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しおりを挟むその日の夕方、皇妃がルティアと共に行う筈だった公務の報告と見舞いに皇太子妃の部屋へと訪れた。
専ら、見舞いという名の説教ではあったのだが、ローズも連れていたので、若干大人しめの説教である。
「良いですか、ルティア………幾ら夫から求められようとも、翌朝迄疲れを溜める迄許すのは以ての他!わたくしは早く孫を求めてはおりますが、貴女の身体に負担を掛けては元も子もないのです!」
「ゔっ………気を付けます……申し訳ございません」
その説教を黙って皇妃の横で聞いていたローズは、噛み締める様に頷いている。
「私が、殿下の机の上にあった薬を、誤って口に入れてしまったものですから………」
「聞きました………ジェスターが用意した媚薬だそうですね…………そんな物を用意しているのに、お互いに避妊薬迄飲んでいると言うではありませんか」
「そ、そこ迄殿下からお話が!」
「ジェスターに孫はまだか、と聞いたのです」
「……………あ……なる程……」
皇妃に聞けば、リアンから体調不良で公務が出来ないから休ませたい、と言われたが皇妃の勘が、何かある、と思った様で、根掘り葉掘り聞き出したらしい。
母の圧には勝てないリアンは、苦し紛れに全部話てしまった様だ。
「誰か!」
「はい」
皇妃はそう話を切り上げると、侍女に声を掛けた。
「皇太子、皇太子妃の部屋内にある避妊薬を探し出し、撤去しなさい!そして、昨夜使われた媚薬も取り上げます!」
「畏まりました」
「え!」
「え!じゃありません!さぁ、早く探して処分するのです!」
リアンと話て、避妊薬を飲んでいるの迄知られてしまったのだ。
ルティアからすれば、結婚したのだから子供はいつ出来ても構わないが、リアンが拒んでいるのには訳があるのもルティアは知っているので、尊重していたのだ。
それを、奪われてしまったら、ルティアは避妊薬の入手方法が分からないので、飲めなくなってしまう。
「皇妃陛下!避妊薬は皇太子殿下が飲むのを決めた事です!その撤去は皇太子殿下はご存知なのですか?」
「ルティア、子は授かり者です。婚約時代ならいざ知らず、結婚したのに子が宿らない、と言われて肩身の狭い思いをするのは貴女なのですよ!そろそろ、世継ぎの話も耳にする事も貴女にだってあるでしょう?」
「そ、それは………はい………」
「媚薬や精力剤に頼るには、本当に子が出来ない、と思った時の神頼みの1つです!若い貴女達なら、そんな物に頼らずとも子は出来ます!」
「で、ですが殿下は時期を見て、と………」
「……………ならば、その時に励みなさい!ルティアの皇太子妃勉強や公務の心配なら、その様な事は何とでもなるのです!」
考えて見ればそうだ。
大した戦力にもならない公務しか出来ないルティアが妊娠で、公務に支障来した所で、代わりは居るだろう。
リアンが皇太子になってからも、皇妃が皇太子妃の仕事を熟して来てたのだ、とルティアは聞いている。
「そうかもしれないですが、私はまだまだ新米皇太子妃で、覚えなければならない事が沢山あって………」
「わたくしは、クレイオを産んで直ぐに皇妃になりました」
「……………」
「皇太子妃から皇妃、この差は経験しなければ、理解は出来ない事です………その結果、産後鬱と公務、育児と気が狂いそうな多忙の日々…………重圧が今以上に掛かるのがわたくしに分かっていて、ジェスターの心配や戯言等、聞く耳等ございませんし、単なる我儘としか思えません!皇太子妃の立場である内に、数人は産んで欲しい、とわたくしの経験上、申しているのです!」
「ジェスターの考えが戯言って………プッ……」
此処に来て、黙っていたローズが失笑している。
「戯言以外何がありますか………ローズ王女、貴女も結婚したら、夫の戯言に付き合うのも程々になさい」
「ま、まだ結婚が決まった訳じゃないですよ、私は」
「……………そうですわね……貴女は駆け落ちするのですものね………」
そう、ローズの駆け落ちは、皇妃だけでなく皇王にも耳に入っている。
そして、皇王から直々にマスヴェル国、コートヴァル国の王に、反逆の気配あり、と認めた手紙を送り、その中心となるローズ救出をシャリーア国で行う事を早急に知らせている。
両国王がどう判断するかは返事待ちではあるが、お荷物を持つ国の君主が、そのお荷物の排除に苦しんでいるならば、シャリーア国の意に従うだろう、とリアンは判断していたのだ。
「で、でも本当にシャリーアに頼って良いのですか?叔母様」
「わたくしは貴女の叔母ですよ?知らぬ間柄ではないわ………幸せになって欲しいの」
「叔母様…………ありがとうございます」
ベッド脇で、皇妃に手を添えられるローズを見たルティア。
血の繋がりで、ルティアより何倍にも甘いローズに対する接し方に、少々の嫉妬心が湧くが、皇妃のルティアへ対する厳しさは、国を思っての事が大半を占めるので、そのままルティアは見守った。
「失礼致します。皇妃陛下………避妊薬回収致しました」
「……………そう、全部見つけましたか?」
「恐らく全部かと思います」
「ルティア、他に隠していませんね?」
ルティアはキャビネットの中に纏めて避妊薬を入れていて、侍女達も知っている。
「あ、はい…………私の方はキャビネットの中にある物が全てです」
「分かりました………ジェスターは頭が切れる子だから、もしかしたら他に隠しているでしょう………居ない時を見計らい執務室も探させましょう………この後、晩餐会もあるのだから、そろそろ準備に入らねばね…………ローズ王女も出席するのでしょう?」
「はい、私も準備します………ルティアちゃんは?」
「ルティアは欠席ですわ」
「え!楽しみにしてたのに………」
「身体中、キス痕だらけの肌を見せびらかす神経は、この娘にはありませんよ」
「ゔっ…………申し訳ありません……」
キスマークをドレスから見える場所に付けるな、と散々言ってきたルティアだが、リアンに昨夜は付けまくられて、数日は消えなさそうなのだ。
意識を朦朧としていた時に、隙をついて付けるリアンを、皇妃に怒って欲しいものだった。
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