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ざまあみろ
しおりを挟むその夜、宿屋に部屋を取ったアニース達。
大所帯の為、宿屋を3件に分け宿泊をする事になった。
アニースはタイタスとセシルと同じ宿屋に案内され、ジャミーラとヘルンは別の宿屋。
「何でバラバラなのよ!」
「まとめた方が警備楽じゃない!」
「警備の心配して頂くとは思いませんで……その点は、私の部下がジャミーラ姫達の警備はしますのでご安心を。」
「…………分かったわ……いいでしょう。」
ジャミーラとヘルンが何を言っても、セシルは取り合わない。
アニースとタイタスの宿屋にジャミーラ達を入れる事は出来るのだが、セシルに告げ口した侍女達の言葉通りに動くなら阻止したいのだ。
「ジャミーラ、いいの!?」
「アニース!!アンタ部屋変わって!!」
「………は?私の部屋には一つしかベッドが無いらしいが?」
「アンタは、ヘルンと同じ部屋に入ればいいでしょ!」
宿屋の安価な部屋に泊まりたくないと言ったジャミーラとヘルンの我儘で、高価な宿屋に部屋を取っているのだ。
それをジャミーラは1人部屋に行くと言う。
「ジャミーラの意図は分からないが、ヘルンが私と一緒は嫌がる筈だ。」
「そうよ!ジャミーラ!!抜け駆けしないでくれる!?」
「…………抜け駆け?………ジャミーラ……。」
「何よ………私は気まぐれなのは知ってるわよね?」
部屋を変えろ、と言うジャミーラの気まぐれさは、アニースも知っている。
だが、宿屋の品質迄落としてそう言うとは思えない。
「タイタスもヘルンと交代する、と言うならいいぞ?」
「!!意味ないじゃないの!!」
「…………やっぱり……。」
「!!………な、何がやっぱりな訳!?」
「…………タイタス!!」
タイタスは離れて自分の部下と居た為、アニースは呼ぶ。
すると、タイタスはアニースの方にやって来る。
「如何した?」
「今夜気を付けてくれ、ジャミーラがタイタスの部屋に夜這いに行くらしい。」
「!!………アニース!声を控えたらどうなの!」
いくら大胆な性格のジャミーラで、今は独身でも街中で夜の営みを想像させる言葉は控えたかったらしい。
人並みに醜聞はあったようだ。
「ジャミーラ姫、ご自分を大切にしたらどうですか?」
タイタスに迄言われてしまい、勘違いだと言わんばかりにジャミーラはタイタスに近寄って腕を絡め、胸を押し付ける。
「…………。」
タイタスはジャミーラの胸の感触にデレデレする訳でもなく無表情。
「嫌ですわ、タイタス殿下……私は自分を大切にしてますわ。大切にしているからこそ、お慕いしているタイタス様に、私を知って頂こうと部屋を近くにしたかったのです。」
「放して頂こう、ジャミーラ姫。私はあなたより魅惑的な身体の女を抱いた事も、魅力的な性格の女を口説いた事もある。あなたは私の好きな性格でも好きな身体でも無い。部屋を変えるのは自由にしてもらって構わないし、夜間部屋に来るのは構わないが、命と引き換えになる覚悟があるならどうぞ。私は夜、睡眠を邪魔されると、機嫌が悪くなる。その白い肌に刃が突き刺されてよいのなら……。」
「……………んな!!」
タイタスはジャミーラの腕を解き、セシルに伝える。
「セシル、部屋に見張り付けるつもりではあるんだろ?」
「勿論です、タイタス殿下。アニース様とジャミーラ姫、ヘルン姫の前の部屋にも。」
「そういう事だ、ジャミーラ姫。来て入る前に追い払われるので、無駄な事はお止め下さい。」
セシル達にジャミーラやヘルンの思惑はバレている事にアニースは思わず笑った。
どうやって、今後タイタスを口説き落とすのか、何故正攻法で行かないのかが不思議ではあるのだが、ジャミーラやヘルンはそれしか出来ないのかもしれない。
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