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 京が学校に着くと、教室にざわめきが走る。

「マジあの子可愛くね?」
「俺が先に目付けたんだよ!」
「朝比奈さん、おはよ~。」
「………あ、おはよう。名前もう覚えてくれたんだ。」
「可愛い子は即覚えるよ~。」

 教室の机に荷物を起き、座る京。
 入学式の後、自己紹介はしたものの、名前は全て覚えられてない京は、挨拶しに来た男子に、もう一度名前を聞いた。

「えっと~、ごめんなさい、まだ名前覚えきれてなくて。」
「俺、轟 修一郎!修君、て呼んで!」
「俺は田村亘!呼び捨てで亘でいいから!」
「……………う、うん……。」
「可愛い子は得よね~、チヤホヤされて。」
「ホントホント。」

 女子からのやっかみは、京も今迄慣れてはいるが、流石に同じ中学の生徒だった子は誰一人も居なかった。

「ね、ねぇ、私市外から通ってるから、この辺の事何も知らないんだけど、市内の子達はどの辺に遊びに行くの?」

 京は男子には目もくれず、やっかみを言った女子達に話掛けた。

「市外なの?朝比奈さん。」
「うん、あんまりこっちに遊びに出てくる事なくって………田舎なんだよね、私んち。」

 男子にチヤホヤされたら、女子の目は冷ややかなのは、小中時代によく分かっていた京。
 京は、男子達からは高嶺の華でなければいけなかった。
 那由多の為に。

「朝比奈さん、何処?」
「S市なんだよ~、電車乗り継いで1時間半………辛いわぁ~。」
「うわっ、朝早く出なきゃじゃん。」
「そうそう、彼氏もこっちの高校通ってるから、私も来れるんだけどね~。」

 彼氏とは、那由多の事だ。

「え?朝比奈さん、彼氏持ち?」
「いいなぁ、彼氏。いつから付き合ってんの?」
「高校受験する少し前………かな~。」
「ねぇねぇ、スマホにピク無いの?」
「見たい~!!朝比奈さん綺麗だから、どんな人が彼氏なのか気になる!!」
「男子、ざまぁ!」

 キャハハハハ……。

「ピク?…………あ、入学式の後自撮りしたのがある。」

 京は、スマホの中にある那由多の写真を見せた。

「な、何このハイスペ男………。」
「めちゃくちゃかっこいい!!いつこんな人と知り合ったの?」
「…………同じ中学だったんだ。今A高の3年生。」
「マジ!?ねぇねぇ、合コンセッティングしてよ!」
「合コンしたい!A高なんて、ウチより偏差値高いじゃん!私落ちたもん!」
「大半がそうだよ……。」
(良かった、彼女達にアプローチして。)

 ♫♫

「あ、朝比奈さんメール?」
「うん、ごめん返してもらっていい?」

 スマホを返してもらうと、那由多からのチャット。

「始業式終わったら、連絡入れて。一緒に飯食って帰ろう。」

 京はウキウキするのを隠せない。

「彼氏?」
「うん、帰り待ち合わせてご飯食べよ、て。」
「い~なぁ~!」
「リア充め!」
「朝比奈さん、下の名前、て何?」
けいだよ。」
「よし、京!仲良くしよ!」
「宜しくね、京!」

 始業式が終わり、慌てて那由多に連絡を入れる京。

「もしもし。」
『終わったか?京。』
「うん。今。」
『M高の近くの駅の改札に居るからそこで待ち合わせな。』
「分かった、直ぐ行くね。」
「な~に~?何処待ち合わせ?」

 朝から親しくなった女生徒から声が掛かる。
 
「そんなに見たいの?びっくりされちゃうよ。」
「直ぐに2人っきりにしてあげるから。」
「さ、行こう!」

 無理矢理引っ張られながら、待ち合わせ場所に向ったのだった。
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