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お互い見合いをしたくない見合い
しおりを挟む「改めまして、速水物産常務をしております律也と妻の羽美………そして、羽美の兄で割烹料亭おさないで料理人をしております、小山内 航です」
「…………」
「ほら、お兄ちゃん!挨拶!」
「…………どうも、小山内 航です……」
羽美に頭を捕まれ、下げさせられた航に、間野夫婦は絶句する。
お見合いをすると言うからには、嫌だと思っていても表面には出さないのが礼儀ではないだろうか、と思われるのだが、航は明らかに騙された感があり、嫌そうだった。
「え………っと……それから其方の方は……」
「あ、俺ですか?俺は白河酒造バイヤー顧問の白河 裕司と言います……航とは長年親友でコイツを連れて来ました………逃げない様に見張ってます」
「同じく、当ホテル支配人、村雨 彬良と申します……航の親友でもあります」
「は、はぁ…………あ、私は間野フーズの社長をしております、間野 太輔……妻と、長女亜里沙、長男将太、次女の万里紗です………亜里沙、ご挨拶を」
「………お見合いの意味ある?……だって、その気じゃないじゃない、この人」
亜里沙は立ち上がり、航を指刺した。
「亜里沙!」
「同意見だな、俺も見合いする気無い!久しぶりに妹や甥っ子姪っ子交えて飯食うか、と誘われて此処に来たら、馬鹿共に捕まり連れて来られた……見合いは勿論、結婚なんてまだ先だな」
「お兄ちゃん!」
「航、お前………羽美が結婚する迄は結婚しない、と言ってなかったか?」
「…………っ!……律也……何、蒸し返してやがる」
「あぁ、言ってたなそれ……中学時代から言ってたぞ」
「マジか………高校でも言ってたが更に前からか……」
「裕司…………彬良迄……」
「お兄ちゃん、同棲してた彼女と別れて、彼女欲しいって言ってたよね」
「ぐっ……」
「「なら、いいじゃねぇか航」」
裕司と彬良の息の合った合いの手が入り、律也も更に続けた。
「航………以前から割烹料理の良さを広めたい、て言ってたよな?如何だ?付き合う付き合わない別にして、加工食品会社である間野フーズと懇意にしてもいいんじゃないか?」
「なっ!俺の料理を加工食品にしろって言うのか!親父の腕も俺の腕も安くねぇ!」
「分かってるさ、そんな事は………でも間野フーズを信頼してる速水物産の俺からすればいい案でもあると思うがね」
「申し訳ありません、兄の暴言をお許し頂けますでしょうか」
「い、いや………我社は庶民的な食品を扱ってますから、割烹料理とはまた次元が違いますので」
「…………あ、あの………」
緊張感がまだ漂う室内で、場の雰囲気を変えたかったのか、はたまた空気を読んで無いのか、万里紗が口を開いた。
「お見合い相手………私でもいいですか?」
「「「は?」」」
間野夫婦と将太は、万里紗の言葉に首を傾げる。
「いいじゃない、万里紗……私は見合いしたくないんだし、お父さんはこの見合い断り辛いから、結婚させる気満々だし、アンタがこの人と結婚しなさいよ」
亜里沙は大歓迎とも言える大喜びだ。
「…………此方からすれば、航が身を固めればそれでいいんですけどね……」
「あぁ?………律也……てめぇ殴られてぇのか!」
「少なくとも、航の拳を避けるぐらいの運動神経はあるつもりだ」
「上等だ!表出………ゔっ!」
「どうどう………」
彬良に後からタックルされた航。
「彬良!俺は馬じゃねぇ!」
「落ち着けって………律也も羽美もお前が心配だから、見合いの場を作ったんじゃねぇか」
「何言ってやがる!コイツは面白がってやってんに決まってんだろうが!お前も!裕司も!」
「バレた?」
「因みに、紗耶香も茉穂ちゃんも協力するってよ」
「て、てめぇ等………」
「お兄ちゃん!」
「っ!」
なかなか落ち着けない航に羽美から激が飛ぶと、航は羽美を恐恐と見つめる。
「落ち着いてくれる?………いい?落ち着いて……でなきゃ、私お兄ちゃんの作った料理もう食べないからね」
「う、羽美!それは悲しいぞ!お前は俺が作った料理好きだろ!」
「うん、だから落ち着いて」
「……………はい……」
「「プッ」」
裕司や彬良の失笑が飛び、律也は些か複雑な顔をしていた。
「羽美………航の懐柔の仕方がソレだから、航は結婚しようとしないんじゃないか?」
「お兄ちゃん、早く結婚相手見つけてくれる?翔也と美琴の遊び相手になる従兄弟見たいなぁ………」
「…………わ、分かった……」
「すいません、本当にわからず屋な兄で………私が結婚前に、兄に本当に迷惑掛けっぱなしだったので、彼女が居ても婚期が伸びてばかりだったから、いつまで結婚してくれず……」
航をコントロール出来る女ではないと、航の結婚相手は難しいだろう、と律也や裕司、彬良は思ってはいるが、この場でシスコン振りを見せ付けてしまった様な気がしてならない。
―――シスコンなの?この人……冗談じゃないわ……万里紗に押し付けよ
「万里紗に任せて私は帰るわ」
「亜里沙!待ちなさい!」
「いいじゃない、万里紗はその気みたいだし」
「うん、航さんかっこいいもん……シスコンぽいけど顔いいからお釣り来る」
「万里紗……貴女も失礼な事言わないの!」
「でしょ?なら私居なくていいじゃないの」
「…………あぁ、俺……妹より年下の女は却下だから」
「…………なっ!」
「君、万里紗ちゃん若いよね?妹、今28なんだけど、妹より年下は俺眼中に入れない主義だから」
歳も気にする航だとは、誰も思っては居なかった様で、速水側の面々も、度肝を抜かれてしまったのだった。
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