21 / 29
ダイチの本心
4
しおりを挟む
「――店って、ここか?」
駅前のネオン輝く賑やかな通りを過ぎて、かつては賑やかだっただろう昔の繁華街の名残を感じる古いビルが立ち並ぶ、人通りの少ないやや薄暗い通り。その一角にある、やたら縦に細長いビルの3Fにその店はあった。
ビルの端にある上へと続く細い急な階段。そこは間接照明かってくらい照明が暗く、人がひとり通るので精一杯の狭い階段の壁には、バーの看板やチラシが新旧織り交ぜて貼られてあり、その中に、ルナ・プロフィトの小さなチラシも貼られてあった。
このビルのどこにも看板がない、ルナ・プロフィトがこのビルに店があることを示す唯一のサイン。
外から見ると、3階の窓からは、怪しい紫色の明かりが溢れている。たぶんお目当ての店はあそこだろう。
俺はその明かりを見上げながらスマホで時刻を確認すると、バックライトに19:04の文字が浮かび上がる。予約時間は19:30だから、まだちょっと早い。
店はバーの中だって言っていたから、早めに行ってもバーで飲んでりゃ大丈夫だろ。
ボッタクリバーとかじゃないといいなと思いながら、怪しさ満点のこの薄暗い階段を登った。
金属製の重いドアを開けて、中を覗くと、紫のライトに照らされたカウンターにいるバーテンダーらしき男性と目があう。
「いらっしゃいませ」
「すみません、19時半から占いの予約をしていたんですけど……」
「お伺いしております。カウンターでお待ちください」
妖艶な紫のライトに反して、店内にはメロウな音楽がしっとりと流れている。
まだ時間が早いからか、店内にはカウンターに客が数人いるだけで、お酒目当てでなくても居やすい雰囲気だった。
占いにはワンドリンクが付いていて、それを注文し飲みながら待っていると、1人の男性が俺に近づいてきた。
「今日占いの予約をしてくれたのって、あなたかしら」
紫色の店内に沈みこむような浅黒い肌に、短く刈り上げた髪。体つきはゴツく、紫に染めているのか、はたまたライトの色が反射しているのか分からないくらい派手な色の髪で、声をかけられた瞬間、思わず俺はギョッとして身構えてしまった。
「あら、やだー。怖がらないでよ。占い師のサイよ。佐藤ちゃんから聞いてきたんでしょ? 今日佐藤ちゃんは? 来てないの? えーがっかりぃ」
その見た目とは相反する女性っぽい仕草に、予想外というか想像どおりというべきか。
「なんで佐藤の知り合いだって知って……」
「だってこの前連絡あったもの。友達が行くかもって。名前も聞いてたから、すぐに分かったわ。予約は本名じゃなくても良かったのに。アナタまじめねぇ」
佐藤、連絡してくれてたのか。あいつ、俺の行動をよく読んでるな。
それにしても予約は匿名でもよかったのかー。おっさんはこういうとき、本名で予約しがちなんだよ。
「ちょっと早いけど、用意できてるから始めましょうか。じゃこっちに来て。あ、グラス持ってきていいわよ」
店の奥にカーテンのひかれた小部屋があり、どうやらそこがルナ・プロフィトの敷地であるようで、細い廊下の奥にある小部屋に案内された。中は間接照明で怪しい雰囲気を醸し出してはいたが、思ったよりもいかにもな感じがなく、佐藤の言っていた『大人の占い場』というテーマにぴったりの場所だった。
中央には黒いカーテンが引かれたテーブルがあり、俺は促されるままそこに座ると、サイさんがカーテンの向こう側に一瞬消え、すぐに両開きカーテンの間から顔を出し、向かいあって座った。
「さ、じゃあ始めるわよ。今回は予約のときに記載してくれた恋愛相談ってことでいいかしら。……他にもなにか相談ごとがありそうだけど」
なんでも見透かしているかのようにニッと笑うサイさんの凄みに、俺の喉がゴクンと鳴った。
駅前のネオン輝く賑やかな通りを過ぎて、かつては賑やかだっただろう昔の繁華街の名残を感じる古いビルが立ち並ぶ、人通りの少ないやや薄暗い通り。その一角にある、やたら縦に細長いビルの3Fにその店はあった。
ビルの端にある上へと続く細い急な階段。そこは間接照明かってくらい照明が暗く、人がひとり通るので精一杯の狭い階段の壁には、バーの看板やチラシが新旧織り交ぜて貼られてあり、その中に、ルナ・プロフィトの小さなチラシも貼られてあった。
このビルのどこにも看板がない、ルナ・プロフィトがこのビルに店があることを示す唯一のサイン。
外から見ると、3階の窓からは、怪しい紫色の明かりが溢れている。たぶんお目当ての店はあそこだろう。
俺はその明かりを見上げながらスマホで時刻を確認すると、バックライトに19:04の文字が浮かび上がる。予約時間は19:30だから、まだちょっと早い。
店はバーの中だって言っていたから、早めに行ってもバーで飲んでりゃ大丈夫だろ。
ボッタクリバーとかじゃないといいなと思いながら、怪しさ満点のこの薄暗い階段を登った。
金属製の重いドアを開けて、中を覗くと、紫のライトに照らされたカウンターにいるバーテンダーらしき男性と目があう。
「いらっしゃいませ」
「すみません、19時半から占いの予約をしていたんですけど……」
「お伺いしております。カウンターでお待ちください」
妖艶な紫のライトに反して、店内にはメロウな音楽がしっとりと流れている。
まだ時間が早いからか、店内にはカウンターに客が数人いるだけで、お酒目当てでなくても居やすい雰囲気だった。
占いにはワンドリンクが付いていて、それを注文し飲みながら待っていると、1人の男性が俺に近づいてきた。
「今日占いの予約をしてくれたのって、あなたかしら」
紫色の店内に沈みこむような浅黒い肌に、短く刈り上げた髪。体つきはゴツく、紫に染めているのか、はたまたライトの色が反射しているのか分からないくらい派手な色の髪で、声をかけられた瞬間、思わず俺はギョッとして身構えてしまった。
「あら、やだー。怖がらないでよ。占い師のサイよ。佐藤ちゃんから聞いてきたんでしょ? 今日佐藤ちゃんは? 来てないの? えーがっかりぃ」
その見た目とは相反する女性っぽい仕草に、予想外というか想像どおりというべきか。
「なんで佐藤の知り合いだって知って……」
「だってこの前連絡あったもの。友達が行くかもって。名前も聞いてたから、すぐに分かったわ。予約は本名じゃなくても良かったのに。アナタまじめねぇ」
佐藤、連絡してくれてたのか。あいつ、俺の行動をよく読んでるな。
それにしても予約は匿名でもよかったのかー。おっさんはこういうとき、本名で予約しがちなんだよ。
「ちょっと早いけど、用意できてるから始めましょうか。じゃこっちに来て。あ、グラス持ってきていいわよ」
店の奥にカーテンのひかれた小部屋があり、どうやらそこがルナ・プロフィトの敷地であるようで、細い廊下の奥にある小部屋に案内された。中は間接照明で怪しい雰囲気を醸し出してはいたが、思ったよりもいかにもな感じがなく、佐藤の言っていた『大人の占い場』というテーマにぴったりの場所だった。
中央には黒いカーテンが引かれたテーブルがあり、俺は促されるままそこに座ると、サイさんがカーテンの向こう側に一瞬消え、すぐに両開きカーテンの間から顔を出し、向かいあって座った。
「さ、じゃあ始めるわよ。今回は予約のときに記載してくれた恋愛相談ってことでいいかしら。……他にもなにか相談ごとがありそうだけど」
なんでも見透かしているかのようにニッと笑うサイさんの凄みに、俺の喉がゴクンと鳴った。
42
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~
紫鶴
BL
早く退職させられたい!!
俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない!
はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!!
なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。
「ベルちゃん、大好き」
「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」
でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。
ーーー
ムーンライトノベルズでも連載中。
身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!
冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。
「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」
前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて……
演技チャラ男攻め×美人人間不信受け
※最終的にはハッピーエンドです
※何かしら地雷のある方にはお勧めしません
※ムーンライトノベルズにも投稿しています
美人王配候補が、すれ違いざまにめっちゃ睨んでくるんだが?
あだち
BL
戦場帰りの両刀軍人(攻)が、女王の夫になる予定の貴公子(受)に心当たりのない執着を示される話。ゆるめの設定で互いに殴り合い罵り合い、ご都合主義でハッピーエンドです。
【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
姉の男友達に恋をした僕(番外編更新)
turarin
BL
侯爵家嫡男のポールは姉のユリアが大好き。身体が弱くて小さかったポールは、文武両道で、美しくて優しい一つ年上の姉に、ずっと憧れている。
徐々に体も丈夫になり、少しずつ自分に自信を持てるようになった頃、姉が同級生を家に連れて来た。公爵家の次男マークである。
彼も姉同様、何でも出来て、その上性格までいい、美しい男だ。
一目彼を見た時からポールは彼に惹かれた。初恋だった。
ただマークの傍にいたくて、勉強も頑張り、生徒会に入った。一緒にいる時間が増える。マークもまんざらでもない様子で、ポールを構い倒す。ポールは嬉しくてしかたない。
その様子を苛立たし気に見ているのがポールと同級の親友アンドルー。学力でも剣でも実力が拮抗する2人は一緒に行動することが多い。
そんなある日、転入して来た男爵令嬢にアンドルーがしつこくつきまとわれる。その姿がポールの心に激しい怒りを巻き起こす。自分の心に沸き上がる激しい気持に驚くポール。
時が経ち、マークは遂にユリアにプロポーズをする。ユリアの答えは?
ポールが気になって仕方ないアンドルー。実は、ユリアにもポールにも両方に気持が向いているマーク。初恋のマークと、いつも傍にいてくれるアンドルー。ポールが本当に幸せになるにはどちらを選ぶ?
読んでくださった方ありがとうございます😊
♥もすごく嬉しいです。
不定期ですが番外編更新していきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる