肌に感じられる、愛しき人の温もり。
「ア……ミ?」
自分を守るかの様に、彼女が覆い被さっていた事を。
そのすぐ隣では、地面が抉られた様に損壊している。水龍の直撃は避けられていたのだ。
「ユキ……大丈夫?」
アミは、はにかむ様な笑顔をユキへと向けるが、その表情は何処か蒼白い。
ーーあの時、シグレの“獄龍 閻水礫”がユキへ直撃する寸前、アミはこの高濃度の霧で身体中の自由も上手く効かない中、それでも身を呈して倒れている彼の下へ飛び出し庇い、寸での処で直撃を避ける事が出来たのだ。
「どう……して?」
ユキは上半身をゆっくりと起こすが、アミは項垂れたまま。
そして、その意味を理解した。感じられる彼女の温もりに有る、また別の違和感。
「あ……あぁ!」
左手に感じられるそれは、生温かいぬめり。
「アミぃぃぃぃぃ!!」
ユキの絶叫ーー慟哭が辺りに響き渡る。
項垂れる彼女のその腹部からは、止めどなく鮮血が流れ続けていた。
0
あなたにおすすめの小説
「やはり鍛えることは、大切だな」
イチイ アキラ
恋愛
「こんなブスと結婚なんていやだ!」
その日、一つのお見合いがあった。
ヤロール伯爵家の三男、ライアンと。
クラレンス辺境伯家の跡取り娘、リューゼットの。
そして互いに挨拶を交わすその場にて。
ライアンが開幕早々、ぶちかましたのであった。
けれども……――。
「そうか。私も貴様のような生っ白くてか弱そうな、女みたいな顔の屑はごめんだ。気が合うな」
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
【完結】お父様の再婚相手は美人様
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
シャルルの父親が子連れと再婚した!
二人は美人親子で、当主であるシャルルをあざ笑う。
でもこの国では、美人だけではどうにもなりませんよ。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
【完結】私が愛されるのを見ていなさい
芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定)
公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。
絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。
ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。
完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。
立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。
レオナルド先生創世記
ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる