鬼畜皇太子は素直になれない【完結】

Lynx🐈‍⬛

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宝珠の力とは

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 カルーソン子爵家は、皇子2人を拐かした罪により廃位となった。子爵は事業に失敗し、資金繰りに困り果て、縋る思いで娘を何処かの公爵以上の令息との既成事実を目論んだ。
 それは、モルディア皇国の権力と収入の差が理由だった。
 モルディア皇国の祖は神だった。人として地に降りた、モルディア皇国の皇帝の祖は、神人族となり神の力を得て長い年月がある。その年月があった今日でも、神力が宿り、大陸随一の大国となった。
 その神力は、皇族の血筋にしか宿らず、持たない者は神人族ではない、別種族だった。だが、裕福なモルディア皇国へ、異種族が集まり、異文化や異種族が平和に暮らしていた。
 しかし、100年以上前、異種族の頂点に立つモルディア皇国は、領土を広げる為に、多種族の国を迫害し続けた。それに神の怒りを買い、神力を封印されてしまう。その封印を解く為に皇族は立ち上がり、改心する事を決め、長く迫害をしてきたツェツェリア族が治めるジェルバ国を助け、長年の罪を償ったモルディア皇国にジェルバ国は許した事で、モルディア皇国の封印が解けた。
 モルディア皇国当時の皇太子ルカスがジェルバ国王女マシュリーと恋に落ち結ばれて15年。モルディア皇国皇族の神力と、ツェツェリア族の神力である宝石を作る力で、再びモルディア皇国が安寧の地になり今に至る。
 だが、神力には問題があった。余りにも強い神力は、時には害になる。使い方を誤ると、人を傷付け、陥れる。そんな諸刃の剣の神力を制御する方法を、ルカスが見つけた。それは妃であるツェツェリア族の神力、宝石を作り出す力。その宝石に溜まる神力を制御する方法見い出した事で、使い方を誤る事が無いようにする事に成功し、神力を持たない者にも、微弱ながら使えるようにしたのを、【宝珠】と言い、それを作れる者は、皇族の地を引く、公爵より身分が上の者に限っている。公爵以下の下の爵位の者で神力を使える者はまだ多くなく、爵位が低い者程、作る事も使えない者の方が多かった。
 それは、カルーソン子爵もその1人で、扱う事も許可が無い者は扱えない代物だった。公共の場で、街の街頭も【宝珠】を使い、夜になれば、夜を明るく照らし、音や映像を録音、録画したりと、モルディア皇国は発展途上国となった。だが、その管理は公爵の地位の者しか出来てはいないのが現状。爵位があっても、この15年の間、公爵以下、伯爵、侯爵、子爵、男爵の貧富の差が出来てしまったのだ。
 それは、民の生活を優先しようとしたあまり、爵位を持っていても扱えない者達には面白くない政策だったのかもしれない。

「日に日に、収入差が出てますね」
「……………神力の扱いが、皆に出来れば良いんだかな………」

 カルーソン子爵の訴えは、ルカスにも理解している。民は神力の恩恵を受けて、扱える公爵は敬うが、伯爵から下は敬う事を忘れた節が出て来ていた。当初は、その恩恵に感謝されつつも、収入の差がでてしまうと、そんな感謝は忘れてしまう。

「とりあえず………マシュリーに謝ってくる」
「…………ルカス様が悪い訳ではないでしょう……元はと言えば、殿下方ですし」
「………いや、俺も調子に乗ったから……」
「…………あぁ、まぁそうですね」

 そう、息子達の鬼畜振りは、父であるルカスのマシュリーへの扱い方から来るものだ。ところ構わず、マシュリーとイチャイチャしたがる皇帝は、子供達にも嫉妬するぐらい、15年経っても変わらない。ルカスは執務室を出て、マシュリーの私室に行くと、マシュリーの目の前で、小さくなっている息子達の姿と、面白そうに見つめる愛娘、イリーサ。

「「ゴメンナサイ、母上………」」
「女性を誑かしたり、拐かしたりしてはいけません、とあれ程言っていたでしょう?」
「で、ですが、今回の事は、あっちから来て………」
「来られていても、付き合わなければいいのです!あしらい方を考えない!思わせ振りな振る舞いは、誤解を招きます!」
「マシュリー………」
「……………あら、陛下………わたくしは、魅力無いそうですわね」
「い、いや、そうではなくてだな……」
「……………そうだわ、ロティ、ザナンザ……」
「「は、はい!!」」
………とは、女性に対して公に言っていい事だと思いませんよ………まだ若い令嬢には恥になるではないの!分かりましたね!」
「「はい!!」」
「…………もう下がって宜しい……」
「「……………失礼します」」

 ロティシュもザナンザも反省の色は見せてはいるが、反省しているのかマシュリーには疑問のまま、ルカスが謝りに来た為、下がらせる。

「…………ルカス様……」
「………はい」
「……わたくしの事をあの子達に何を吹込みましたの?」
「え?いつまでも魅力的な母上で幸せだぞ、とかそれぐらい…………かな?」

 ルカスに背を向けているマシュリーだが、ルカスの視界の中の侍女達は、冷や汗を掻いている。という事は、マシュリーは怒っている証拠だ。

「…………では、あの子達は何故、女性に対して、恥ずかしい言葉を出すのです!等と!!………わ、わたくしは3人産みましたわ………それで仰ったのですか?…………ルカス様が女性を侮辱した言葉をあの子達に教えたんじゃありませんの?」
「い、いや…………それは俺の経験上の話で、マシュリーの事では………充分、最高に気持ち…………ぐっ!!」

 マシュリーは慌ててルカスの口を手で塞ぐ。

「侍女達の前です!!」
「…………じゃあ、言わせなきゃいいのに……とりあえず、ごめん……言い過ぎた………今夜証明するから……な?」
「……………ま、毎日、証明されてますから………だから、傷付きました」
「なんなら、今から……」
「……………」
「執務に戻る………」

 マシュリーに睨まれ、ルカスは執務に戻らされたのだった。
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