72 / 102
強行突破
しおりを挟む翌日の朝。
アリシアは侍女達と共に、自分のドレスを町娘風に作り直した。
裾を短くし、上半身の過度なスパンコールやビーズを解き、軽装で使う様な生地を重ね縫う。
色合いや生地の質感を合わせ、午前中になんとかワンピースを作りあげたアリシア。
「出来た!」
「アリシア様、急にこの様な服を作ってどうされたんですか?」
「この姿でカイルに会ってくるだけよ。」
「カイル様と?」
街に誘う、とは流石に言えず、森に行くとだけ告げて、夕方迄には帰るつもりで侍女達に説明したアリシア。
「駄目です!アリシア様。」
「駄目?何故?」
「アリシア様はコリン殿下に嫁ぐのではないのですか?」
「コリン兄様には嫁がないわ。」
「アリシア様!!」
「お願い、もう直ぐわたくし達はアードラに帰るの。その前に楽しい事がしたい。好きにさせて。」
「……………今日だけですからね?アードラの王女様らしくして下さいませね。」
「分かってるわ。」
アリシアは、着替えて短剣を持ち森に行く。
既にカイルは短剣が刺さっていた木に凭れていて、うたた寝をしていた。
「カイル。」
カイルの傍に座ると、俯いたカイル寝顔を覗く。
(………綺麗な顔……でも、この顔で好きになった訳じゃないのよね。)
「…………うわっ!」
「きゃっ!」
気配で起きたカイルはアリシアに驚き、驚いたカイルにまたアリシアは驚く。
「来たなら起こせよ!」
「呼んだよ!カイルが起きなかったんじゃない!」
「……………あぁ……そうか、悪かったな…………やっぱりお前が持ってったんだな
、短剣。」
「あ、うん………このまま置いとく訳には、と……はい。」
カイルは短剣を受け取り、立って装備する。
「何でそんな格好してんだ?」
「……………お願いがあるの。」
「お願い?」
「街、連れてって!」
「……………は?」
「だから、街!黙ってアードラに帰るから!レングストンに居ても、街歩けなかったんだもん!観光したい!美味しい物、カイルと食べたい!!…………一緒に歩きたい。」
「駄目だ。」
「嫌っ!」
「アリシア!!」
「…………黙ってアードラに素直に帰るから…………文句言わないし、16歳になる迄カイルと会うのも我慢する…………お父様達説得するから!」
感極まり、涙も溢れるアリシア。
「……………説得って?」
「………だって、私コリン兄様の妃候補だもん…………お父様にちゃんと『コリン兄様には嫁がない!』て言って来る!カイルの好みの大人になって、16歳になったらカイルに会いに行くから!頑張る為に今日はカイルと過ごしたい!!」
「……………あぁ………ちょっと待て……。」
カイルは俯いて考え込んでしまった。
(…………コイツ、了承得てんの知らねぇのか……重荷になるしな……仕方ないか……。)
「それで、街に行きたいからその格好か……。」
「うん!今朝作った!」
「そういや、刺繍好きだったな…………だから裁縫も出来たのか。」
「侍女達にも手伝ってもらったけど。」
「…………てか、お前はともかく、俺はこの格好で街に行ける訳ねぇだろ!」
「あ、そっか……急にお願いしたし。」
「…………たく……ちょっとここで待ってろ。」
いつの間にか、行く方向になっていたのに気付くアリシアは、涙も止まり、カイルの動向に注視する。
「え?何処に行くの?」
「着替えてくるんだよ!行きたいんだろ?街に。」
「連れてってくれるの?」
「…………仕方ないだろ。」
「やったぁ!」
「…………ふっ……久々に笑ってる顔見せたな。」
「!!」
優しい目をアリシアに向けたカイルは、森の奥に消えて行ったのだが、直ぐにそのままの格好で戻って来る。
アリシアもまた、カイルの微笑む顔を見るのは久々だった。
「あれ?着替えに行ったんじゃ……。」
「軽装が俺に合うのがなかった………馬車をこの王族居住地側の門に、手配したからそこ迄歩くぞ。」
「どうするの?服。」
「俺ん家で着替える。」
「ウィンストン公爵家?」
「近いんだよ、王宮からウィンストン公爵家。」
まさか、カイルの家に行くとは思わなかったアリシアは急に緊張し始めたのだった。
2
あなたにおすすめの小説
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です
氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。
英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
禁断溺愛
流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。
第3皇子は妃よりも騎士団長の妹の私を溺愛している 【完結】
日下奈緒
恋愛
王家に仕える騎士の妹・リリアーナは、冷徹と噂される第3皇子アシュレイに密かに想いを寄せていた。戦の前夜、命を懸けた一戦を前に、彼のもとを訪ね純潔を捧げる。勝利の凱旋後も、皇子は毎夜彼女を呼び続け、やがてリリアーナは身籠る。正妃に拒まれていた皇子は離縁を決意し、すべてを捨ててリリアーナを正式な妃として迎える——これは、禁じられた愛が真実の絆へと変わる、激甘ロマンス。
完結(R18 詰んだ。2番目の夫を迎えたら、資金0で放り出されました。
にじくす まさしよ
恋愛
R18。合わないと思われた方はバックお願いします
結婚して3年。「子供はまだいいよね」と、夫と仲睦まじく暮らしていた。
ふたり以上の夫を持つこの国で、「愛する夫だけがいい」と、ふたり目以降の夫を持たなかった主人公。そんなある日、夫から外聞が悪いから新たな夫を迎えるよう説得され、父たちの命もあり、渋々二度目の結婚をすることに。
その3ヶ月後、一番目の夫からいきなり離婚を突きつけられ、着の身着のまま家を出された。
これは、愛する夫から裏切られ、幾ばくかの慰謝料もなく持参金も返してもらえなかった無一文ポジティブ主人公の、自由で気ままな物語。
俯瞰視点あり。
仕返しあり。シリアスはありますがヒロインが切り替えが早く前向きなので、あまり落ち込まないかと。ハッピーエンド。
男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました
春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。
名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。
誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。
ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、
あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。
「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」
「……もう限界だ」
私は知らなかった。
宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて――
ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。
メイウッド家の双子の姉妹
柴咲もも
恋愛
シャノンは双子の姉ヴァイオレットと共にこの春社交界にデビューした。美しい姉と違って地味で目立たないシャノンは結婚するつもりなどなかった。それなのに、ある夜、訪れた夜会で見知らぬ男にキスされてしまって…?
※19世紀英国風の世界が舞台のヒストリカル風ロマンス小説(のつもり)です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる