バッドエンド・タイムリープ!

Bee

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3回目のリープ

29.絶交2

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「鏑木…………」 

 ――さよならって、なんだよ。 

 ウリやってんのかって疑われて怒るのなら分かるけど、ただちょっと松永とのこと聞いただけで、それはねーだろ。 
 言いたくねーなら、いつもみてーに誤魔化せばいいのに、なんでキレて行っちまうんだよ。 
 マジでさよならってなんなんだよ。話しかけてくんなって、絶交ってことかよ。 

 ……あー……くそっ、俺は何やってんだ。 

 あんなに前回の時間軸と同じルートを辿るって決めてたのに、自分からデカいイベントぶち壊して、挙げ句肝心の鏑木に嫌われるなんて。 
 鏑木の代わりに俺が絵を壊したら、話の流れが変わるかもしれないなんて、ちょっと考えたら分かるだろ。ほんと、マジで何にやってんだよ。 

 ……せっかく鏑木との仲も順調だったのに。 

 今度はこれまで以上に、重要な手がかりを聞くことができたかもしれなかったのに。 
 鼻がツンとして、ジワッと目の前が歪む。 

 なんで涙が出るんだろ。 

 イベントをしくじったからか? もしかするとまたループになるかもしれないからなのか? 

(わけ分かんねー) 

とっくに見えなくなった鏑木の背中をしばらく見つめ、それから グスッと滲む涙を拳で拭うと、俺はリュックを背負い直して、足取り重くアパートへと帰った。 

 真っ暗な家に帰りつき、いつものようにパチンと電灯のコードを引っ張ると、明るくなった台所でやる気なくその場に立ち尽くす。 

(……飯、作るのだりーな) 

 今日はバイトもないし、鏑木と一緒に激安タナカマートで、何か買って食べようかと思っていた。だから夕飯を作る気はそもそもなく、そしてやる元気もない。 

(そんな腹も減ってねーから、いっかな……) 

 〝ご飯は三食ちゃんと食べること〟 

 頭に母親との約束が頭をよぎる。だが俺は、とにかく風呂に入ってさっぱりしたかった。 
 今日はかなり暴れた上、泣きながら帰ってきたから、顔も体もさっぱりさせたい。 ゆっくり風呂に入って、今心の中でモヤモヤしているものを洗い流したい気分だった。 

(風呂からあがって、腹が減ったら何か食おう) 

 無心で浴槽を磨き、湯をためる。 

 どうにも落ち着かず素っ裸のまま、浴槽の前で湯がたまるのを待ち、早々と体を洗って、ようやく温かい湯に浸かると、強張っていた体が緩んで、やっとふーっと一息つけた。 

 湯気の立つ狭い風呂場の天井を見ながら、学校であったことを反芻した。 

 松永との一件、そして鏑木とのこと。 
 もう鏑木との関係修復は難しいかもしれない。あんなふうに怒った鏑木は初めてだった。 

(鏑木と接触せず、周囲を調べあげて、なんとか行方不明になるまでのルートを突き止めるしかないのか) 

 学校を休んで、ずっとスナック周辺を見張るか? 
 いやそんなことをしたら、無断欠席が親にバレてしまう。学校から連絡なんか来たら、すぐにでもうちの母親は飛んでくるだろう。 
 そうなってしまえば、バイトの終わる時間まで管理され、鏑木の家に近づくことすら難しくなる。 

(……もうあのスナックの二階の部屋へ行くことはなくなるのか) 

 また涙が出そうになって、ザブンと頭まで湯に浸かる。 
 あんなふうに、正面切って友達にさよならを言われたのが初めてだったからだろうか。 
 風呂に入ってさっぱりした気分になりたいのに、心の中にモヤモヤだけが残る。 

(友達か……) 

「ぷは」と湯から顔を出した。 

(やっぱ俺、鏑木と離れたくねー) 

 明日鏑木に謝ろう。また無視されても何度も何度も謝って、いつか許してもらおう。 

 それしかないと、俺は心に決めた。  



 長湯のしすぎでのぼせて重い頭をタオルで拭きながら、俺は服も着ず冷蔵庫の麦茶を出した。冷たいものでも飲まないと倒れそうだ。 
 洗って伏せておいたコップに麦茶を注いでいると、かすかにアパートの階段を誰かが上がってくる音が聞こえた。 

 二階建てで六戸しかないうちのアパートは、木造でかなり古いこともあって、階段の上り下りの音すらアパート中に響いて聞こえる。なんというかカンカンという靴音のほかに、ドンドンという振動が伝わるというか。 
 だから夜に出入りする時は、結構気を遣う。 

(お隣さん、仕事から帰ってきたのか) 

 そう思って麦茶を飲んでいると、廊下を歩く靴音は隣を通り過ぎ、俺の部屋の前で止まった。 

 俺の部屋に誰かが来ることなんかほぼないから、誰かよその部屋でも間違えてんのかと思った。
 様子を見ていると、廊下に面した窓の曇りガラスにチラチラと人の影が覗く。 
 室内からぼんやり見える、廊下の外灯に照らされた金髪っぽい頭のシルエット。 

「か、鏑木………!?」 

 違うかもしれない。でもあんな派手な金髪はこのアパートの住人にはいないし、この辺じゃ俺は鏑木以外知らない。 
 俺は慌ててコップを流しに置き、部屋着のズボンを履くと、すぐに玄関に向かった。 
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