日本人の借金が一人当たり1000万円を超えているとはどういうことだろう

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日本人の借金が一人当たり1000万円を超えているとはどういうことだろう

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『国の借金が1270兆円か...国民一人当たりだと1000万円越え。こりゃ大変だな。』
貢は、日本経済新聞の記事をスマホで見て、ため息をついた。

やがて休憩時間になったので、お茶をしながら、貢は先ほど知ったデータを、どや顔で陽子に自慢した。

「あら、貢さんはその借金どうやって返すつもりなの。」
「どうやってって..そりゃ税金を頑張って払って、すこしずつ返していけば..でもね陽子、陽子もこの借金を背負っているんだよ。」
「あら、私、借用書なんて書いた覚えないわ。借金なんて無いわよ。」
貢は、陽子のあっけらかんとした態度に唖然とした。

陽子は貢の四つ後輩である。貢は、いつも陽子の食事代を払ってやっているので、貢は陽子を自分の彼女だという認識である。

「だけどね、日経の記事にも書いてあるし、財務省のサイトにだって載っているよ。」
と言って、貢は陽子にスマホの画面を見せた。
陽子はその画面を一瞥もせずに、不敵な笑みを浮かべて、
「今日はまだ仕事がたくさん残っているから。それではご馳走様。」
と言って、休憩エリアから出て行った。

貢は、税理士を目指している下柳先輩に教えを乞うた。
「俺の授業料は高いぞ。」と下柳は一言付け加えておいてから、
「例えば、うちの会社が従業員500名で、負債額がざっくり言って1000億円だ。一人当たり2億円の借金だ。お前、払えるか?」
この答えに、貢はびっくりした。
「そんな大金、払えるわけないじゃないですか。だいたい、どうして僕が会社の借金を払わなきゃならないんですか。」
「そういうことだよ。」
下柳の言い方はそっけなかったが、自分が会社の借金を返さなければならないなんてあり得ない、ということは本能的に分かった。
「ああ、お前、漆原君にやり込められたのか。彼女は優秀だからな。」
漆原は陽子の苗字である。

「それから、お前、うちの会社の資産がいくらあるか知ってるか。」
「さあ、1200億円くらいでしょうか。」
負債が1000億円と言われたので、貢は当てずっぽうで答えてみた。
「ああ、知らないんだな。ざっくり1500億だ。どうだ、健全な会社だろ。」
差し引き500億円のプラスだ。貢はそれは分かった。
「だから、負債の方だけ見て、あれこれ語るのは実におかしなことだ。負債の反対側には、必ず資産があるからな。後は自分で考えろ。それじゃ頑張れよ。」

貢は下柳に丁寧にお礼を言って、その場を離れた。

貢は帰り道で『ザイム真理教』という書籍を買った。タイトルがショッキングで面白かったので、これなら読めるかもと思ったのだ。

家で『ザイム真理教』を読んでいると、今まで自分が新聞や財務省のサイトで信じ込んでいたことが、出鱈目だということを知り、むかむかしてきた。

早速、明日にでも陽子に教えてあげようと思ったが、よく考えたら、ここ数日で知り得た内容を、優秀な陽子が知らないはずがない。却ってまた恥をかくだけだ。

ところで、貢の同期に西野花音という背の高い女性がいた。
貢は花音とほとんど話をしたことが無い。
美人で、貢より背が高いし、仕事も良くできるので、貢は相手にしてもらえてないような気がしていた。

この花音が、陽子と仲が良かった。
朝も良く一緒に出勤して来るし、帰りも時々一緒である。

『女友達は必要だからな。』
と、貢は花音に嫉妬心を抱かないように心掛けた。

優秀な女性は、群れない場合が多い。男も同様だが。

「しかし、財務省のやってることは酷いね。奴らは国民のことなど考えず、自分たちの利益第一なんだから。」
と、休息エリアで、貢は陽子に思い切って話しかけてみた。
この言葉が功を奏したようで、今夜陽子は、一緒に飲みに行ってくれることを了承した。
久しぶりのデートである。

よく考えてみたら、貢は陽子と手を握ったこともなかった。いつも食事を出してやるだけだ。
電話番号は知っているが、住所は知らない。

貢は、今夜は奮発して、高級店の個室を予約した。
食事もうまかったし、酒も良い加減に回ってきて、貢は陽子の手を握ってみた。
陽子は拒絶しなかった。
いけると思ったが、陽子は突然自分のスマホを取り出した。

「財務省と言えばね、ほら、ここに財務省の幹部の名簿が載ってるでしょ。」
と言って、陽子はスマホの画面を見せた。
「ああ、そうだね。」と、貢は生返事をしたが、そんな名簿がネットに載ってるなんて知らなかった。
「この中の、この人と、この人と、この人の住所を調べてほしいの。できるかな?」
と、今度は陽子が貢の手を握ってきた。
貢がためらっていると陽子は、
「調べてくれたら、アレしてあげる。」
と言って、貢の首に抱きついてきた。陽子の積極的な行動に、貢は夢見心地になって、
「やってやるよ。約束だ。そのかわり、陽子も約束だよ。」
と言質を取った。

引き受けてみたものの、貢はどうすればよいのか分からなかった。
色々考えてみたが、結局興信所に頼むことにした。
結構な費用を請求されたが、独身で親と同居の貢はいくらかの貯えがあったので、その費用を払って目的の住所リストを手に入れた。

「うれしい!」と、陽子は周りに人はいなかったところで、貢に抱きついてきた。
陽子は一人住まいなので、次の週末は家に行っても良いかと貢が尋ねると、「構わないわよ。」と、陽子は二つ返事だった。

次の日、陽子は出社して来なかった。陽子だけでなく、花音も出社して来なかった。
貢は社内サイトを見て驚いた。二人は本日付で会社を辞めたのだった。
スマホで連絡を取ろうとしたが、応答は全く無かった。
貢は呆然とした。

ショックでしばらく何も手に付かなかったが、次第に『あのリストは何に使うのだろう。』と、疑問が頭をもたげてきた。
『ひょっとしたら、何か事件性があるのではないだろうか。』
貢は今度は、自分の身が危ないのではないかと焦った。

貢はまた、下柳先輩に相談した。
「ああ、俺もびっくりしたよ。なになに、ほう、そうか。ハニトラじゃないかな。財務官僚なんてセキュリティが甘々だからな。実際のことは俺も分かんねえよ。」
強請るつもりだろうかと、一瞬頭をよぎった。今までは、陽子がそんな女性だとは想像もつかなかったが。
貢は花音のことにもさりげなく触れてみた。

「あれ、お前、同期なのに何も知らないんだな。あの子は元男なんだよ。高校まで野球やってたらしいぜ。手術したから体はすっかり女だよ。小顔だし、奇麗な顔してるから、たいていの人は分からないけどな。二人で、ハニトラで稼ごうとしてるんじゃないか。は、は、は、は。」
と、下柳は豪快に笑った。

貢は花音が元男だったということを知って、再びショックを受けた。
『二人の関係はどいう関係だったのだろうか。女性同士だから、レズビアンなのだろうか。それとも男女の関係というものだったのだろうか。』

貢は、混乱していたこともあって、要らぬ想像を逞しくしていた。
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