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第5章 阿鼻叫喚~ 辺獄空間の死闘
六話 家族の絆
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「しっかりしてくださいアミ! 今っ!」
かつてない程に取り乱したが、ユキは即座に再生再光に依る治癒を彼女へと施す。
「姉……様」
ミオも這う様に二人の下へと。
“――すっ……凄っ!”
ミオはユキの掌から溢れ出さんばかりの、神々しい輝きに思わず目を見張った。ユキがもう一つの特異能を保持している事は、かつて彼に助けて貰ったリュウカと、その娘ミイに聞いてはいたが、実際目の当たりにするそれは奇跡以外の何物でもない事を。
その光によりアミの腹部の傷は瞬く間に塞がり、最初から無かったかの様に消えていく。
「済みません……。私の、私のせいでこんな!」
自分を攻め立てるユキへ、アミはその頬にそっと手を添える。
「ユキ……自分を見失わないで。貴方はもう昔のユキじゃないから……ね」
「アミ……」
その言葉に俯くユキへ、ミオも声を掛ける。
「私は……アンタに昔何があったとか知らない。でも……今は今じゃない! もっと自信持ちなさいよ、アンタらしくないわね!」
「ミオ……」
二人の姉妹が、まるで鼓舞するかの様に言葉を紡ぐ。
過去など関係無い。大切なのは今であるという事を。それは確かな信頼であり、そして深い愛情の証。
「全く、どうして貴女達はこうまで……」
二人の想いにユキのその銀色の瞳は潤み、堪えきれなくなりそうになる。
“――暖かいのでしょうか……”
「くだらないな」
それまでの経緯を黙って見ていたシグレが、呆れながら口を開く。
「馴れ合いのつもりか? 陳腐な茶番だ。もういい、興醒めだ」
「なんですってぇ!」
吐き捨てるシグレへ、ミオが反論し声を荒げるがーー
「家族ごっこなど地獄でやってろ。まとめて送ってやる」
シグレは何処吹く風と一蹴。そして再度、水を形へと変える。“獄龍 閻水礫”だ。
「ちょっ! ちょっと!?」
三人が一ヶ所に固まっている為、今度こそ逃れられない。
「獄龍よ、全て喰らい尽くせ」
水龍は生きているかの様に蠢きながら三人を獲物として認識し、猛然と襲い掛かった。
“――もう駄目、逃げられない!”
水龍が三人に直撃する寸前、何故か水龍は突如その動きを止め、一瞬でその全てが凍りつき砕け散る。
「何ぃ!?」
そして凍りつき、砕けた水龍への余波である巨大の氷柱が、シグレの居る場所まで凄まじい速さで伸びていき、シグレの腹部を貫く様に掠める。
「ぐあっ!」
突然の出来事に腹部から吹き出す血を押さえながら、シグレは膝を着いた。
“――馬鹿な! 一瞬で全てを凍らせた上、此処まで力を届かせた……だと?”
シグレは背を向けたままのユキを見据える。
“――こいつ、さっきまでとはまるで……”
その蒼き瞳に映った姿は、先程までとはまるで別人に感じたものだった。
ユキはゆっくりと立ち上がり、振り向き様にシグレを見据える。今までと全く異なる程の、凄まじい迄の凍気ーーいや闘気に溢れ、それは辺りに一気に浸透していく。
『……息苦しくない? 身体も自由に動く!』
その変化を誰しもが感じ取り、そして安堵の歓喜を挙げる。
あれ程に高濃度に覆われていた霧は、ユキの闘気によって、剥ぎ取られる様に全て掻き消されていた。
「確かに、アナタの言う通りかも知れませんねシグレ……」
そしてユキは刀と鞘を両手に、ゆっくりとシグレへ向かって歩み行く。
「私はかつての自分では無いのかもしれない……。その代わりに出来た、守るべき者の強さが確かに有るんです。アナタには決して、分からないでしょうけどね」
ユキのその言葉に、シグレは腹部を押さえながらも立ち上がり、きつく見据える。
「何を馬鹿な事を。守るべき強さだと? 闘いにあるのは、無慈悲な迄の強さだけだ!」
シグレは腹部から流れ落ちる血等、お構い無しに村雨を構え、ユキへと突き付けた。
「変わっていませんね、アナタは……。ならば証明してみせますよ、その強さを。それにーー」
ユキは辺りを見回す。辺りに転がる躯。絶望の中、苦しみ嘆く人々。
そして、ミオと共に自分を見守るアミの姿をーー
「アナタは、あまりにもやり過ぎた……」
ユキは刀をきつく握り締め、力の限り食い縛った口許からは、一筋の血が伝う様に流れ落ちる。
対峙するお互いの距離は、凡そ二間(3.5m)程まで詰まっていた。
「この苦しみ、そしてアミへ負わせた傷の痛み……」
それは怒りをも越えた感情か。彼の張り裂けそうな想いを、誰もが痛い程に伝わって来た。
「この報い、アナタの命で償って貰います。覚悟……するんですね」
かつてない程に取り乱したが、ユキは即座に再生再光に依る治癒を彼女へと施す。
「姉……様」
ミオも這う様に二人の下へと。
“――すっ……凄っ!”
ミオはユキの掌から溢れ出さんばかりの、神々しい輝きに思わず目を見張った。ユキがもう一つの特異能を保持している事は、かつて彼に助けて貰ったリュウカと、その娘ミイに聞いてはいたが、実際目の当たりにするそれは奇跡以外の何物でもない事を。
その光によりアミの腹部の傷は瞬く間に塞がり、最初から無かったかの様に消えていく。
「済みません……。私の、私のせいでこんな!」
自分を攻め立てるユキへ、アミはその頬にそっと手を添える。
「ユキ……自分を見失わないで。貴方はもう昔のユキじゃないから……ね」
「アミ……」
その言葉に俯くユキへ、ミオも声を掛ける。
「私は……アンタに昔何があったとか知らない。でも……今は今じゃない! もっと自信持ちなさいよ、アンタらしくないわね!」
「ミオ……」
二人の姉妹が、まるで鼓舞するかの様に言葉を紡ぐ。
過去など関係無い。大切なのは今であるという事を。それは確かな信頼であり、そして深い愛情の証。
「全く、どうして貴女達はこうまで……」
二人の想いにユキのその銀色の瞳は潤み、堪えきれなくなりそうになる。
“――暖かいのでしょうか……”
「くだらないな」
それまでの経緯を黙って見ていたシグレが、呆れながら口を開く。
「馴れ合いのつもりか? 陳腐な茶番だ。もういい、興醒めだ」
「なんですってぇ!」
吐き捨てるシグレへ、ミオが反論し声を荒げるがーー
「家族ごっこなど地獄でやってろ。まとめて送ってやる」
シグレは何処吹く風と一蹴。そして再度、水を形へと変える。“獄龍 閻水礫”だ。
「ちょっ! ちょっと!?」
三人が一ヶ所に固まっている為、今度こそ逃れられない。
「獄龍よ、全て喰らい尽くせ」
水龍は生きているかの様に蠢きながら三人を獲物として認識し、猛然と襲い掛かった。
“――もう駄目、逃げられない!”
水龍が三人に直撃する寸前、何故か水龍は突如その動きを止め、一瞬でその全てが凍りつき砕け散る。
「何ぃ!?」
そして凍りつき、砕けた水龍への余波である巨大の氷柱が、シグレの居る場所まで凄まじい速さで伸びていき、シグレの腹部を貫く様に掠める。
「ぐあっ!」
突然の出来事に腹部から吹き出す血を押さえながら、シグレは膝を着いた。
“――馬鹿な! 一瞬で全てを凍らせた上、此処まで力を届かせた……だと?”
シグレは背を向けたままのユキを見据える。
“――こいつ、さっきまでとはまるで……”
その蒼き瞳に映った姿は、先程までとはまるで別人に感じたものだった。
ユキはゆっくりと立ち上がり、振り向き様にシグレを見据える。今までと全く異なる程の、凄まじい迄の凍気ーーいや闘気に溢れ、それは辺りに一気に浸透していく。
『……息苦しくない? 身体も自由に動く!』
その変化を誰しもが感じ取り、そして安堵の歓喜を挙げる。
あれ程に高濃度に覆われていた霧は、ユキの闘気によって、剥ぎ取られる様に全て掻き消されていた。
「確かに、アナタの言う通りかも知れませんねシグレ……」
そしてユキは刀と鞘を両手に、ゆっくりとシグレへ向かって歩み行く。
「私はかつての自分では無いのかもしれない……。その代わりに出来た、守るべき者の強さが確かに有るんです。アナタには決して、分からないでしょうけどね」
ユキのその言葉に、シグレは腹部を押さえながらも立ち上がり、きつく見据える。
「何を馬鹿な事を。守るべき強さだと? 闘いにあるのは、無慈悲な迄の強さだけだ!」
シグレは腹部から流れ落ちる血等、お構い無しに村雨を構え、ユキへと突き付けた。
「変わっていませんね、アナタは……。ならば証明してみせますよ、その強さを。それにーー」
ユキは辺りを見回す。辺りに転がる躯。絶望の中、苦しみ嘆く人々。
そして、ミオと共に自分を見守るアミの姿をーー
「アナタは、あまりにもやり過ぎた……」
ユキは刀をきつく握り締め、力の限り食い縛った口許からは、一筋の血が伝う様に流れ落ちる。
対峙するお互いの距離は、凡そ二間(3.5m)程まで詰まっていた。
「この苦しみ、そしてアミへ負わせた傷の痛み……」
それは怒りをも越えた感情か。彼の張り裂けそうな想いを、誰もが痛い程に伝わって来た。
「この報い、アナタの命で償って貰います。覚悟……するんですね」
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