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皇帝と皇妃と初対面
しおりを挟む翌日、アリシアと会う為に時間を割いてくれるという皇帝と皇妃が待つ謁見の間に、ウィンストン公爵の案内でアリシアはロバートを連れ王城に入る。
ロバートは必要無かったのだが、アリシアの行く場所は常に付いて行くのだ、と豪語し、強引に付いて来ただけだった。
「其方は、謁見の許可を取れておらん、こちらでお待ちなさい。」
「………はい。」
ロバートを待たせたのは謁見の間より少し離した廊下の端。
その先に謁見の間があるのだが、アードラのロバートの身分もただの軍の隊長の彼はそもそも王城に入れるだけで、あり得ない事なのだ。
他国の身分ある王族に会う機会自体異例の事。
この日は挨拶だけの為、ウィンストン公爵はアリシアから離した。
「申し訳ありません、ウィンストン公爵。彼は兄の乳兄弟というだけで、アードラの王宮内で我が物顔で歩けたものですから。郷に入れば郷に従え、という言葉も知らないのです。先日も皇女宮に入る前、タイタス殿下に詰め寄ってしまって………失礼な事を……。」
「存じておりますよ。なかなか大変でしょう、彼の扱いは。」
ウィンストン公爵の後で歩くアリシアを気遣う言葉が返ってくるとは思わなかったアリシア。
「ご存知でしたの?」
「はい。王宮内の事は、100あれば100、わたくしの耳に入りますから。それを必要であれば、陛下に必ず報告する役目を担っております。」
「………アードラの宰相に聞かせてやりたいぐらいですわ………。」
「叔父上でしたね?アードラの宰相は。何でもアリシア様を側妃にしたがっているとか。」
「絶対になりたくありません。」
「ご意思はお硬いのですね。」
「ウィンストン公爵は、他国の情報も詳しいのですか?」
「聞き及ぶ程度ですよ。アードラ国の国王が急な病に倒れられたと伺い、実弟の宰相殿との仲違いは有名でしたから、毒でも盛られたか、と調べたぐらいで、アリシア様よりは詳しくは知りません。」
「…………お父様がお元気であればいいのだけれど………。」
「何か分かりましたら必ずお伝え致しますよ。部下をアードラに派遣しておりますから。」
「お願い致します!お父様とお母様、お兄様がご無事なら、わたくしは………。」
「アリシア様、謁見の間に着きました。涙をお拭き下さい。陛下や皇妃が心配されます。一国の王女であれば、お心を強く持ち、いつ如何なる時も日頃の仮面を着けて、一時も隙を見せてはなりません。」
「……………分かりましたわ。」
アリシアが涙を溢していた事を、前を向いていたウィンストン公爵が知る由もないのだが、慌てて涙を拭ったアリシア。
(………やだ、いつの間に涙が……。)
「大丈夫ですわ。」
ウィンストン公爵が衛兵に合図を送ると、扉が開かれた。
中央に皇帝、左横には皇妃、そして若い皇子らしき男性。
「ようこそ、レングストンへ。アリシア王女。大変な旅であったでしょう。」
「………初めてお目に掛かります。アードラ国
第一王女、アリシアでございます。レングストン皇帝におかれましては、賢帝と我がアードラにも耳に入る程でございます。この度は、わたくしのような者に手を差し伸べて頂き、感謝しようにも仕切れません。」
「顔を上げなさい、アリシア王女。何かアードラで変わった事があれば、必ず其方に伝えよう。せっかくレングストンに身を寄せるのだ、ただ居るだけでは其方もつまらないであろう?アードラでも教育を受けているだろうが、こちらでも教育を受けてもらおうと思っておる。ここに居る皇太子リュカリオン、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン、皇太子妃ナターシャ、他必要であれば他の講師も付けようと思っている。聞いているだろうが、トリスタン公国のラメイラ公女も、講師を付け勉学に励んでおるから、嫌でなければ一緒に受けるといい。良き友人になると思うのでな。」
アリシアは顔を上げ、皇帝の話を聞いていた。
王女としての勉学も放り出してレングストンに逃げて来たのだ。
勉強が好きな訳ではないが、必要で仕方なくやっていて、義理の弟や妹達に負けたくないから頑張っていた勉強。
もし、アードラに戻ったとしても、差を付けるなら自分が優位でなければならなかった。
身分の低い正妃の母が、身分で馬鹿にされる身を案じ、兄アルフレッドとアリシアへの教育には厳しかったからだった。
「有り難きお言葉です。是非わたくしにも勉学をお願い致します。」
利用出来る物は利用する信念のアリシア。
10歳の幼い王女らしくない、気品と教養やマナーは既に身についている事は、レングストン皇帝や皇妃、リュカリオンには驚く程だった事はアリシアには関係無かった。
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