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番外編
番外編SS 二人の年越し(web版)
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※こちらのお話は年末にぷらいべったーを利用しTwitterにて公開したものを、前回の番外編にあわせ改稿したものになります。
ーーーーーーーーーーー
「年越しの準備ですか?」
「そうだ」
冬の季節が訪れ、雪が降り始めるくらいの頃だった。
冬支度の最中に、ハクラシスが小さな器を二個棚から取り出して、レイズンに見せた。
それは本当に小さなもので、深型の大きな匙の皿部分だけを切り取ったような形だ。
両方とも古びてやや剥げてはいるが、綺麗な朱赤の塗りで縁には金塗りが施されている。とても良い品なのだろう。
「それが? 何に使うんです?」
レイズンは不思議そうに手に取って見た。
二個あるのだから二人で使うのだろうが、何かを入れるにしてはバターが一欠片程度しか入らないし、お酒を注ぐにしてもほんのちょっとしか入らない。
王都では見たことないが、この辺りだけの特別な風習だろうか。
「俺の家は代々猟師なんだが、年越しの夜は大風と共に山の神が山々を駆け抜けるという言い伝えが家にあってな。山に家を持つ者はこれに酒を注ぎ入れ、通り過ぎていく神にこの一年与えて貰った山の恵みへの感謝と、次の年も同じように恵みを与えて貰えるよう、家の戸口を挟んだ両側に供えるんだ」
「へえ~なんだか山の民特有の文化って感じですね」
「そうだな。街では特になにもしないだろう。王都ではアーヴァルが毎年派手に邸宅でパーティを開いていたが……」
そういえば騎士団長の家では高官らを集めた豪華なパーティが開かれると、その時期になると毎年誰かが言っていた。しかし一般的には大きな行事として何かするということはない。やや街が賑やかになる程度で、パーティだのなんだのと派手なことをするのは一部の上位貴族だけ。下位の貴族や平民である街の者は少し着飾り、ささやかに祝いをする程度だ。
「そうですね。騎士団では家に帰る人もいましたが、年越しだからって仕事しないわけにはいかないですし、特になにもしなかったですね。仲のいい者で集まって飲んだり、この時期になると出回る菓子があるので、それを食べるくらいかな……って、そういえば昨年は? 昨年もこれやったんです?」
レイズンはハッと気がついた。そういえば昨年の年越しは、ハクラシスとの初めての冬で浮かれていて、気がついたら終わっていたのだ。ハクラシスも何も言っていなかったから、ここではそういうものかと思っていた。
「ああ。昨年はちょっと慌ただしかったからな。俺だけで済ませた」
「……全然気がつきませんでした」
「ああ、夜に出して朝には回収したからな。いつまでも置いておくものじゃない」
昨年はレイズンに知らせなかったと聞いてちょっとだけショックだった。だがこうして見せてくれるということは、今年は一緒にやろうということだろう。そういうことならとても嬉しい。
「年越しの夜はこれを一緒に供えよう。山神は対の夫婦神と言われている。二人で供えるときっといいことがあるだろう」
「夫婦神……」
昨年は恋人関係になったといってもしばらくは何だか曖昧なままだったから、今年はこうやってしっかり胸を張って恋人だと言えるんだなと思うと、なんだか感慨深く、レイズンは手に持った対の器を見つめた。
そして年越しの日——
その日は雪がちらつく中、小屋の外に二人で酒を注いだ器を供えた。
一応作法があるらしく、ハクラシスの指示通り、戸口を挟んで二人で一つずつ器を置いて供えた。
だがやることはそれだけで、あとは翌朝回収すればいいだけだ。
レイズンとハクラシスはその晩、神に供えた酒の残りを飲み、年越しの神をお迎えするべく二人だけのささやかな酒宴を行った。
ちょっとだけいい酒を飲み、買っておいたちょっといい肉を焼いてつまみにする。
そんな感じで派手になにかをしたわけではないが、二人で密やかな儀式をしたということがレイズンにとっては特別なことであり、またそれはハクラシスの特別になれたという証拠で、それだけで胸がいっぱいだった。
二人とも酒が回り、レイズンがはしゃいだようにキスをすると、ハクラシスがやり返すようにキスをする。
キスをしてくすぐって、転げるように笑って、二人はじゃれあうようにベッドにもつれ込んだ。
二人で裸になると体を弄りあい、キスをし、股間を擦り合わせる。
ハクラシスのペニスはしっかりと硬く勃ち上がり、レイズンの直立したペニスにしっかりと重なり合う。
ストーブの切れた部屋は次第に寒くなってくるが、肌を合わせていると暖かい。
布団の中で夢中で口づけし、耳朶を噛み、肌を吸い、互いの体に薄い跡を残す。
ハクラシスが片手で重なり合ったペニスを扱くと、レイズンは小さく喘ぎ、先端から溢れ出た雫でハクラシスの大きな手を濡らした。
そしてレイズンが体を突っぱね熱い吐息を漏らし、もうそろそろイキそうだと分かると、ハクラシスはレイズンの足を片方だけ抱え上げ、先端から透明な汁を垂らした怒張を後ろに当てがった。
グッと押し込むと、レイズンの体がしなり、歓喜の声を上げるのをハクラシスは堪らず覆い被さり、しがみつくようにして深く口付けた。
◇
外で強い風がビョウと鳴った。
「ああ、風が強くなってきたな」
「もう年越しの時間かな」
偶然なのかもしれないがハクラシスの言った通り、本当に風が強くなってきた。この風であの小さな器が飛んでしまわないか心配になる。
レイズンが裸のままベッドで膝立ちになり、そろっと窓の外を覗いた。ガタガタと鳴る戸板の隙間から強い風が真っ白な雪を運ぶのが少し見えた。
冷たい窓に頬をつけて夢中で見ていると、レイズンの剥き出しになった尻に、ハクラシスが布団の中から首を伸ばし口づけしたついでにやんわりと歯を立てた。
「ひゃっ……あっ——、ちょ、ちょっとハクラシス!」
尻に当たる滑った舌と硬い歯の感触に、レイズンが驚いて振り向くと、ハクラシスがごろんと横になりいたずらが成功した子供のように笑った。
「目の前に尻を出すほうが悪い。それにほら、尻が冷たくなっているぞ。早く布団に戻れ」
片肘を付き布団の端をめくると、レイズンにそこに入るように促した。レイズンも「もう」と文句を言いながらも、へへへと嬉しそうに暖かいハクラシスの懐に潜った。
「明け方には風は止むだろう。明日の朝、起きたら器をしまいにいくぞ」
「へーい」
思ったよりも体が冷えたレイズンは、もぞもぞと頭まで布団に被ると、ハクラシスが冷たくなった頭頂部をぽんぽんと撫でた。
「来年もやるんだからな。やり方を覚えておくんだぞ」
来年も。
「へへへ」
そうだ来年も再来年もずっとここにいられる。もう二度とこの人から離れることはないんだ。
レイズンは嬉しくなってハクラシスの胸にぐりぐりと頭を擦り付けた。
ーーーーーーーーーーーー
ぷらいべったーでの公開時は『番外編あやしい薬の作り方』の公開前でしたので、ハクラシスは不能のままでしたが、今回の改稿で不能が治っています。
あと一部表現を変更するなどの見直しをしています。
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「年越しの準備ですか?」
「そうだ」
冬の季節が訪れ、雪が降り始めるくらいの頃だった。
冬支度の最中に、ハクラシスが小さな器を二個棚から取り出して、レイズンに見せた。
それは本当に小さなもので、深型の大きな匙の皿部分だけを切り取ったような形だ。
両方とも古びてやや剥げてはいるが、綺麗な朱赤の塗りで縁には金塗りが施されている。とても良い品なのだろう。
「それが? 何に使うんです?」
レイズンは不思議そうに手に取って見た。
二個あるのだから二人で使うのだろうが、何かを入れるにしてはバターが一欠片程度しか入らないし、お酒を注ぐにしてもほんのちょっとしか入らない。
王都では見たことないが、この辺りだけの特別な風習だろうか。
「俺の家は代々猟師なんだが、年越しの夜は大風と共に山の神が山々を駆け抜けるという言い伝えが家にあってな。山に家を持つ者はこれに酒を注ぎ入れ、通り過ぎていく神にこの一年与えて貰った山の恵みへの感謝と、次の年も同じように恵みを与えて貰えるよう、家の戸口を挟んだ両側に供えるんだ」
「へえ~なんだか山の民特有の文化って感じですね」
「そうだな。街では特になにもしないだろう。王都ではアーヴァルが毎年派手に邸宅でパーティを開いていたが……」
そういえば騎士団長の家では高官らを集めた豪華なパーティが開かれると、その時期になると毎年誰かが言っていた。しかし一般的には大きな行事として何かするということはない。やや街が賑やかになる程度で、パーティだのなんだのと派手なことをするのは一部の上位貴族だけ。下位の貴族や平民である街の者は少し着飾り、ささやかに祝いをする程度だ。
「そうですね。騎士団では家に帰る人もいましたが、年越しだからって仕事しないわけにはいかないですし、特になにもしなかったですね。仲のいい者で集まって飲んだり、この時期になると出回る菓子があるので、それを食べるくらいかな……って、そういえば昨年は? 昨年もこれやったんです?」
レイズンはハッと気がついた。そういえば昨年の年越しは、ハクラシスとの初めての冬で浮かれていて、気がついたら終わっていたのだ。ハクラシスも何も言っていなかったから、ここではそういうものかと思っていた。
「ああ。昨年はちょっと慌ただしかったからな。俺だけで済ませた」
「……全然気がつきませんでした」
「ああ、夜に出して朝には回収したからな。いつまでも置いておくものじゃない」
昨年はレイズンに知らせなかったと聞いてちょっとだけショックだった。だがこうして見せてくれるということは、今年は一緒にやろうということだろう。そういうことならとても嬉しい。
「年越しの夜はこれを一緒に供えよう。山神は対の夫婦神と言われている。二人で供えるときっといいことがあるだろう」
「夫婦神……」
昨年は恋人関係になったといってもしばらくは何だか曖昧なままだったから、今年はこうやってしっかり胸を張って恋人だと言えるんだなと思うと、なんだか感慨深く、レイズンは手に持った対の器を見つめた。
そして年越しの日——
その日は雪がちらつく中、小屋の外に二人で酒を注いだ器を供えた。
一応作法があるらしく、ハクラシスの指示通り、戸口を挟んで二人で一つずつ器を置いて供えた。
だがやることはそれだけで、あとは翌朝回収すればいいだけだ。
レイズンとハクラシスはその晩、神に供えた酒の残りを飲み、年越しの神をお迎えするべく二人だけのささやかな酒宴を行った。
ちょっとだけいい酒を飲み、買っておいたちょっといい肉を焼いてつまみにする。
そんな感じで派手になにかをしたわけではないが、二人で密やかな儀式をしたということがレイズンにとっては特別なことであり、またそれはハクラシスの特別になれたという証拠で、それだけで胸がいっぱいだった。
二人とも酒が回り、レイズンがはしゃいだようにキスをすると、ハクラシスがやり返すようにキスをする。
キスをしてくすぐって、転げるように笑って、二人はじゃれあうようにベッドにもつれ込んだ。
二人で裸になると体を弄りあい、キスをし、股間を擦り合わせる。
ハクラシスのペニスはしっかりと硬く勃ち上がり、レイズンの直立したペニスにしっかりと重なり合う。
ストーブの切れた部屋は次第に寒くなってくるが、肌を合わせていると暖かい。
布団の中で夢中で口づけし、耳朶を噛み、肌を吸い、互いの体に薄い跡を残す。
ハクラシスが片手で重なり合ったペニスを扱くと、レイズンは小さく喘ぎ、先端から溢れ出た雫でハクラシスの大きな手を濡らした。
そしてレイズンが体を突っぱね熱い吐息を漏らし、もうそろそろイキそうだと分かると、ハクラシスはレイズンの足を片方だけ抱え上げ、先端から透明な汁を垂らした怒張を後ろに当てがった。
グッと押し込むと、レイズンの体がしなり、歓喜の声を上げるのをハクラシスは堪らず覆い被さり、しがみつくようにして深く口付けた。
◇
外で強い風がビョウと鳴った。
「ああ、風が強くなってきたな」
「もう年越しの時間かな」
偶然なのかもしれないがハクラシスの言った通り、本当に風が強くなってきた。この風であの小さな器が飛んでしまわないか心配になる。
レイズンが裸のままベッドで膝立ちになり、そろっと窓の外を覗いた。ガタガタと鳴る戸板の隙間から強い風が真っ白な雪を運ぶのが少し見えた。
冷たい窓に頬をつけて夢中で見ていると、レイズンの剥き出しになった尻に、ハクラシスが布団の中から首を伸ばし口づけしたついでにやんわりと歯を立てた。
「ひゃっ……あっ——、ちょ、ちょっとハクラシス!」
尻に当たる滑った舌と硬い歯の感触に、レイズンが驚いて振り向くと、ハクラシスがごろんと横になりいたずらが成功した子供のように笑った。
「目の前に尻を出すほうが悪い。それにほら、尻が冷たくなっているぞ。早く布団に戻れ」
片肘を付き布団の端をめくると、レイズンにそこに入るように促した。レイズンも「もう」と文句を言いながらも、へへへと嬉しそうに暖かいハクラシスの懐に潜った。
「明け方には風は止むだろう。明日の朝、起きたら器をしまいにいくぞ」
「へーい」
思ったよりも体が冷えたレイズンは、もぞもぞと頭まで布団に被ると、ハクラシスが冷たくなった頭頂部をぽんぽんと撫でた。
「来年もやるんだからな。やり方を覚えておくんだぞ」
来年も。
「へへへ」
そうだ来年も再来年もずっとここにいられる。もう二度とこの人から離れることはないんだ。
レイズンは嬉しくなってハクラシスの胸にぐりぐりと頭を擦り付けた。
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ぷらいべったーでの公開時は『番外編あやしい薬の作り方』の公開前でしたので、ハクラシスは不能のままでしたが、今回の改稿で不能が治っています。
あと一部表現を変更するなどの見直しをしています。
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