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しおりを挟むマスヴェル国。時は少し数日遡る。
フェリエ侯爵はマスヴェル国で見知られているので、偽名を使い変装してマスヴェル国王と対面していた。
「偽名迄使い、此方に来られるとは………其方も流石だな」
「当然です………陛下の傍に悪者が居られるのに、何故本性を現しましょうか」
「……………うむ……其方の話は本当なのだ、と確信したばかり………支援を頂いて復興を目指していたのに我が弟にしてヤラレるとはな」
「証拠は揃えてございます。後は使徒団の帰国を待ち断罪されても良いかと思います」
フェリエ侯爵が仲間と集めた、支援金横領の証拠をマスヴェル国王は確認し頭を抱え、横に座る王太子と共に戦わなければならなかった。
「あの………妹は………ローズは大丈夫なのでしょうか………」
「ローズ王女は使徒団達の中には居られませんよ」
「居ない?…………シャリーア国が保護している、と」
「はい…………移動中、コートヴァル国に引き渡されてはなりませんので………コートヴァル国にも、私の仲間が動いており、この事を国王に伝えている頃でしょう」
「だ、だがコートヴァル国王は、ローズをご自身の弟君に嫁いで来るのには反対していなかったのだが…………」
「それは…………弟君への対応を困っていた事も関係するのではないでしょうか…………尽く、妻だった女性への暴行行為を隠して来た事を明るみに出したのは何より国王本人…………あちらも断罪する機会を得ようと態とマスヴェル国に漏らしたとも言える………何しろ此方の宰相にとって、ローズ王女は邪魔な存在です。横領していた事を知られた張本人ですし、戦し合っていた国との和平交渉の材料にしつつ、殺してくれそうな相手に嫁いで貰えば、自分は手を汚す必要も、罪を擦り付けられる事もありませんからね」
少し視点を変え、当人の立場から見て思考を巡らせれば自ずと出て来る結論なのだ。
戦をしたくない国の当事者同士が、再び戦の火種になりそうな根源を、放置したいとは思えない。
横領し、私腹を肥やしたマスヴェル国宰相と、弑逆性の性格で妻殺しのコートヴァル国国王の王弟。結束して良い関係だとは思えない。
戦後、支援した金や物資からの復興を確認する為に訪れ、まだ必要か如何かをフェリエ侯爵は回っていた時、復興が進まないマスヴェル国を見て調べれば、叩けば埃が出出て来る闇に、先は暗いと察するのは早かった。
二国間でやり合うだけで済まなさそうな、シャリーア国も巻き込まれ最悪の事態になる可能性だけは避けねばならないのだ。
しかも、一つはシャリーア国皇妃の故郷でもあり、皇族達の親族でもあるマスヴェル国王家族も無事には済まない。国を守って貰わないと困るのだ。
「此方の事は任してくれ…………ローズの事は任しても良いのだな?」
「御意…………我が息子が、保護しております。無事、何事も終われば、ローズ王女は息子と私が責任持って連れて帰って参ります」
「其方の息子…………というと、スヴェン卿だな………ローズが慕っていると聞いた………」
「それは、貴方のご子息が妹を娶ってくれる、という事ですか」
「……………まぁ………それはまだ………ですが、息子も満更でも無い故………」
「父上…………あの事を伝えておいた方が良いのでは………」
「そ、それは時期尚早だ………全て終わってからの方が良い………それに、あの事はスヴェン卿がそれでも良い、と言わねば嫁がせられん」
あの事というのは、ローズの過去の事件しかない。
フェリエ侯爵に伝えて、それで反対する可能性もある。
「ローズ王女の誘拐事件の事を話されておいでなら、息子も知っておりますよ………誘拐された、という事だけで、ローズ王女の受けた傷迄は私も深く調べてはおりませんが、大方の予想はしております…………私が言うのは簡単で、決めるのは王女と息子ですし」
「…………知っておったか………」
「…………頑なに、同じく誘拐された皇太子殿下が話してはくれませんでしたし、皇妃も口を閉ざしましたのでね………ローズ王女の男への恐怖心を見れば想像はします」
「…………スヴェン卿が、娘を癒やしてくれるなら………嬉しい事は無い…………」
「…………また吉報がありましたらお知らせ致しますし、何か進展がありましたらご連絡を………では、私はこれにて失礼致します」
それからマスヴェル国では、フェリエ侯爵が渡した証拠を元に、使徒団帰国を待たず、自身の弟であるマスヴェル国の宰相に突き付けた。
宰相側に付いていた貴族も多く、断罪するには長い年月が掛かると思われる。
しかし、その罪を更に追い込むかの様に、コートヴァル国の王弟処刑の朗報がマスヴェル国に舞い込むと、宰相とその王弟との密約された書面も新たに表沙汰になり、宰相側に付いていた貴族達は反比を翻すようになる。
その歳月は数年にも要し、マスヴェル国とコートヴァル国の国境の街や村は復興とは程遠い程荒れ地と化したままで、漸く手を付けられる様になるのは随分と先の事だった。
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