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第4章
『それぞれの理由』
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練習試合の第1回戦、入月くんのチームがまず最初にコートの中でプレーをしている。
各チームはそれぞれパワーバランスが均等になるように決めたけれど、入月くんと花沢さんだけは、わざと同じチームになるように振り分けた。
これと言って大きな理由があるわけではないけれど、花沢さんとちゃんと向き合おうとしている、そして、きっと向き合うことが出来るのも入月くんだけだと思ったから……
私も含めてバスケ部の全員、男性恐怖症である花沢さんのことを、心のどこかで諦めてしまっているような気がしていた。
でも、入月くんだけは、花沢さんにどんなに拒絶されても彼女のことを諦めなかった。それは今、こうしてコートの中で一緒にプレーしている今も変わらない。
『そうだな~、もっとバスケを楽しんだらいいのにと思う』
私が入月くんに花沢さんをどう思うか聞いた時、彼は花沢さんのことをそう言って表現していた。
それは、彼が花沢さんの上辺だけでなく、もっと深い部分を見ているということに他ならない。
「橘さ~ん!」
私と同じようにコートサイドで入月くんの試合を観戦していた小畑くんが、難しい顔をして私に声を掛けてきた。
「この試合、女子バスケ部部長はどう見ますかね?」
小畑くんの視線の先には、今も息つく暇のない攻防を繰り広げている入月くんたちがいる。
まだ前半戦だと言うのに、入月くんの息は荒く、額からは大量の汗が滴り落ちていた。
ただでさえブランクがあり、体力が少ない入月くんが、序盤から自身のことは顧みず、コートの中を全力で走り回っている。
「どうも何もないわ。 花沢さんが気兼ねなく動けるように、入月くんが全員の動きをある程度コントロールしている。尋常じゃない集中力と体力を代償に……」
「確かに、回りくどいことするよな。その気になれば5人抜いてシュート決めれるだろうに」
「いとも簡単に、ね…」
「中学の時の勇志なら、迷わずそうしてたんだろうけどな。プレースタイルが変わるような心境の変化でもあったのかね?」
たしかに、中学時代の入月くんは一回り体格の大きい相手からも容易くとゴールを奪っていた。
チームプレイとは名ばかりの、個人の技量を無慈悲に押し付けるような戦い方で、まるで敵も味方も単なる引き立て役に過ぎないような……
「今の勇志は橘さんの好みではない?」
「どういう意味?」
「だってあの時からだろ?『好き』というか、『憧れ』に近いのかな?」
そうか、私は憧れていたのね。
どんな強敵や困難も、己の力で乗り越える彼に。優雅に美しくコートを舞い踊る彼のように、私もなりたいと憧れていたんだわ。その裏に隠していた苦悩も努力にも気付かないまま。
「そう、憧れていた… けれど、今の彼の方がもっと素敵だわ」
「ヒュ~、お熱いね~」
「あなたに揶揄われると、無性にイライラするのだけど」
「はい、ごめんなさーい!」
一瞬、以前の『鉄仮面』に戻った時雨に、小畑は尻尾を巻いて逃げ出したのであった。
『ピィーーーー!!』
ホイッスルの音が前半戦の終了を告げた。
それぞれのチームが集まり、作戦の組み直しを行い始めた。
「華!あなたいい加減にしなさいよ!?」
入月くんのチームから女子部員の罵声が轟く。
どうやらチームの足を引っ張る花沢さんに、ついに堪忍袋の尾が切れたようで、周りのことなど忘れて、花沢さんに詰め寄った。
「林田くんと、入月くんにどれだけ迷惑が掛かってるか分かってるの!?」
「――ごめん… なさい……」
「まあまあ、落ち着いて――」
すぐに林田くんが、ヒートアップしている女子を宥めるため間に割って入る。入月くんの方はそれとなく花沢さんの斜め後ろに立って、彼女と顔を合わせないように何かを話していた。
「花沢さん」
「――っ」
「突然話し掛けてごめん、辛いだろうけどこのままちょっとだけ俺の話を聞いてくれないかな?」
「――はい…」
「まず、俺と真純のことだったら気にしなくていいから、花沢さんは男子が怖くて竦んでしまう自分から目を逸らさないで、受け入れてあげてほしいんだ」
「――私、嫌いなんです… こんな自分が……」
「誰にでもあるんじゃないかな、自分の嫌いなところって。でも、本当に変わりたいと願うなら、まず嫌いな自分を受け入れないと変われないと思うんだ」
「嫌いな自分を受け入れる……」
「受け入れて初めて、変わるための道筋が見えて来る… そんな気がするんだ…… なんて、俺が言えた義理じゃないんだけどね…」
「――入月、先輩……」
「さっ、後半戦も頑張ろう!」
入月くんと花沢さんのやり取りを見ていると、不意に【Godly Place】のサイン会でのユウさんと私が重なって見えた。
心を開くきっかけをくれて、背中を押してくれた。あの瞬間が私にとってのターニングポイントだった。
きっと、花沢さんにとっても入月くんの言葉が、花沢さん自身を変えるきっかけになるのかも知れない。
『ピィーーーー!!』
再びホイッスルが鳴り響き、後半戦の開始を告げると、すぐにまた点数が動き始めた。
入月くんのチームは若干のぎこちなさはあるけれど、前半の時より格段に動きが良くなっている。
「花沢さんの位置が変わってるんだわ……」
「――その通り!」
何処からともなく現れた小畑くんが、クルリと一回転して決めポーズを取る。
「本来ならコート中央でパスを捌くはずの花沢さんを、あえて役割はそのままにコートの端の方へ移動させているんだぜ!」
「そうすることで、パスの選択肢を左右に大きく増やしたのね」
入月くんを頭に置き、誰にでもパスを出せるというプレッシャーを相手に掛ける。花沢さんにボールを直接渡せなくても、入月くんを起点にした素早いパスワークで、相手の守備が薄い花沢さんにもパスが通り、容易にシュートをすることができるのね。
「――入った…?うそ…!?」
「ナイシュー、花沢さーん!」
まさか本当にシュートが入るなんて、自分でも信じられないといった表情の花沢さんに、入月くんが嬉しそうに声を掛ける。
周りを見れば、全員が何かしら花沢さんに向かって「良くやった」と言わんばかりの表情を向けていた。休憩中に花沢さんを怒鳴った女子部員でさえ「やれば出来るじゃない…」と、少し申し訳なさそうに声を掛けていた。
(何かが変わり始めた……)
漠然とそんな気がした。
まさかここまで一方的な試合展開になるとは予想していなかったのか、相手チームに少しづつ焦りの色が見え始めていた。
「こっち!ボール回すっす!!」
大柄の男子部員が険しい剣幕で声を荒げた。
その迫力に呑まれたチームメイトが、恐る恐るパスを渡す。
「この流れを食い止めるんスよ!」
大柄の男子部員が強引に守備を引き連れながら、一直線にゴールへと向かう。ゴール下では全く連携が取れていない他のメンバーたちと、守備も交ざり、混戦状態になっている。
そんな中を構わず突撃する無謀な男子部員の目には、もはや周りの状況など映っていなかった。
「ここで決める!」
その巨体が飛び上がり宙を舞う。しかし、その延長線上には花沢さんが、自身の相手を守備するためにゴール下に下がって来ていた。
「――あっ…」
花沢さんはそれに気が付いていたけれど、相手が男子部員ということが災いし、咄嗟に身体が固まってしまっていた。
「危ない!!」
「花沢さん、避けて!」
花沢さんの目の前に、男の巨体が今にものし掛かろうとしている。
体育館にいる全員が息を呑んだ瞬間、突然、花沢さんの身体が外に押し出された。
「――えっ…!?」
「誰かが庇ってくれた」と、花沢さんが気付いて振り向いた時には、その人物は大柄の男子部員と激突し、大きく吹き飛ばされて地面に伏せているところだった。
「――ヤバイ!!」
小畑くんが急いで駆け寄っていく後ろ姿を見て、私も止まっていた時間が動き出した。
急いで花沢さんを庇って倒れてしまった人の所へ向かうと、そこには右脚を抱えて苦しそうな表情をしている入月くんが横たわっていた。
………………
…………
……
目の前を大きな男の子が塞ぎ、そのまま私の方へと向かってくる。
「危ない!!」
「花沢さん避けて!」
分かってる、避けなきゃ…!
頭では理解している。でも身体が動かない。
それは、まるであの時、近所の小山で、友達だった男の子に、崖から突き落とされたときと同じ、その映像が今、目の前の男子部員と重なる。
『生意気だな、お前……』
突き落とされる前に言われた言葉が、頭の中に響いてくる。
突き落とされて足を怪我した私は、自力では崖を登ることができなかった。突き落とした子も、他の友達たちも私を助けることなく、どこかへ行ってしまった。
「――誰か、誰か助けて!」
雨が降り始め、陽が落ちた頃には叫ぶことも出来なくなった。
絶望、孤独、喪失……
まだ小学生になりたての少女には、想像もできなかった負の感情を、数時間の間、ただひたすらに内側に巡らせて――
「ここにいたぞー!」
懐中電灯の光が眩しかった。その所為で顔はよく見えなかったけど、見覚えのある紺色の制服、たぶん警察の人だった。
「今助けてあげるからね」
その人はそう言って手を差し伸べてくれた。
「――あっ…」
私も手を伸ばした。
けど、伸ばされたその手、その顔が男の人のものだと気付くと――
「ぃギャあああああアァアアア!!」
私は、その場で蹲って、狂ったように大声を上げていた。
頭の中がグチャグチャになり、何度も男の子に崖から落とされる映像がフラッシュバックした。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も……
その瞬間から、私は全ての男の人が怖くなった。
そして今、あの時のように再び崖から落とされてしまうんだ。少しだけ男の人と同じチームでも動けるようになったと思ったばかりなのに……
私は眼前の恐怖に対して、固く目を瞑ることしか出来なかった。
「――ぐッ…!?」
しかし、衝撃は予想外の方向から訪れた。
「えっ!?」
私は横から軽く押し出されるように床に倒された。その衝撃は自分が予想していたものより遥かに小さく、痛みはほとんどなかった。
(何が起こったの…?)
状況が飲み込めないまま、私は固く閉ざしていた瞼を開いた。
私を突き落とそうとしていた男子部員は、私の直ぐ横で床に座割り込んでいる。そして、その人が見下ろしていた人物……
体育館の床に横たわり、右脚を抱えて蹲っている入月先輩がそこにいた。
「――どう、して…?」
「――花沢さん、怪我はない?」
橘部長が倒れている私に駆け寄り、手を差し出す。けれど、私は怪我ひとつしていなかった。
「大丈夫です… あの、何が起こったんですか…?」
「入月くんが花沢さんを庇って、彼とぶつかったのよ……」
「――そんな…」
入月先輩が私を庇って……
「――どうして…?」
今までずっと迷惑とか嫌な思いしかさせていないはずなのに、どうして!?
最初に会った時も、私が先輩の顔にボールをぶつけて、男の人が怖くて、顔を見て謝ることも出来なかったのに……
どうして私なんかのために、そこまでしてくれるんですか……?
「おい! 勇志! 脚やったのか!?」
入月先輩の周りには小畑先輩、林田先輩を始め、多くの人が心配して集まっていく。
「大丈夫、ちょっと捻っただけだ… それより小畑、耳元で大声出すのやめてくれないか? うるさい」
入月先輩は身体を起こしながら、周りの部員たちに、心配ないと身振りで答えていた。
「まあ、軽口を叩けるようなら大丈夫だな」
「勇志、脚ってお前、また前の傷が…」
「心配すんなって真純、何度も怪我してるから大体感覚で分かるけど、今回は大丈夫なやつだから…」
それでもすぐに起き上がれないところを見ると、何事もなかったでは済まない状況なのは、誰が見ても明らかだった。
「すいません入月先輩、怪我させちまって……」
「いいって剛田、飛び込んだのは俺の方だから」
「本当に申し訳ないッス……」
「気にすんなって!けど、花沢さんにはちゃんと謝っておけよ!くれぐれも顔を合わせないようにしてな!」」
「う、うッス、分かりました!」
入月先輩を押し倒した男子部員は『剛田』くんと言うらしい。大きい身体を出来るだけ小さくして本当に申し訳なさそうに謝っている。
けれど、入月先輩は自分ではなく、私に対して謝罪するようにと剛田くんに話している。私を庇って酷い目に遭ったのは自分なのに……
「おい剛田!」
「うッス!」
小畑先輩が珍しく真剣な顔で剛田くんの元へ歩み寄る。
「何だ今のプレーは!?」
「うッス!」
「いつも言ってるだろ、周りが見えなくなった時こそ仲間を信頼しろって!」
「いえ、初めて聞いたッス!」
「そんな巨体を無意味に暴走させちまうやつは『剛田』改め、『ゴリダ』としばらく呼ぶことにする」
「うホッ!?やめて下さいよ~!」
「いいや、危うく我等の大切な宝に傷つけるところだったんだぞ?反省しろ!」
「う、うッス……」
その場の空気が和み始め、また練習が再開されようとしている。けれど、私はまだ入月先輩にどうして助けてくれたのか聞けていない。
本当に聞けるだろうか……
男の人に……
今まで一度も入月先輩の顔を見ることすら出来なかったのに、そもそも男の人と話せない私が、入月先輩に声なんて掛けられるのだろうか……
「とにかく、1度保健室で診てもらいなさい。 林田くん、入月くんを保健室まで連れて行ってくれる?」
「――了解っと」
橘部長が林田先輩に声を掛けて、入月先輩を運び出そうとしている。このままじゃ……!
「わッ!? ちょっと真純!?」
「ワーオ……!?」
「大胆……」
「いや、お姫様抱っこはやめろよ!?」
「いや、でもこれが1番脚に負担が掛からないかなと思ってさ」
「そうかもしれないよ? でもね、こっちは凄く恥ずかしいの!?」
理由を知りたい。聞かないと納得もできない。
男子バスケ部の救世主で、代わりになる人なんていない入月先輩が、代わりなど幾らでもいる、しかも男性恐怖症の女子のために、自分を犠牲にしてまで助けた理由……
私は自分でも不思議と足が進み、気付けば入月先輩に声を掛けていた。
「あ、あの…!?」
「――ん?」
「せ、先輩… ど、どうして……」
入月先輩に声を掛けて、初めて自分がとんでもない事をしていると自覚して、急に言葉に詰まってしまう。
「花沢さん、突き飛ばしてごめんね… 俺のことなら気にしないで、自分でやったことだから」
私が呼吸を整えている間に、入月先輩が私に謝って、余計な気を遣わないようにと言葉を重ねる。
「…………(違う、悪いのは私なんです!入月先輩は何も悪くないんです!)」
頭がぐちゃぐちゃする。心で思っていることが言葉に出来ない。
ただ俯いているだけ。
こんな自分が本当に嫌い。助けてくれた相手にお礼も言えず、顔も見ることができず、しかも気を遣わせて…… 本当に大嫌い……
「花沢さん、バスケ楽しい?」
「――え…?」
突然の不意打ちのように、心にその言葉が刺さった。
「俺はさ、バスケを心から楽しいって思えたの、実は結構最近なんだ… それまでは自分1人で何でもできる気でいてさ、1人では何もできないスポーツなのに……」
入月先輩はどうやってそれに気付けたんだろう……
「じゃあ先輩から1つアドバイス、自分の弱さや、嫌いなところに目が行きがちだけど、たまには周りを見渡すのも悪くないと思うよ」
「――先輩…」
「入月くん、あなた凄くいい事を言っているようだけれど、お姫様抱っこされながら言っても全然格好良くないわよ?」
林田先輩に軽々とお姫様抱っこされている入月先輩は、なんかちょっと可愛らしい感じがした。
「べ、別に格好つけたかったわけじゃないんだからね!?」
入月先輩は橘部長と短くやり取りをして、林田先輩にそのままお姫様抱っこで運ばれていきました。
『バスケ楽しい?』
刺さった棘が再び私に問いかける。
本当は女子校に行きたかったけど、お父さんに強引に共学の高校に行かされることになった。
ろくに父親とも話せない私の『男性恐怖症』を克服させるために、というのは分かっていたけど、入学してからしばらく、本当に辛かったことは昨日の事のように思い出せる。
そんな中、部活動紹介で女子バスケ部を見たとき、私の世界に光が射した気がした。
長い髪を靡かせながら、素早い動きで相手を躱し、華麗にシュートを決める姿、その人にだけスポットライトが当たっているような気がする程、その全てが輝いて見えた。
その時は、まだ名前も知らなかった橘先輩の姿に、私は心から憧れを抱いた。だって、橘先輩はまさしく私の理想そのものだったから。
その後、すぐにバスケ部に入部することを決めた。 運動は得意ではなかったけど、苦手でもないから大丈夫だと思った。
でも、いざ始まってみると、練習は本当に厳しくて何度も心が折れそうになった。
けど、その度に橘先輩の姿を見て「この人みたいになりたいんだ!」と、自分を奮い立たせ、また頑張ることができた。
練習も試合も真面目に取り組んできたし、上手くなるように、人一倍努力もした。
だけど、1度もバスケをしていて『楽しい』と思ったことはなかった。
入月先輩が私に『バスケ楽しい?』と聞いたのは、そんな私の浅はかな気持ちに気付いたからに違いない。
入月先輩がバスケ部に来てから、事ある毎に私に声を掛けてくれた。
「ナイスプレー!」とか、「今のパス絶妙だったね」とか、「足の使い方が上手だね」とか、いっぱい褒めてくれた。
ろくに返事もできなかったけど、そのとき初めて男の人に褒められて嬉しいと思った。
それなのに、私の所為で入月先輩に怪我をさせてしまった。
私がいると誰かの迷惑になる。
私は、私は要らない人間なんだ。
バスケの楽しみ方も分からない人間が、バスケをしていちゃいけないんだ!
「――花沢さん、ねえ、聞いているの?」
「橘部長……」
橘部長の話は全く聞こえなかった。後ろめたさと罪悪感で、橘部長にも合わせる顔がない。
「もしかして花沢さん『誰かに迷惑を掛けるくらいなら、バスケなんてもう辞めよう』なんて考えてる?」
「――どう、して…?」
「そんな顔をしてたら誰だってわかるわよ。でも、それだけは許さないわ。 もしあなたがバスケを辞めてしまったら、入月くんが自分を犠牲にしてあなたを助けた意味がなくなってしまうから」
「でも!」
「『バスケを楽しむ』花沢さんはこれがどういう意味かわかる?」
「わかりません…」
「確かに漠然としているし、楽しみ方なんて人それぞれだと思うわ、だから花沢さん自身が答えを見つけ出さないといけない。けれど…」
「けど…?」
「入月くんは、花沢さんに笑顔でいてほしいんじゃないかしら?」
部長はそう言って優しい笑顔を私に向けた。
各チームはそれぞれパワーバランスが均等になるように決めたけれど、入月くんと花沢さんだけは、わざと同じチームになるように振り分けた。
これと言って大きな理由があるわけではないけれど、花沢さんとちゃんと向き合おうとしている、そして、きっと向き合うことが出来るのも入月くんだけだと思ったから……
私も含めてバスケ部の全員、男性恐怖症である花沢さんのことを、心のどこかで諦めてしまっているような気がしていた。
でも、入月くんだけは、花沢さんにどんなに拒絶されても彼女のことを諦めなかった。それは今、こうしてコートの中で一緒にプレーしている今も変わらない。
『そうだな~、もっとバスケを楽しんだらいいのにと思う』
私が入月くんに花沢さんをどう思うか聞いた時、彼は花沢さんのことをそう言って表現していた。
それは、彼が花沢さんの上辺だけでなく、もっと深い部分を見ているということに他ならない。
「橘さ~ん!」
私と同じようにコートサイドで入月くんの試合を観戦していた小畑くんが、難しい顔をして私に声を掛けてきた。
「この試合、女子バスケ部部長はどう見ますかね?」
小畑くんの視線の先には、今も息つく暇のない攻防を繰り広げている入月くんたちがいる。
まだ前半戦だと言うのに、入月くんの息は荒く、額からは大量の汗が滴り落ちていた。
ただでさえブランクがあり、体力が少ない入月くんが、序盤から自身のことは顧みず、コートの中を全力で走り回っている。
「どうも何もないわ。 花沢さんが気兼ねなく動けるように、入月くんが全員の動きをある程度コントロールしている。尋常じゃない集中力と体力を代償に……」
「確かに、回りくどいことするよな。その気になれば5人抜いてシュート決めれるだろうに」
「いとも簡単に、ね…」
「中学の時の勇志なら、迷わずそうしてたんだろうけどな。プレースタイルが変わるような心境の変化でもあったのかね?」
たしかに、中学時代の入月くんは一回り体格の大きい相手からも容易くとゴールを奪っていた。
チームプレイとは名ばかりの、個人の技量を無慈悲に押し付けるような戦い方で、まるで敵も味方も単なる引き立て役に過ぎないような……
「今の勇志は橘さんの好みではない?」
「どういう意味?」
「だってあの時からだろ?『好き』というか、『憧れ』に近いのかな?」
そうか、私は憧れていたのね。
どんな強敵や困難も、己の力で乗り越える彼に。優雅に美しくコートを舞い踊る彼のように、私もなりたいと憧れていたんだわ。その裏に隠していた苦悩も努力にも気付かないまま。
「そう、憧れていた… けれど、今の彼の方がもっと素敵だわ」
「ヒュ~、お熱いね~」
「あなたに揶揄われると、無性にイライラするのだけど」
「はい、ごめんなさーい!」
一瞬、以前の『鉄仮面』に戻った時雨に、小畑は尻尾を巻いて逃げ出したのであった。
『ピィーーーー!!』
ホイッスルの音が前半戦の終了を告げた。
それぞれのチームが集まり、作戦の組み直しを行い始めた。
「華!あなたいい加減にしなさいよ!?」
入月くんのチームから女子部員の罵声が轟く。
どうやらチームの足を引っ張る花沢さんに、ついに堪忍袋の尾が切れたようで、周りのことなど忘れて、花沢さんに詰め寄った。
「林田くんと、入月くんにどれだけ迷惑が掛かってるか分かってるの!?」
「――ごめん… なさい……」
「まあまあ、落ち着いて――」
すぐに林田くんが、ヒートアップしている女子を宥めるため間に割って入る。入月くんの方はそれとなく花沢さんの斜め後ろに立って、彼女と顔を合わせないように何かを話していた。
「花沢さん」
「――っ」
「突然話し掛けてごめん、辛いだろうけどこのままちょっとだけ俺の話を聞いてくれないかな?」
「――はい…」
「まず、俺と真純のことだったら気にしなくていいから、花沢さんは男子が怖くて竦んでしまう自分から目を逸らさないで、受け入れてあげてほしいんだ」
「――私、嫌いなんです… こんな自分が……」
「誰にでもあるんじゃないかな、自分の嫌いなところって。でも、本当に変わりたいと願うなら、まず嫌いな自分を受け入れないと変われないと思うんだ」
「嫌いな自分を受け入れる……」
「受け入れて初めて、変わるための道筋が見えて来る… そんな気がするんだ…… なんて、俺が言えた義理じゃないんだけどね…」
「――入月、先輩……」
「さっ、後半戦も頑張ろう!」
入月くんと花沢さんのやり取りを見ていると、不意に【Godly Place】のサイン会でのユウさんと私が重なって見えた。
心を開くきっかけをくれて、背中を押してくれた。あの瞬間が私にとってのターニングポイントだった。
きっと、花沢さんにとっても入月くんの言葉が、花沢さん自身を変えるきっかけになるのかも知れない。
『ピィーーーー!!』
再びホイッスルが鳴り響き、後半戦の開始を告げると、すぐにまた点数が動き始めた。
入月くんのチームは若干のぎこちなさはあるけれど、前半の時より格段に動きが良くなっている。
「花沢さんの位置が変わってるんだわ……」
「――その通り!」
何処からともなく現れた小畑くんが、クルリと一回転して決めポーズを取る。
「本来ならコート中央でパスを捌くはずの花沢さんを、あえて役割はそのままにコートの端の方へ移動させているんだぜ!」
「そうすることで、パスの選択肢を左右に大きく増やしたのね」
入月くんを頭に置き、誰にでもパスを出せるというプレッシャーを相手に掛ける。花沢さんにボールを直接渡せなくても、入月くんを起点にした素早いパスワークで、相手の守備が薄い花沢さんにもパスが通り、容易にシュートをすることができるのね。
「――入った…?うそ…!?」
「ナイシュー、花沢さーん!」
まさか本当にシュートが入るなんて、自分でも信じられないといった表情の花沢さんに、入月くんが嬉しそうに声を掛ける。
周りを見れば、全員が何かしら花沢さんに向かって「良くやった」と言わんばかりの表情を向けていた。休憩中に花沢さんを怒鳴った女子部員でさえ「やれば出来るじゃない…」と、少し申し訳なさそうに声を掛けていた。
(何かが変わり始めた……)
漠然とそんな気がした。
まさかここまで一方的な試合展開になるとは予想していなかったのか、相手チームに少しづつ焦りの色が見え始めていた。
「こっち!ボール回すっす!!」
大柄の男子部員が険しい剣幕で声を荒げた。
その迫力に呑まれたチームメイトが、恐る恐るパスを渡す。
「この流れを食い止めるんスよ!」
大柄の男子部員が強引に守備を引き連れながら、一直線にゴールへと向かう。ゴール下では全く連携が取れていない他のメンバーたちと、守備も交ざり、混戦状態になっている。
そんな中を構わず突撃する無謀な男子部員の目には、もはや周りの状況など映っていなかった。
「ここで決める!」
その巨体が飛び上がり宙を舞う。しかし、その延長線上には花沢さんが、自身の相手を守備するためにゴール下に下がって来ていた。
「――あっ…」
花沢さんはそれに気が付いていたけれど、相手が男子部員ということが災いし、咄嗟に身体が固まってしまっていた。
「危ない!!」
「花沢さん、避けて!」
花沢さんの目の前に、男の巨体が今にものし掛かろうとしている。
体育館にいる全員が息を呑んだ瞬間、突然、花沢さんの身体が外に押し出された。
「――えっ…!?」
「誰かが庇ってくれた」と、花沢さんが気付いて振り向いた時には、その人物は大柄の男子部員と激突し、大きく吹き飛ばされて地面に伏せているところだった。
「――ヤバイ!!」
小畑くんが急いで駆け寄っていく後ろ姿を見て、私も止まっていた時間が動き出した。
急いで花沢さんを庇って倒れてしまった人の所へ向かうと、そこには右脚を抱えて苦しそうな表情をしている入月くんが横たわっていた。
………………
…………
……
目の前を大きな男の子が塞ぎ、そのまま私の方へと向かってくる。
「危ない!!」
「花沢さん避けて!」
分かってる、避けなきゃ…!
頭では理解している。でも身体が動かない。
それは、まるであの時、近所の小山で、友達だった男の子に、崖から突き落とされたときと同じ、その映像が今、目の前の男子部員と重なる。
『生意気だな、お前……』
突き落とされる前に言われた言葉が、頭の中に響いてくる。
突き落とされて足を怪我した私は、自力では崖を登ることができなかった。突き落とした子も、他の友達たちも私を助けることなく、どこかへ行ってしまった。
「――誰か、誰か助けて!」
雨が降り始め、陽が落ちた頃には叫ぶことも出来なくなった。
絶望、孤独、喪失……
まだ小学生になりたての少女には、想像もできなかった負の感情を、数時間の間、ただひたすらに内側に巡らせて――
「ここにいたぞー!」
懐中電灯の光が眩しかった。その所為で顔はよく見えなかったけど、見覚えのある紺色の制服、たぶん警察の人だった。
「今助けてあげるからね」
その人はそう言って手を差し伸べてくれた。
「――あっ…」
私も手を伸ばした。
けど、伸ばされたその手、その顔が男の人のものだと気付くと――
「ぃギャあああああアァアアア!!」
私は、その場で蹲って、狂ったように大声を上げていた。
頭の中がグチャグチャになり、何度も男の子に崖から落とされる映像がフラッシュバックした。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も……
その瞬間から、私は全ての男の人が怖くなった。
そして今、あの時のように再び崖から落とされてしまうんだ。少しだけ男の人と同じチームでも動けるようになったと思ったばかりなのに……
私は眼前の恐怖に対して、固く目を瞑ることしか出来なかった。
「――ぐッ…!?」
しかし、衝撃は予想外の方向から訪れた。
「えっ!?」
私は横から軽く押し出されるように床に倒された。その衝撃は自分が予想していたものより遥かに小さく、痛みはほとんどなかった。
(何が起こったの…?)
状況が飲み込めないまま、私は固く閉ざしていた瞼を開いた。
私を突き落とそうとしていた男子部員は、私の直ぐ横で床に座割り込んでいる。そして、その人が見下ろしていた人物……
体育館の床に横たわり、右脚を抱えて蹲っている入月先輩がそこにいた。
「――どう、して…?」
「――花沢さん、怪我はない?」
橘部長が倒れている私に駆け寄り、手を差し出す。けれど、私は怪我ひとつしていなかった。
「大丈夫です… あの、何が起こったんですか…?」
「入月くんが花沢さんを庇って、彼とぶつかったのよ……」
「――そんな…」
入月先輩が私を庇って……
「――どうして…?」
今までずっと迷惑とか嫌な思いしかさせていないはずなのに、どうして!?
最初に会った時も、私が先輩の顔にボールをぶつけて、男の人が怖くて、顔を見て謝ることも出来なかったのに……
どうして私なんかのために、そこまでしてくれるんですか……?
「おい! 勇志! 脚やったのか!?」
入月先輩の周りには小畑先輩、林田先輩を始め、多くの人が心配して集まっていく。
「大丈夫、ちょっと捻っただけだ… それより小畑、耳元で大声出すのやめてくれないか? うるさい」
入月先輩は身体を起こしながら、周りの部員たちに、心配ないと身振りで答えていた。
「まあ、軽口を叩けるようなら大丈夫だな」
「勇志、脚ってお前、また前の傷が…」
「心配すんなって真純、何度も怪我してるから大体感覚で分かるけど、今回は大丈夫なやつだから…」
それでもすぐに起き上がれないところを見ると、何事もなかったでは済まない状況なのは、誰が見ても明らかだった。
「すいません入月先輩、怪我させちまって……」
「いいって剛田、飛び込んだのは俺の方だから」
「本当に申し訳ないッス……」
「気にすんなって!けど、花沢さんにはちゃんと謝っておけよ!くれぐれも顔を合わせないようにしてな!」」
「う、うッス、分かりました!」
入月先輩を押し倒した男子部員は『剛田』くんと言うらしい。大きい身体を出来るだけ小さくして本当に申し訳なさそうに謝っている。
けれど、入月先輩は自分ではなく、私に対して謝罪するようにと剛田くんに話している。私を庇って酷い目に遭ったのは自分なのに……
「おい剛田!」
「うッス!」
小畑先輩が珍しく真剣な顔で剛田くんの元へ歩み寄る。
「何だ今のプレーは!?」
「うッス!」
「いつも言ってるだろ、周りが見えなくなった時こそ仲間を信頼しろって!」
「いえ、初めて聞いたッス!」
「そんな巨体を無意味に暴走させちまうやつは『剛田』改め、『ゴリダ』としばらく呼ぶことにする」
「うホッ!?やめて下さいよ~!」
「いいや、危うく我等の大切な宝に傷つけるところだったんだぞ?反省しろ!」
「う、うッス……」
その場の空気が和み始め、また練習が再開されようとしている。けれど、私はまだ入月先輩にどうして助けてくれたのか聞けていない。
本当に聞けるだろうか……
男の人に……
今まで一度も入月先輩の顔を見ることすら出来なかったのに、そもそも男の人と話せない私が、入月先輩に声なんて掛けられるのだろうか……
「とにかく、1度保健室で診てもらいなさい。 林田くん、入月くんを保健室まで連れて行ってくれる?」
「――了解っと」
橘部長が林田先輩に声を掛けて、入月先輩を運び出そうとしている。このままじゃ……!
「わッ!? ちょっと真純!?」
「ワーオ……!?」
「大胆……」
「いや、お姫様抱っこはやめろよ!?」
「いや、でもこれが1番脚に負担が掛からないかなと思ってさ」
「そうかもしれないよ? でもね、こっちは凄く恥ずかしいの!?」
理由を知りたい。聞かないと納得もできない。
男子バスケ部の救世主で、代わりになる人なんていない入月先輩が、代わりなど幾らでもいる、しかも男性恐怖症の女子のために、自分を犠牲にしてまで助けた理由……
私は自分でも不思議と足が進み、気付けば入月先輩に声を掛けていた。
「あ、あの…!?」
「――ん?」
「せ、先輩… ど、どうして……」
入月先輩に声を掛けて、初めて自分がとんでもない事をしていると自覚して、急に言葉に詰まってしまう。
「花沢さん、突き飛ばしてごめんね… 俺のことなら気にしないで、自分でやったことだから」
私が呼吸を整えている間に、入月先輩が私に謝って、余計な気を遣わないようにと言葉を重ねる。
「…………(違う、悪いのは私なんです!入月先輩は何も悪くないんです!)」
頭がぐちゃぐちゃする。心で思っていることが言葉に出来ない。
ただ俯いているだけ。
こんな自分が本当に嫌い。助けてくれた相手にお礼も言えず、顔も見ることができず、しかも気を遣わせて…… 本当に大嫌い……
「花沢さん、バスケ楽しい?」
「――え…?」
突然の不意打ちのように、心にその言葉が刺さった。
「俺はさ、バスケを心から楽しいって思えたの、実は結構最近なんだ… それまでは自分1人で何でもできる気でいてさ、1人では何もできないスポーツなのに……」
入月先輩はどうやってそれに気付けたんだろう……
「じゃあ先輩から1つアドバイス、自分の弱さや、嫌いなところに目が行きがちだけど、たまには周りを見渡すのも悪くないと思うよ」
「――先輩…」
「入月くん、あなた凄くいい事を言っているようだけれど、お姫様抱っこされながら言っても全然格好良くないわよ?」
林田先輩に軽々とお姫様抱っこされている入月先輩は、なんかちょっと可愛らしい感じがした。
「べ、別に格好つけたかったわけじゃないんだからね!?」
入月先輩は橘部長と短くやり取りをして、林田先輩にそのままお姫様抱っこで運ばれていきました。
『バスケ楽しい?』
刺さった棘が再び私に問いかける。
本当は女子校に行きたかったけど、お父さんに強引に共学の高校に行かされることになった。
ろくに父親とも話せない私の『男性恐怖症』を克服させるために、というのは分かっていたけど、入学してからしばらく、本当に辛かったことは昨日の事のように思い出せる。
そんな中、部活動紹介で女子バスケ部を見たとき、私の世界に光が射した気がした。
長い髪を靡かせながら、素早い動きで相手を躱し、華麗にシュートを決める姿、その人にだけスポットライトが当たっているような気がする程、その全てが輝いて見えた。
その時は、まだ名前も知らなかった橘先輩の姿に、私は心から憧れを抱いた。だって、橘先輩はまさしく私の理想そのものだったから。
その後、すぐにバスケ部に入部することを決めた。 運動は得意ではなかったけど、苦手でもないから大丈夫だと思った。
でも、いざ始まってみると、練習は本当に厳しくて何度も心が折れそうになった。
けど、その度に橘先輩の姿を見て「この人みたいになりたいんだ!」と、自分を奮い立たせ、また頑張ることができた。
練習も試合も真面目に取り組んできたし、上手くなるように、人一倍努力もした。
だけど、1度もバスケをしていて『楽しい』と思ったことはなかった。
入月先輩が私に『バスケ楽しい?』と聞いたのは、そんな私の浅はかな気持ちに気付いたからに違いない。
入月先輩がバスケ部に来てから、事ある毎に私に声を掛けてくれた。
「ナイスプレー!」とか、「今のパス絶妙だったね」とか、「足の使い方が上手だね」とか、いっぱい褒めてくれた。
ろくに返事もできなかったけど、そのとき初めて男の人に褒められて嬉しいと思った。
それなのに、私の所為で入月先輩に怪我をさせてしまった。
私がいると誰かの迷惑になる。
私は、私は要らない人間なんだ。
バスケの楽しみ方も分からない人間が、バスケをしていちゃいけないんだ!
「――花沢さん、ねえ、聞いているの?」
「橘部長……」
橘部長の話は全く聞こえなかった。後ろめたさと罪悪感で、橘部長にも合わせる顔がない。
「もしかして花沢さん『誰かに迷惑を掛けるくらいなら、バスケなんてもう辞めよう』なんて考えてる?」
「――どう、して…?」
「そんな顔をしてたら誰だってわかるわよ。でも、それだけは許さないわ。 もしあなたがバスケを辞めてしまったら、入月くんが自分を犠牲にしてあなたを助けた意味がなくなってしまうから」
「でも!」
「『バスケを楽しむ』花沢さんはこれがどういう意味かわかる?」
「わかりません…」
「確かに漠然としているし、楽しみ方なんて人それぞれだと思うわ、だから花沢さん自身が答えを見つけ出さないといけない。けれど…」
「けど…?」
「入月くんは、花沢さんに笑顔でいてほしいんじゃないかしら?」
部長はそう言って優しい笑顔を私に向けた。
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