皇太子と結婚したくないので、他を探して下さい【番外編】

Lynx🐈‍⬛

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11 *リアン視点

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「無い!無いぞ!………仕入れたばかりなのに!」

 皇太子の部屋で避妊薬を奪われた、とルティアから聞かされたリアンは、慌てて自分の執務室に戻って、隠していた場所を確認していた。

「如何されました?ジェスター殿下」
「ベルイマン!お前、この引き出しにしまってあった避妊薬知らないか!男女共に保管してあったんだ!」
「……………あぁ……先程、皇妃陛下の侍女達が、持って行きましたよ」
「何だと!」
「要ります?避妊薬」
「要るよ!」

 リアンが避妊薬を欲しい理由は、ベルイマンには教えてはいない。
 そして、執務室に居るライナスやクレイオさえも、そのリアンに不思議な顔を向けていた。

「兄上、何で必要なのさ……結婚したんだよ?義姉上が懐妊したら喜ばしい事じゃないか」
「そうですよ。皇太子妃になられたルティア様には、先ず懐妊の朗報を待つ者も多いんですよ?」
「世間ではそうだろう………だが、俺はティアには妊娠して欲しくない!」
「ジェスター殿下、では良いんですか」

 まだ要らない、と言うならば、欲しい時期はある筈で、それが気になるベルイマンは、聞き出そうとして、仕事の手を止めた。

「い、いつだって良いだろ!お前達には関係無い事だ!ライナス!お前なら避妊薬持ってるよな!今夜分だけでも分けてくれ!」
「持ってませんよ」
「…………嘘吐くなよ?」
「今夜のデートの予定無くなりましたから」
「ベルイマンは!」
「俺ですか?何で持っているテイで聞いて来るんです?帰宅すれば、避妊する必要の無い妻を抱けるのに、もう用意等しませんよ」
「クレイオ…………は無いな………」
「は?兄上!それ酷くない?僕だって持っているかもしれないじゃないか!」
「クレイオ、お前………ティリス嬢を口説いてるんだろ?フェリエ侯爵の怒りを持たれると、婚姻話なんて持っていけなくなるぞ?良いのか?」
「ゔっ………」

 少しでも誠実さをフェリエ侯爵に見せておきたいだろうクレイオに、避妊薬を持っているとはリアンは思っていない。
 姉妹揃って皇族に嫁がせようとも、フェリエ侯爵が思ってはいない筈なのだ。
 しかも、ティリスはまだ11歳。婚約者もまだ決まっていない年齢で、ルティアの婚姻話も後回しにしていたフェリエ侯爵を見れば、クレイオとの婚姻さえ全く考えてはいないだろう。

「ジェスター殿下、それで何故まだ避妊薬が必要なんです?話を逸らしたって、避妊薬は手に入りませんよ?」
「……………ベルイマン、直ぐに手に入るのか?」
「入りませんよ………あ、他の者から調達しないで下さいね?非ぬ噂が出るかもしれませんから」
「そんな事は百も承知だ!…………俺だって、世継ぎはまだか、と聞かれてるんだからな……避妊薬飲んでいる、というのも母上の圧でポロッと出なければ、ずっと内密にしたかった事なんだから………」
「で?…………理由は何なんですか?」
「な、内緒だ!」
「ジェスター殿下、とは聞きづてなりませんね」
「ラ、ライナス………お前迄………」
「兄上、僕も知りたいなぁ」

 リアンは内緒にしたかった。
 理由は大した事はない。

 ---い、言ったら笑われる!絶対にこいつ等は笑う………俺が考えてる事等言えるか!

「言わない…………あと2ヶ月は避妊したい……ただそれだけだ……」
「2ヶ月…………あぁ………殿下の誕生月ですね」
「っ!」
「兄上…………まさかそれって………」
「何、少女趣味的な事を考えてるんですか、殿下」
「な、な、何を言ってるんだ!お前達!」

 2ヶ月後にはリアンは誕生日を迎える。
 そして、その月の2年前にルティアと出会ったのだ。
 リアンは大切な記念日として、ルティアのを貰いたいと思っている。
 自身の誕生日と、出会った日。思い出深いこの月に、子作りを始めたかったのだ。
 何もそれで子を宿さなくても気にはしないが、ルティアと大事に愛情を育み合いながら、抱き合いたくて、我慢していた。
 その前に妊娠してしまったら、ルティアを抱けない可能性もあるからだ。

「何、純情ぶってるんですか、らしくない」
「っな!」

 動揺するリアンを見られたら、長く付き合いのあるライナスとベルイマンには隠せない。

「い、良いだろ!に、妊娠していたら、閨事だって無理させられないと聞くし!」
「…………あぁ、なる程………んですね?思う存分と………昨夜だって、無理させてませんでした?」
「ゔっ…………う、煩い!そ、それは………ティアが誤って媚薬を飲んでしまったからで………」
「殿下が飲んでも、同じ結果になりますよ、きっと」
「……………ゔっ……」
「殿下…………ティアはああ見えて、結構な現実主義者なので、例えその前に妊娠したからと言って気にする様な娘じゃないですよ」
「だ、だが………ベルイマン………ティアはロマンティストだぞ?」
「何処がです?」

 リアンはベルイマンがルティアを愛称呼びしていても突っ込まない程、動揺を隠せてはいなかった。

「文学に詳しい………月が綺麗だ、と言うと、死んでもいい、と教えてくれるぐらい、愛情の表現を知っている………」
「…………月?………あぁ……それ、スヴェンの受け売りですね………スヴェンの方がロマンティストですからね、ティアは教えられたんでしょう」
「た、確かにスヴェンから教わったとは言っていたが」
「彼女は詳しい訳ではなく、好きなピアノの参考程度の表現としか知りませんよ………まぁ、殿下が拘るのなら、我慢すれば良いかと………2ヶ月、避妊薬無しで抱くか、拘りを捨てるか、殿下の葛藤を暫く見られそうですね」
「っ!」
「面白そう!」
「クレイオ殿下、賭けます?」
「賭ける!僕は我慢出来ない方!」
「俺も!ベルイマンは?そうするとお前は我慢出来る方に賭けだな」
「は?無理に決まってるじゃないか、ライナス……ジェスター殿下だぞ?」

 リアンを肴に賭け事を始めた3人に、リアンは怒鳴る。

「お前達!俺で遊ぶな!」

 貯まりに貯まった仕事を放置したリアンの執務室は、夜遅く迄明かりが灯っていた。
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