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【航side】ナイトプール
しおりを挟む「き、緊張する!」
一方の男性更衣室。
水着に着替えて、1人航はベンチに座り頭を抱えていた。
「まだ言ってやがる」
「俺達が協力しねぇと、いつまでもダラダラ付き合う気だったんじゃねぇか、て心配したわ」
「サプライズに協力してやる俺達に感謝してもらいたいね、航」
裕司と彬良、律也が順に、航に呆れていた。
「航さんが、意外とビビリで笑える」
「優馬も言うな!」
航は、この日亜里沙にプロポーズをするというサプライズをしたいが為、彬良に話たのだ。
レストランで食事し、部屋を取るつもりだった航だが、それをあれやこれや、と彬良経由でプロポーズをするなら、公開プロポーズしろ、と律也と裕司に言われ、彬良もホテルのプールを貸し切りにし、妻達も居る前で、恥ずかしい事をさせようとしていた。
航は嫌がったが、律也と彬良が羽美と茉穂にそれを伝えた為、羽美と茉穂の圧が掛かり渋々、ナイトプールの場でプロポーズをする、という事になったのだ。
「俺は……ひっそりとしたかったのに……」
「誰かにバラすのがいけない」
「「そうだ」」
「筒抜けなんだから」
「「そうだぞ、航」」
「裕司も彬良も律也の言葉にシンクロすんな!」
「はははははははははっ!何か……只でさえ、兄さんと航さん、彬良さんで面白い関係だったのに、羽美さんの旦那さん加わって拍車掛かったね」
「いつから俺達はこんな関係になったんだ!」
「「「さぁ?」」」
いつからなんて分かっている。
羽美が律也と出会ってから繋がった縁でしかない。
航は知的な律也が嫌いであったのに、今はこんなに仲が良く、裕司とも付き合いが再開され、彬良と裕司の3人でまた賑やかな関係が築けた。
全く違う性格なのに、お互いがリスペクトし合っている。
妻達も妻達で仲も良く、家族ぐるみでの付き合いも続いていた。
恐らくこの関係に終わりはないだろう。
「そろそろ、あっちも着替えて出て来る頃じゃね?」
「そうだな、行くか」
男5人プールサイドに出たが、まだ女達は出て来ない。
「出て来てねぇな」
「せっかく、俺達が選んだ水着を渡したのに、焦らす気か?」
「何?彬良さん、奥さん達の水着チョイスしたの?」
裕司が、女性更衣室の方に目を向け、彬良も舌打ちして、ボヤいていた。
「おうよ……女を着飾るのは男の特権」
「そして脱がすのも男の楽しみ」
彬良と律也は同じ思考の鬼畜さを、優馬に伝授している。
「何が、特権だよ………俺は見せたくないね、亜里沙の水着姿」
「何を言う!俺は茉穂以外にも見たいぞ!」
「彬良に羽美は見せたくないな」
「相変わらずだな、律也の羽美への執着」
「そういう、裕司だって紗耶香ちゃんの水着姿楽しみじゃねぇのかよ」
「紗耶香は俺の独り占め出来るから気にしねぇな」
「何だと!出し惜しみか!」
「出し惜しみの何が悪い!紗耶香には水着の上に長袖羽織るからコッソリ見るんだよ!俺だけが!」
「「「なっ!」」」
律也と彬良、優馬が同時に声を張り上げる。水着を見る権利を同等にしろと言うのだろう。
「兄さん!義姉さんを独占し過ぎじゃない?」
「優馬!お前は身内に性的視点持つんじゃねぇ!」
「煩ぇ!こっちは緊張してんだ!水着如きでぎゃあすか騒ぐな!」
「航、そういうお前は亜里沙ちゃんの水着何色なんだよ?」
「…………白……黒髪が映える様に……パレオ巻いて出て来る筈………エロい背中だけ見られりゃいい」
「「「「白………いい……」」」」
「想像すんな!」
言わなければ良いものの、航は言ってしまった。
「亜里沙ちゃん、背中がエロいのか?航!」
「茉穂ちゃんの胸もエロいんじゃないのか彬良」
「茉穂の胸はいいぞ~、授乳中でまたデカく……て、言わせんな!」
「お前らがスケベ過ぎるんだろが!」
航が腹立てて彬良をプールに落とす。
「ぷはっ!緊張してるからって、八つ当たりすんなよな!」
「っ!」
「…………茉穂達呼んで来るから!いいな、航!俺達の前で度胸見せろ!」
「っ!」
「あ!航が逃げた!」
緊張し過ぎて、航が更衣室に逃げていく。裕司が追い掛けて行こうとするが、律也に裕司は腕を捕まれた。
「少し放っとこう………引き摺り出す方法を考えとく」
「………本当、お前そういうあくどい事考えるの得意だね」
「……………ふふふ……もっと褒めていいぞ?」
彬良が茉穂と更衣室の前で話して居るのを見つけ、律也も裕司も近くに行く。
「………確かに、彬良さんの奥さん、エロい身体だな……彬良さんらしいちゃ、らしいや」
1人彼女も居ない優馬は、カウチでのんびり頼んだカクテルを飲んでいた。
それぞれのパートナー、裕司は紗耶香を、律也は羽美と話し、羽美と一緒に出て来た亜里沙も含めて話しをしている。
「…………へぇ~、羽美さんも茉穂さん程じゃないけど、良い体型してるなぁ……亜里沙さんはまた白い水着が似合うな………」
「優馬」
「ん?…………うわっ!何航さん隠れてんの!」
「…………プロポーズする迄緊張でバレそうでよ……」
「自信無いんですか?航さん」
「て、てめぇ等の前で言うのが嫌なんだよ!」
「亜里沙さん以外知ってるじゃん、今日プロポーズするの………しなかったら顰蹙もんですよ」
「っ!分かってるよ!一生、揶揄われそうだ、てのもよ」
「勝手に1人で緊張してて下さいよ………俺、羽美さんに会うの久々だから挨拶してこっと」
「あ!隠れ蓑で居てくれよ!優馬!」
「やだ」
優馬にも置いて行かれ、航がプロポーズするタイミングを模索していると、亜里沙が航を見つけた。
「航、あんな離れた場所で何してるんだろ」
「あ、本当だ」
「羽美、航が大事な物を隠そうとするなら何処だと思う?こういう場所で」
「…………あぁ……それは……」
律也が羽美に、亜里沙が航の方を見ている隙に小声で聞き出すと、羽美は律也に内緒で耳打ちする。
「………ちょっと、亜里沙さんと航を足止め頼めるか?」
「はい、いいですよ」
律也はスタッフに声を掛けに行くと、スタッフはニコニコと心良く頷く。一見、ドリンクでも頼みに行ったと、思うだろう行為。
羽美は羽美で、航を亜里沙の前に引っ張って連れ出した。優馬も羽美に挨拶もしに来ていたので、4人になった。
「優馬君の話も裕司さんに聞いてたけど、会えなかったね」
「本当ですよ、店にも何度か行ったのに、航さんしか居なくて………結婚した事も兄さんに再会した頃に聞いたかな」
「裕司さんに似てきたね」
「そうかなぁ……兄さんのが男前でしょ」
「相変わらず、ブラコンだなお前」
「航さんに言われたくない、シスコン」
「俺は妹離れ出来てるよ、なぁ?羽美」
「どう思う?亜里沙ちゃん」
「なってないなぁ」
「っ!………そこはなってる、て言ってくれよ!」
「プッ………」
普通に話せていられる様な雰囲気になっていくと、スタッフがプールサイドに花束を置いた。
「間野 亜里沙様に、プレゼントがございますが」
「え?…………私?……はい………何だろ……」
亜里沙がプールサイドの花束に足が向き、歩いて行った。
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