前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか

Bee

文字の大きさ
29 / 29
ダイチの本心

12 -完-

しおりを挟む
『……これさ、尚人から口止めされてたんだけどさ。もう時効ってことで』 
「……尚人が関係してんのか」 

 久々に口に出した、その名前。忘れたはずなのに、いまだにまだその名前を口にするのは抵抗がある。 

『ちょうどお前らが付き合い出したときのことなんだけどさ。尚人が、ユウジにちょっかいだしてるヤツがいて牽制したいから付いてきてくれって言われたことがあったんだ』 
「え?」 

 あれ、それってまさか黒木が言ってた……。 

『俺らの中で、尚人とユウジが付き合ってるの知っていたのは俺だけだったし、まあ見た目的に体格もよかったから、威嚇すんのに一緒にいてくれって話でさ』 
「まさかそれ、尚人が黒木に俺へ近づくなって、脅したってやつか……?」 
『なんだよ。知っていたのか。まさしくそれよ。つっても脅してはねーけどな。黒木はいかにも山男って感じで、体もでかかったじゃん。尚人もさすがに一人じゃ怖かったんだろうな。二人であいつのところに行って、尚人が『ユウジに馴れ馴れしくするな』って言う、それだけのことだったんだけどな』 
「……」 
『黒木ってさ、スゲー愛想よくて人懐っこいイメージあったじゃん。でもよ、そん時の黒木、いつもと違ってものすっごい敵意むき出しで。尚人を睨む黒木の目が、スゲー怖くてさ』 

 その状況、なんとなく想像できる。 
 大学のときは、いつもニコニコしてる黒木しか知らなかったけど、夢での黒木を知っているからな。 

『……前に、童貞くんと飲み屋帰りに会ったじゃん』 

 何度もダイチを童貞くんって呼ぶな。 

『俺がユウジに冗談でチューしたとき、それを見てたあいつの目が、あんときの黒木にそっくりでさ。ユウジから黒木の生まれ変わりかもしれないって話聞いてたからだったのかもしれないけど、ちょっとゾッとしたんだよな』 

 ダイチ、あのときそんな怖い顔してたのか。 

 全然気付かなかった。俺に対する執着心だけは、確実に黒木から引き継いじゃってるもんな。 

 でも佐藤がたったそれだけのことで、ダイチと黒木を結びつけるなんて。ちょっと意外だった。 

「……佐藤は生れ変りとか、何があっても絶対信じない否定派だって俺は思ってた」 
『信じねーよ。信じねーけどさ。でもあの状況であのタイミングって、信じちゃうだろ。……つーか、俺はビビリなんだよ。怖いだろ、死んだ友達が生まれ変わって近くにいるとか、そんなの。あるはずねぇのに、それを信じちゃう友達とかさ。しかも今回は本当かもしれないって、どこのホラー映画だよ』 
「お前、ホラーダメだっけ」 
『ホラーがダメってダサいだろ。だから人には言ってねーよ』 
「ホラーが苦手だとダサいのか?」 
『ダサいだろ』 

 スマホの向こうでハハハと笑いながら、缶ビールを飲む音が聞こえる。 

 そうか、あの場には佐藤もいたのか。俺の知らないところで、勝手にしてくれちゃってさ。 

 黒木だって、生きてるときにちゃんと俺に告白でもなんでもしてくれてたら、こんなややこしいことにならずに済んだのに。 

 ――まあでも、そうじゃなかったらダイチとは会えていなかったか。 

 佐藤がうまそうに喉を鳴らす音をスマホ越しに聞きながら、俺も冷蔵庫から出してきた缶ビールを開ける。プシュッという音とともに、白く細かい泡が溢れ出て、俺は慌てて口をつけた。 

『今何開けた? ビール?』 
「ビール。酒屋で見つけた季節限定のちょっといいやつ」 
『お、いいな。俺なんかさっき嫁に、ビールは高いからチューハイかハイボールにしてって言われたから、次からハイボールだぜ』 
「ははは」 
『早く童貞くんに許して貰って、飲みに行かねーとな』 
「そうだな。ってだからお前ダイチを童貞くん呼びするな」 
『ははっ』 

 ダイチの理解を得るまでは、しばらく佐藤と二人で飲みに行くことはできないな。 

 黒木本人と尚人がいない今、何も知らないダイチに言い訳するのは無意味でしかないけど、佐藤とのことだけは本当に嫉妬するだけ無意味だってことを、ダイチに理解してもらわないと。 

 話している最中、イヤホンから佐藤の声に重なるようにピロンという軽快な音が聞こえた。スマホの画面を見ると、通話中の画面に着信の通知が。 

「おっと、ダイチから着信きた。佐藤、じゃあこれで切るな」 
『お。マメだね~。じゃまたな』 

 スマホの画面上部に表示された着信通知を確認する。 

 時刻は20時過ぎ。ちょうどダイチのバイトが終わった時間だ。 

 通知をタップして、ダイチにかけ直す。 
 もしかすると、今自転車で家に帰っている途中なのかもしれない。 

 呼び出し音が鳴る間、隣でスピスピとかわいい寝息をたてて寝ているロッシュを撫でる。ロッシュはドッグスクールで疲れたのか、帰宅後にごはんを貰ったあと、俺が佐藤と通話を始めるとすぐに寝てしまった。 

「あ、もしもしダイチ? 今バイト終わったのかい? 俺はさっき佐藤とリモート飲み会やってた。え? うちに来たいって? 遅い時間だけどいいのかい。……しょうがないな、分かったいいよ。自転車だろ、気をつけて来るんだよ」 

 ダイチのやつ、佐藤とリモート飲み会をしていたと言ったら、自分も家に行きたいと言い出した。佐藤とはリモートしてただけだよ? 

 仕方がない。奥手のくせに嫉妬深い恋人が来るっていうから、ちょっと何か食べられるものでも用意しようかな。ビールはまだあるけど、自転車といえと飲酒運転させるわけにはいかないから、片付けておこう。 

 何がいいかな。やっぱ肉かな。 

 俺はウキウキした気分でロッシュを起こさないように立ち上がると、ビールの空き缶を流しに置いて、冷蔵庫を開けた。 

 

【完】 
しおりを挟む
感想 3

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(3件)

鹿の子🦌
2025.01.26 鹿の子🦌

再度読ませていただきました😊私の中でBeeさんの名刺的な作品
Rまで遠きぐだぐださが現代的ですよね、
異世界やファンタジーの世界より、人が平和で恋以外にも娯楽や時間つぶしが多く、孤を認める世事があるし、いろいろ垣間見る
犬の方に転生した?説がやはり、捨てきれない
執着が強すぎて、獰猛な面が犬に、生前の穏やかな面が人に転生したのかしら、やはり
犬よ、噛むのだ、吠えろ
お前の飼い主はお前が一番かわいいと思ってるはずだ😁
お前のが、先に腕の中で寝てたもんね💕


犬目線が頭沸かして仕方ないです

おかげで楽しい休日になりました✨

2025.01.26 Bee

ご感想ありがとうございます!
完結からしばらく経つのに、こうして読み返していただけるなんて、とても嬉しいです。しかも感想まで!
本当にありがたいです。

さてさて、黒木はどっちに転生したのか問題ですが、どっちなんでしょうね〜笑
やっぱりこっちかな〜といろいろ想像して楽しんでほしいので、お好きなだけ妄想を膨らませて下さい!

そのうち佐藤のスピンオフを書きたいなーと思っています。ユウジも再登場する予定なので、そのときはまた読んでいただけたら幸いです!
では宜しくお願いいたします🙇

解除
きかる
2023.12.04 きかる

こんばんは。ユウジさんがピュア過ぎます♪(/ω\*)そのうち、ダイチくんの掌でコロコロ転がされそうですねw
佐藤さんは、本当に友だち思い。どうしようもない女好きだけど、憎めないですw一番好きなキャラです(^^)サイさんに食べられちゃいそうなのも( *´艸`)

尚人には、薄毛と加齢臭とメタボの呪いをかけてと( ̄ー ̄)ニヤリ

ユウジさんに焦れつつ、読み終わりました。気持ちがほっこりです(^^)ふたりの初めての夜の話を想像したら、やっぱり焦れそうですね。やさしい気持ちになれたお話でした。ありがとうございました(^-^ゞ

2023.12.04 Bee

ご感想ありがとうございます!
とても嬉しいです〜!
受け身すぎるユウジと奥手すぎるダイチの初夜は、たぶん一筋縄ではいかないでしょうね〜(笑)
佐藤については、実は彼が主人公の話の構想もありまして…。書けたら書きたいな〜などと思っています。
その時は、ユウジとダイチの話もR18ネタを追加して更新できたらいいなーなんてことも考えております。
その時はまたお読みいただけたら嬉しいです。

解除
鹿の子🦌
2023.10.31 鹿の子🦌

Beeさま新作ありがとうございます🥳 
黒木かわいいな、コラ🥰
早くも溺愛、愛重タイプのクマ🐻さん!
好きな系譜のお話で、おもしろかったからね
続き楽しみです

2023.10.31 Bee

ご感想ありがとうございます!
かなり黒木がぐいぐいきてましたが、ユウジは困惑気味でした笑
またこれから話がすすんでいきますが、最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。

解除

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~

紫鶴
BL
早く退職させられたい!! 俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない! はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!! なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。 「ベルちゃん、大好き」 「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」 でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。 ーーー ムーンライトノベルズでも連載中。

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!

冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。 「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」 前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて…… 演技チャラ男攻め×美人人間不信受け ※最終的にはハッピーエンドです ※何かしら地雷のある方にはお勧めしません ※ムーンライトノベルズにも投稿しています

美人王配候補が、すれ違いざまにめっちゃ睨んでくるんだが?

あだち
BL
戦場帰りの両刀軍人(攻)が、女王の夫になる予定の貴公子(受)に心当たりのない執着を示される話。ゆるめの設定で互いに殴り合い罵り合い、ご都合主義でハッピーエンドです。

【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。 ⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

姉の男友達に恋をした僕(番外編更新)

turarin
BL
侯爵家嫡男のポールは姉のユリアが大好き。身体が弱くて小さかったポールは、文武両道で、美しくて優しい一つ年上の姉に、ずっと憧れている。 徐々に体も丈夫になり、少しずつ自分に自信を持てるようになった頃、姉が同級生を家に連れて来た。公爵家の次男マークである。 彼も姉同様、何でも出来て、その上性格までいい、美しい男だ。 一目彼を見た時からポールは彼に惹かれた。初恋だった。 ただマークの傍にいたくて、勉強も頑張り、生徒会に入った。一緒にいる時間が増える。マークもまんざらでもない様子で、ポールを構い倒す。ポールは嬉しくてしかたない。 その様子を苛立たし気に見ているのがポールと同級の親友アンドルー。学力でも剣でも実力が拮抗する2人は一緒に行動することが多い。 そんなある日、転入して来た男爵令嬢にアンドルーがしつこくつきまとわれる。その姿がポールの心に激しい怒りを巻き起こす。自分の心に沸き上がる激しい気持に驚くポール。 時が経ち、マークは遂にユリアにプロポーズをする。ユリアの答えは? ポールが気になって仕方ないアンドルー。実は、ユリアにもポールにも両方に気持が向いているマーク。初恋のマークと、いつも傍にいてくれるアンドルー。ポールが本当に幸せになるにはどちらを選ぶ? 読んでくださった方ありがとうございます😊 ♥もすごく嬉しいです。 不定期ですが番外編更新していきます!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。