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8 *リアン視点
しおりを挟む「何がそんなに楽しいんですか?」
ベルイマンがその場に居た様で、リアンに聞いてきた。
「ベルイマンは、ルティア嬢の兄と交友あるんだろ?」
「スヴェンですか?えぇ、まぁ………母がフェリエ侯爵夫人と友人で幼馴染ではありますし、少し気弱な性格ですが、妹達を可愛がってる感じはありますね」
「何か妹に関して聞いた事は?」
「上の妹のルティア嬢の事でしたら、フェリエ侯爵によく反発する、とぐらい………本来なら、自分の役目になるだろうけど、自分はフェリエ侯爵家になかなか帰れないから、ルティア嬢は強くなった、と………下の妹は………」
「下の妹の話はいい。その令嬢の事は、彼女からよく話を聞いているしな」
「逆に、ルティア嬢からスヴェンの事を聞いたりしないんですか?」
「兄が居る、というぐらいしか聞いてないな………彼女は貴族令嬢だと隠してたし」
そう、ルティアは平民風に装っていたので、家族の話を出しても、両親は何をしている人なのか、兄の仕事は何なのか、と迄は話をしたがらなかった。
「殿下はルティア嬢が好きなだけで、ルティア嬢の周囲の事をご存知無かったのですね」
「報告では知ってるが、その人となりは付き合い上の事しか知らない………彼女と家族がどう関わってるのか、は特にな」
「それで、いつ皇太子殿下としてルティア嬢に会うんですか?」
「…………それなんだよな……城で会えないから、話も出来ない………かといって街で正体を教えるのも、逃げやしないか、と危惧してもいる」
「逃げる?…………殿下はルティア嬢から好意を持たれてないんですか?リアンとして」
「それはあるさ………キスも出来てるしな」
「順調じゃないですか」
「……………はぁ……」
リアンとして好かれても、皇太子として嫌われてるので、複雑な心境のリアン。
溜息と共にペンを置き、頭を掻いた。
「何ですか、その溜息………幸せ逃げますよ」
「皇太子の立場でリアンに嫉妬するんだよ」
「同一人物なのに?」
「目の前で、婚約者の皇太子を拒否する彼女を見るとな………その顔で、実際皇太子としてフェリエ侯爵令嬢の彼女と会って、毛嫌いされるんじゃないか、と脳裏に浮かぶ時があるんだよ。キスも出来たのは、彼女が平民のリアンが好きだから、だとな」
「正体隠すから………」
「…………そんな事は分かってる」
「隠し通せませんよ、皇太子として会ったら」
しかし、皇太子としてルティアと会うならば、城での面会になり、恐らくルティアは驚きを隠す事なく詰るだろう。
だが、リアンはルティアに話す時は2人きりで隠してきた理由を伝えたかった。
「城で会うと、絶対に誰かが俺達の周囲に居るだろうしなぁ………」
「致し方ない事かと………まぁ、人払いするなりしても密室じゃない限り、2人きりにはなりませんしね」
「…………密室………」
「…………結婚前に自室に連れ込むなんて事は出来ませんよ?」
「チッ………」
一瞬、城の何処かの部屋に、ルティアだけ案内させて、後からリアンが入る、という事も考えたのだが、客人になるルティアを1人にさせておく事は出来ないだろう。
面会はフェリエ侯爵も同行するだろうからだ。
「正体を隠して、面会されては如何ですか?」
「如何やって?」
「…………顔を隠す面等を殿下が掛けるとか、変装するとか」
「…………城の者達に、馬鹿な事をやってる、と思われるだろ!」
「怪我をされた、と装えば良いのでは?………その美しい顔に、切り傷なんて1つ………」
「…………おい……」
ベルイマンは冗談ぽく、腰に装備していた剣の柄を握って、リアンに笑みを見せた。
冗談にしてはタチが悪いので、リアンは後退る。
「冗談ですよ?」
「そんな冗談は真に受けたくない!………ん?面………か……」
「え?本当に切り傷着けるおつもりですか?」
「するか!ただ、面会出来る様なら、数日前から面を着けておけば、周囲も騙せるな………信憑性も高まる………それで暫く彼女と話をして、緊張も取れた時に………」
「面、用意しておきます?」
「…………あぁ……過度な装飾無いのをな」
「仮面舞踏会じゃないんですから、そんな物用意したら、余計に気が触れたか?と思われますよ」
「お前の事だから、そういう物も用意しそうだな…………」
「冗談で済ますなら、ソレを用意しますけど?」
「やめてくれ」
「フッ…………用意しておきますので、殿下はリアンでルティア嬢との距離を縮めておいた方が宜しいかと」
「…………会えるならなぁ………あぁ……会いたい」
毎日会える様に願うばかりで気が逸るが、まだ我慢の時だ。
数日後、ベルイマンが面をリアンに用意されるのを待ち、その間はルティアに会える為に準備をするリアンだった。
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