皇太子と結婚したくないので、他を探して下さい【番外編】

Lynx🐈‍⬛

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 マスヴェル国とコートヴァル国の使徒団である貴族達はそれぞれに出立し、ローズの護衛騎士の1人にローズに扮して貰っていて、身の危険を察した時、護衛騎士達は構わずに逃げて首都に戻って来る様に、とローズも指示を出していた。
 首都から隣の領地到着迄1日。それ迄逆方向になるフェリエ侯爵領地には到着はしないので、どこ迄避難出来るかが鍵となる。
 フェリエ侯爵領地にルティアの母、カリーナも先に行って、ローズを迎え入れる準備もしていて、領地に入ればローズも一息着けるだろう。

「気付きもせず、出立してくれましたね」
「ティアとローズの仲の良さは奴等も知っているから、別れ際の挨拶もと芝居打ったから信じたんだろうな………姿形も似せた徹底振りだったし」

 ローズは化粧は濃くはないので、顔を見たら違いは分かるだろうに、侍女達の化粧の腕により、遠目からでは本人の様に見せれる様にして貰っている。服もローズの物で、髪型も髪色もローズの髪色に染めて貰った程だ。

「ライナス卿は、コートヴァル国側の国境待機でしたよね」
「あぁ、念の為に行かせてるよ………バレずにを連れていたら、奪取するからね………到着予定日にコートヴァル国の貴族達が来なかったら、フェリエ侯爵領へと向かう。ローズの警護責任者にしているしね」
「頼もしいですね」

 要所要所に、ライナスの信頼する騎士達は二国の貴族達を見張っているので、動向は直ぐにリアンとライナスに入る様にしていた。
 ローズが行方不明だと気付いてからの動きがまだ分からない以上、見守るしか出来ないのがもどかしい。

「あとはフェリエ侯爵からの朗報を待とうか」
「……………はい……」
「ティア、大丈夫………無事に帰ってくるさ」
「殿下…………」

 ルティアは心配で堪らない。
 浮気をする為に、と邸を留守にしている間、シャリーア国の為に働いていた事実を知って安心したのに、それが生命の危険がある中を渡り歩く父を、誇りに思う反面、こんなにも不安になるとは思っていなかった。
 フェリエ侯爵が好きでしている仕事だとは言ってはいたが、大怪我もせず今迄無事で居た事も凄いと思うが、もう辞めて欲しいと思えてしまう。
 カリーナもその事実を知った時、夫婦で話合ったらしく、ルティアの様に不安と心配で泣き縋って、フェリエ侯爵に辞めて欲しいと頼んでいた、とスヴェンから話をされている。
 当のフェリエ侯爵は、家族が居るから戻って来れる、と残しては旅立ってしまうので、辞める気は無いのだろう。それだけシャリーア国で問題があれば出掛けてしまうのだから、そうならない国を作って貰えれば良い、とも残したそうだ。

「さ…………俺達は此処でやれる事を懸命にやろう」
「……………はい……」

 そうリアンがルティアに話をしても、ルティアにはやれる事は少ないのだ。

 ---もっと、勉強して頼れる存在にならなきゃ…………皇妃に何れなるんだから………

 一団を見送り、ルティアはリアンと城に入ると、直ぐに皇妃へと面談を求めた。

「如何しました、ルティア」
「お忙しい中、お時間頂いて申し訳ありません…………私に皇妃陛下の公務の全てを教えて下さい。皇太子妃の勉強も頑張ります。今迄以上に公務もご同行させて頂いて、早く覚えて皇妃陛下に近付きたいんです」
「……………わたくしを立派な人間だとお思い?」
「はい!立派な方だと………」
「違うわ…………わたくしも人間………感情で左右され失敗も多い未熟者です…………補える者達、支えたいと思う方が居るから、強くあろうと思うのです。それは、ルティア…………貴女も居るから、わたくしを強くさせるの。見本として貴女がわたくしを慕ってくれるから」
「っ……………お、お義母様………」
「わたくしは貴女にとって意地悪な姑だし、怖い存在なのに、必死でジェスターの妃であろうと頑張ってくれているのを評価しているの。焦る必要もありません…………今、フェリエ侯爵の事を心配しているのでしょうけど、彼は心配要りませんよ。わたくしと犬猿の仲ですけれどね」

 以前も思ったが、皇妃とフェリエ侯爵の会話には棘がいつもある。
 気にはなった事だが、聞けば教えてくれそうな雰囲気だった。

「お義母様は何故、父と犬猿の仲だと思われるのですか?」
「……………フェリエ侯爵夫人には内緒にしてくれるなら話しても構わないわ」
「母には内緒なのですね…………はい……分かりました」
「……………わたくしがまだマスヴェル国に居た頃、家督を継いでいなかったフェリエ侯爵がマスヴェル国にやって来たのです。まだわたくしはフェリエ侯爵が外交で来たのではなく、マスヴェル国の貴族だと思ったの…………見目麗しく利発な青年だった彼に心奪われた令嬢も多かったのです…………それが………まんまと騙されました」
「騙され………た……?」
「彼は、まだ伴侶も居なかった、シャリーア国の皇太子………今の陛下ですわ………陛下のお相手探しに、マスヴェル国の令嬢達に近付いたのです」
「……………あぁ……」

 何となく察したルティア。
 令嬢達の心を奪っておいて、本人はサラッと別の男を紹介し、誤解をさせてきた、という事だろう。

「フェリエ侯爵は既に既婚者だったと知ったのは、もっと先でしたが、わたくしもフェリエ侯爵に言葉巧みに誘導され、陛下に会う事になったのです…………見初められた為、勿論陛下のお人柄にも惹かれ始めた時、フェリエ侯爵は今の夫人の傍らで幸せそうにしていました。結婚話も進んでしまい、嫌とは言えず………フェリエ侯爵へ思いはもう有りませんが、あの時は悔しくて悔しくて………」

 ---それはお母様には絶対に言えないわ……だから、会う度に思い出すから棘があったのね……

 それでも、皇王皇妃夫妻は仲睦まじいし、良い関係であるので、本当に未練は無い様に思う。
 しかし、皇妃の性格はプライドが高いので、許す気が無いのだろう。

「ですから、ジェスターがフェリエ侯爵家の令嬢と結婚したい、と願った時、陛下の後押ししたのは、フェリエ侯爵の悔しそうな顔を見たかったからなの」
「え…………」
「勿論、貴女を認めているから承諾もしましたけどね」

 仕返し含みの結婚承諾だったとは思わなかったので、この話はリアンにも言えそうに無いな、と思ったのは言うまでもない。
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