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ラメイラの変化
しおりを挟むアニースのラメイラへの喝から翌日。
ラメイラが公務と勉強を再開した、とラメイラ付侍女のマーニャがアニースとアリシアに知らせに来た。
「アニース様、ありがとうございます。ラメイラ様が前向きになりましたわ。」
「本当か?」
「はい!ラメイラ様は悪阻の状況を見ながら、公務を行う、とおっしゃいました。」
「良かった!」
アリシアも手を胸の前で合わせ喜ぶ。
「この事をナターシャ妃には?」
「はい、こちらに来る前にご報告を。」
「そうか、ナターシャ妃は何て?」
「アニース様の数多い経験がラメイラ様に届いたのだろう、と安心なされてました。」
「私も役立つ事が出来て安堵した、とナターシャ妃に、そしてラメイラに伝えて欲しい。無理は禁物、先ずは自分の身体をご自愛ください、と。」
「畏まりました。」
マーニャも忙しい最中、伝えに来てくれた事も嬉しかったアニース。
「さぁ、アリシア、今日も勉強頑張ろう。」
「はい!アニースお姉様!」
平穏に、ラメイラは出産を迎えると思っていた。
アリシアもカイルが居ない中で、勉強を進め、アニースもタイタスをもっと理解しようと思っていたのだが、数週間後ラメイラのお腹の子が双子だと判明したのである。
「双子?本当に?」
「……………うん………不吉だよぉ………アニース。」
双子と聞き付け、トーマス邸にアリシアも駆け付けた。
「すご~い!ラメイラお姉様!」
ラメイラには毎日の様に、ヴァン子爵が診察に訪れていて、日々のラメイラの精神状態も含めて母子共の健康状態を確認していたらしい。
それが、双子という懸念があったのだとしたら納得もした。
アリシアは双子が見れるというので、興奮気味だったのだが。
「今日帰ってしまったが、父上がトリスタンから来ていたんだ。前に話したと思うけど、弟の産まれた時に母上が亡くなった経緯を教えてもらってな。レックスが産まれた時、私はまだ2歳か3歳ぐらいで、あまり記憶が残ってないのに、母上が亡くなった事が怖くてそれだけが鮮明に記憶に残っていたんだ。」
「それぐらいの歳なら仕方ない。」
「…………うん、父上もそう言ってた。だから前を向こうとしたんだけど…………父上に双子だった、て伝えられなかったな、て思ってさ。ほら、双子なら双子なりの注意点がある、てヴァン子爵も言ってて、経験者は語るじゃないけど、臨月間近迄母上は大事にレックス達をお腹の中で育てたから、何か分かるかな、と………私の身近な妊娠経験者なんて、ナターシャぐらいしか居ないしさ。」
死を考えてしまっているのでは、と思っていたが、どうもそうではない様子のラメイラ。
「双子と分かった時点でも前向きに捉えられるようになったんだな。」
「……………だって、トーマスとまだ死に別れたくないし………。」
少しはにかみながら、ラメイラは可愛らしい顔をする。
それはアニースもアリシアも知らない顔だった。
恐らく、こういう顔はトーマスしか知らない顔なんだろう。
「いい顔するな、ラメイラ。可愛い。」
「!!揶揄うな!アニース!!」
「え?わたくしも今のラメイラお姉様のお顔可愛いと思いましたよ?」
「アリシア!!」
あれだけ悩んでいたラメイラがいつものラメイラに戻りつつあって、アニースだけでなく、アリシアや侍女達もホッするのだった。
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