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理解したくない!………けど……
しおりを挟むどちらを先に説明するか、とトーマスとカイルは見合う。
怒りがMaxのアリシアと、どうしてアリシアがコリンとの結婚を考えないのか、と不思議そうにするコリン。
トーマスは眼鏡を直し、コリンに話し掛けた。
「コリン。」
「何?兄上。」
「コリンはカイルから説明聞け。アリシアは俺から説明する。カイルがアリシアに説明したら冷静でいられないからな。」
「!!………やです!カイルと話したい!!」
「…………アリシア………俺から説明した後、カイルを行かせるから………な?」
トーマスはアリシアをトーマスの執務室の横にある隠し部屋に押し込んだ。
トーマスだけではない。
皇帝や宰相であるウィンストン公爵、リュカリオンの執務室にも隠し部屋が備えられている。
防音効果のありそうな、分厚い壁を抜け、薄暗い部屋に連れて来られたアリシア。
トーマスは、カーテンを開け、光を部屋に入れた。
その隠し部屋にも扉はあるが、出入り出来るか分からない。
アリシアは以前カイルと隠し通路を通った時に、扉だと思っていた物がフェイクで、壁だと思っていたのが扉だった、という物をいくつか見ているのである。
「アリシア、そこの椅子座っていいよ。」
「執務室に隠し部屋あるんですね。」
「あぁ、仮眠室みたいなものさ。私室に戻れない時とかにカイルと共有してる…………それで?アリシアは何でカイルに怒ってたんだ?」
トーマスはアリシアの向かいの椅子に座り、話を始めた。
「………ナターシャお姉様が、近々わたくしをロバートが迎えに来る、て………聞いてなかったから確認しに………そうしたら、カイルは王都から居なくなる、てコリン兄様からまた聞いて……………離れたくない………。」
「それは、仕方ないんじゃないか?………アリシアがレングストンに来た理由は?覚えてるかい?」
「…………叔父様がお父様を殺そうとして、わたくしを側室にしようと目論んだから………。」
「そう、アリシアはアードラに居たら危険だった。でも今は危険じゃなくなったろ?」
「……はい。だから戻れ、と?」
「それもあるけど、アリシアが16歳になる迄、というか、嫁ぐ迄かな、親は娘を傍に置いて置きたいんだよ。嫁いだらなかなか会えなくなるからね。」
「………………お父様にもお会いしたいけど……。」
アリシアは椅子の上に乗せた手でドレスを握り締める。
アリシアの座る椅子の前には、テーブルがある訳でなかった為、トーマスに丸見えだった。
「………アリシアは王女である前に、まだ11歳の少女だ………アードラでは18歳で成人するだろ?それ迄は子供扱いだ………それは何故か分かるかい?」
「…………分かりません。」
「成人と子供の違いは、自分の行動に責任が取れるかどうか、だ。幸い、レングストンは16歳で成人とされる。結婚も出来る歳だ。例え、アードラ人だろうと、結婚相手がレングストン人であれば、16歳で嫁げるんだよ。レングストンでは16歳で大人として認められるからね。」
「16歳迄………あと5年もある……。」
「そう、5年…………それ迄は、アドラード王の元で、親孝行してあげたら?」
「カイルに会えないのが嫌っ!」
今の感情だけで物を言うアリシアは、先を考えていない。
その考えは子供だ。
「カイルもね………我慢するんだって、さ。」
「…………我慢?」
「そう、我慢してるよ、かなりね………好きになった女が、何故か10歳の子供だ。今迄のアイツは、手当り次第寄ってくる女も好みの女も相手にしていたんだ。だけど、今はそれが出来ないんだって。俺は、いつもアイツと居るから、考えてる事は分かるが、随分前から悩んで、アリシアを忘れようとしてたんだよ。でも無理らしくてね……アリシアが16歳迄、傍で見ていなきゃならないのは辛いんだ。もし、アードラの迎えが来なかったとしても、レングストンでアリシアを見るのはね………結婚も出来ない、想いを告げられないでは、気が狂いそうになる……だったら、姿が見えない場所で待ってよう、て事じゃないかな。」
「…………会えないのが辛いもん!」
「そっちも辛いよな………でも、アイツはそれを選ばなかったんだ。それはアリシアが一国の王女だから、て思ってるけどね、俺は。カイルはアリシアを守りたいんだよ。世間の目からね。民衆が反対するような婚姻を、アリシアはしたい?婚姻が出来る歳じゃないのに、我儘通して嫁ごうとしたら、いくらアリシアを可愛がっているアドラード王でも、カイル相手だろうが、許さないと思うよ。アリシアは、アードラでアドラード王やアルフレッド王子に、どれだけカイルが好きで、忘れられない存在なのかを説明して、例え反対されても結婚するんだから、て言いに言った方がいいんじゃないかな、とは思うがね。それをアリシアが16歳になる迄ずっと………。」
「………………お父様やお兄様は、まだコリン兄様にわたくしを嫁がせるつもりなんですか?」
トーマスは、手から力が抜けたアリシアの表情が変わって行くのを見ていた。
「さぁ?どうだろうね?アリシアが我儘言って、レングストンに留まるなら、コリンに嫁がせるんじゃない?だって、アドラード王はアリシアから何も聞いてないからね。コリンは好きじゃない、好きな人はカイルだ、て………勘違いされたままだとあり得るかな。」
「………………ロバートはいつ来るんですか?」
「アードラが落ち着いたら、連絡は来る筈だよ。まだいつかは知らないが。」
「………分かりました……………絶対に………絶対に………わたくし諦めませんから!」
アリシアの目は闘志に満ちていた。
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