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しおりを挟むクレイオの誕生祭も終わり、来賓達も帰路の準備も始まっていた。
それなのに、コートヴァル国とマスヴェル国の帰路の準備は進んではいない様に見えた。
そして、そんな両国の貴族達はコソコソと面談を繰り返しているのを、シャリーア国の貴族達に目撃されていた。
「隠す気は無いのか?あの者達は」
「どうなんでしょうね………帰国も迫ってますし、焦りも見えます」
「ローズの周辺警護に余念がないからな………近付かせはしないから焦るだろうな」
ローズを1人にさせてはいないのだ。
来国中は常に、シャリーア国の警護をローズに付けている。
マスヴェル国の警護だけでは、言いくるめられたら連れ去られるかもしれないからだ。
ローズの護衛を信用していない訳ではないが、報告が遅れて対処が出来なくなる可能性も示唆していた。
「今夜ですね………ローズ様とお兄様の駆け落ち……」
「ティア、心配そうな顔をしないの」
「……………だって……」
「大丈夫だよ、ルティアちゃん」
離宮のテラスでルティアとローズは優雅にお茶を嗜んでいる時、様子を見に来たリアンとベルイマンも休憩がてら寛いでいた。
ローズは自分の事であるのに、大雑把な性格な為、あっけらかんとしていて緊張感は持ってはいない。
「ローズ、いいか?駆け落ちは真似事なんだからな?既成事実なんてするなよ?」
「既成事実って何よ、ジェスター………結婚前に事済ますなって言うの?」
「スヴェンがお前を好きだと言ったか?それともお前は告白したのか?」
「ゔっ…………そ、それは………」
両片想いの関係以上には進んではいないのだから、リアンはそこ迄は留まっておけ、と言いたいのだ。
ルティアはリアンにローズがスヴェンに片想いをしている事はそれとなく伝えてはいるが、スヴェンの想いは話してはいない。
「一旦、駆け落ちをさせるのは、お前の婚姻話を破断する為なんだからな」
「わ、分かってるよ」
夜中、ローズはライナスを中心とした護衛で離宮から出て、スヴェンの待つフェリエ侯爵領へ向かうのだ。
スヴェンは先に、領地の仕事をするという名目で、この日の朝に出発している。
マスヴェル国、コートヴァル国の貴族達はスヴェンに注視していたのも確認済みで、スヴェンを追わせていたマスヴェル国の騎士も目撃している。
その騎士はフェリエ侯爵領に到着する迄に、経由する他の領地で撒く予定だ。
不慣れな土地で尾行等、目立ってしまうし、もしその騎士が撒けなくとも、リアンとベルイマンは二重三重と罠を仕掛けていた。
経由する領地には、スヴェンと恋仲になる令嬢も用意している。
その令嬢に会いに行き、フェリエ侯爵領に連れて行く事も決まっているのだ。
実際は、その令嬢はフェリエ侯爵家血筋の親族の令嬢なのだが、それをマスヴェル国やコートヴァル国の貴族達が調べる程、時間等与える気も無い。
そして、ローズはライナスの用意した馬車で直接フェリエ侯爵領に向かう手筈だった。
「罠は幾つも張ってある………明日朝、ローズ行方不明という、警護の不手際で追求されない為にも、ローズの替え玉も用意出来たしな」
「問題は其方にどの辺りで気付くか、ですね」
「国迄素直に帰れば良いんだがな…………数日掛かる道程だから、初日にはバレるだろうが、引き返されてくるのか、ローズの護衛達に罪を追求し、その場で乱闘になるか…………そのまま国に帰る、という事は無さそうだ」
「それに、コートヴァルの貴族達がどう動くか、も」
「合わせた様に、明日朝に出立するからな」
マスヴェル国、コートヴァル国の貴族達は同じ日に帰国する、と聞いている。
シャリーア国の都を出て次の領地迄は道程は一緒。
それは、シャリーア国の北西に位置する隣接する国だから方向は途中迄一緒なのは致し方無かった。
新たな広大な地になったマイヤー子爵領に再び両国は通るのだが、検問所は別の場所から入るだろう。
勿論、マイヤー子爵と長男も領地に戻らせ、何方の検問所の警備も怠らせない様に指示を出している。
「通過予定の領主達には、特に注意はさせてはいますが、他国でおかしな行動をするとは思いたくないものですね」
「国境を出てしまえば、俺達は何も出来ない……密偵はローズの護衛に紛れ込ませてはいるが、不審な動きがいつ出されるか………ローズが言っていた事が本当に実行されるのか如何か……」
「……………駆け落ちしなかったら、私は多分首都に帰れないよ………こうなる事を見越して、父上と母上、兄上にはもう別れを言っておいたの………」
ローズは、クレイオの誕生日祝いの夜会の時、帰国出来ないだろう、と示唆していた、と話している。
マスヴェル国に帰国途中に、コートヴァル国に引き渡す、と予感をしていたのだ。
叔父の性格を知るローズならば、そう考える事は察知出来るのだ。
「だが、ローズ」
「何?ジェスター」
「お前の両親は駆け落ちの事をお前から聞かされてはいないんだろ?ただ、逃げると言っているんじゃないか?」
「……………うん……でも、母上には私がシャリーアで好きな人が出来た、と知ってるよ………それが、スヴェンだとは話してはいないけど………」
「……………まぁ、成功したらそれから説明すればいいか」
「そこからまた、問題は山積みでしょうけどね」
「あっちの国の問題はあっちで解決して貰うさ………父上が両国に連絡入れさせてるだろうしな」
「…………そういえば、夜会からお父様の姿見てませんが、私」
「十中八九、フェリエ侯爵に行かせてるんだろうね」
フェリエ侯爵が橋渡し役に名乗り出たのかはルティアは知らないが、危険な事の様にしかルティアは思えない。
「え!き、危険なんじゃ………お父様がお兄様の父だと知られてませんか?」
「偽名使うんだよ………流石に本名で密偵はしないだろう」
「それでも…………」
「娘に不安を持たせたくなかったんだろうなぁ、フェリエ侯爵は」
「浮気性でカムフラージュしていた方が、フェリエ侯爵自身気持ちが楽だったでしょうね」
浮気性と誤解していた方が、ルティアは心配する事は無かった。
外交官の仕事を隠れ蓑にして、危ない事をしている父へ、ルティアは心配そうな顔が隠せない。
「ティア…………今迄、ちゃんと帰ってきたろ?」
「……………はい……」
「大丈夫さ、フェリエ侯爵は1人で行った訳じゃないんだから」
「……………はい……」
リアンも内心心配ではある。
以前もベルゼウス伯爵の偵察に密偵を行かせ、帰らぬ人になった部下達も居る。
安全ではない仕事だ。
だが、ルティアの前でその顔は決して見せてはいけなかった。
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