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第5章 阿鼻叫喚~ 辺獄空間の死闘
五話 水の龍
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その姿は正に、空想伝説上の“龍”そのものであった。
ゴクリュウ エンスイレキ
“獄龍 閻水礫”
流派として伝えられる事は無い、特異点シグレのみが考案した特異能との複合剣ーー“蒼閻剣”の秘奥。
その巨大な水龍は、まるで生きているかの様に蠢いている。
その威圧感に誰もが震撼。それはまるで“地獄”からの使者で在るかの如く。
「喰らい尽くせ……」
シグレの号令を皮切りに、水龍が獲物と定めたかの様に、倒れて動けないユキへとその矛先を向ける。
「に……逃げ……」
“――逃げてユキ!!”
上手く声を出す事が出来ないアミの、その心の叫びは届かない。無情にも水龍は倒れている彼へ、猛然と襲い掛かる。
その小さな身体の全てを喰い尽くすが如く、水龍は地面を抉り、其処は破裂し凄まじい程の水飛沫が巨大な水柱に見えるかの様に吹き上がった。
“――生きて……る?”
水龍が直撃した筈だった直後の出来事。そして疑問。
“生きている筈がない”
距離的にも状況的にも、あの水龍を避けられる筈は無かったからだ。
「――はっ!?」
だが、その疑問はすぐに氷解する事になる。何故なら肌に感じられる、愛しき人の温もり。
「ア……ミ?」
自分を守るかの様に、彼女が覆い被さっていた事を。
そのすぐ隣では、地面が抉られた様に損壊している。水龍の直撃は避けられていたのだ。
「ユキ……大丈夫?」
アミは、はにかむ様な笑顔をユキへと向けるが、その表情は何処か蒼白い。
ーーあの時、シグレの“獄龍 閻水礫”がユキへ直撃する寸前、アミはこの高濃度の霧で身体中の自由も上手く効かない中、それでも身を呈して倒れている彼の下へ飛び出し庇い、寸での処で直撃を避ける事が出来たのだ。
「どう……して?」
ユキは上半身をゆっくりと起こすが、アミは項垂れたまま。
そして、その意味を理解した。感じられる彼女の温もりに有る、また別の違和感。
「あ……あぁ!」
左手に感じられるそれは、生温かいぬめり。
「アミぃぃぃぃぃ!!」
ユキの絶叫ーー慟哭が辺りに響き渡る。
項垂れる彼女のその腹部からは、止めどなく鮮血が流れ続けていた。
ゴクリュウ エンスイレキ
“獄龍 閻水礫”
流派として伝えられる事は無い、特異点シグレのみが考案した特異能との複合剣ーー“蒼閻剣”の秘奥。
その巨大な水龍は、まるで生きているかの様に蠢いている。
その威圧感に誰もが震撼。それはまるで“地獄”からの使者で在るかの如く。
「喰らい尽くせ……」
シグレの号令を皮切りに、水龍が獲物と定めたかの様に、倒れて動けないユキへとその矛先を向ける。
「に……逃げ……」
“――逃げてユキ!!”
上手く声を出す事が出来ないアミの、その心の叫びは届かない。無情にも水龍は倒れている彼へ、猛然と襲い掛かる。
その小さな身体の全てを喰い尽くすが如く、水龍は地面を抉り、其処は破裂し凄まじい程の水飛沫が巨大な水柱に見えるかの様に吹き上がった。
“――生きて……る?”
水龍が直撃した筈だった直後の出来事。そして疑問。
“生きている筈がない”
距離的にも状況的にも、あの水龍を避けられる筈は無かったからだ。
「――はっ!?」
だが、その疑問はすぐに氷解する事になる。何故なら肌に感じられる、愛しき人の温もり。
「ア……ミ?」
自分を守るかの様に、彼女が覆い被さっていた事を。
そのすぐ隣では、地面が抉られた様に損壊している。水龍の直撃は避けられていたのだ。
「ユキ……大丈夫?」
アミは、はにかむ様な笑顔をユキへと向けるが、その表情は何処か蒼白い。
ーーあの時、シグレの“獄龍 閻水礫”がユキへ直撃する寸前、アミはこの高濃度の霧で身体中の自由も上手く効かない中、それでも身を呈して倒れている彼の下へ飛び出し庇い、寸での処で直撃を避ける事が出来たのだ。
「どう……して?」
ユキは上半身をゆっくりと起こすが、アミは項垂れたまま。
そして、その意味を理解した。感じられる彼女の温もりに有る、また別の違和感。
「あ……あぁ!」
左手に感じられるそれは、生温かいぬめり。
「アミぃぃぃぃぃ!!」
ユキの絶叫ーー慟哭が辺りに響き渡る。
項垂れる彼女のその腹部からは、止めどなく鮮血が流れ続けていた。
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