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しおりを挟む「やっぱりもう遅いから泊まっていけば?ティア」
「帰ります」
「…………ちぇっ……」
夕食時からベルイマンを含め、3人で話した後、クレイオやライナスを呼び、情報共有する為にすっかり遅くなってしまったルティア。
「兄上、また義姉上に変な噂が流れかねませんから」
「そうですよ、殿下。ルティア嬢の事を思えば帰す冪です」
クレイオとベルイマンの宥めで、ルティアはやっと帰れるのだ。
「ティア!良いかい?スヴェン卿に動きがあったら、知らせるんだよ!」
「はい!伝書鳩もお預かりしましたから、必ず」
「フェリエ侯爵家の邸にも護衛は付かせてるから、何かあれば駆け付けるから!」
「殿下………ルティア嬢が危機ではないんですから………危機なのはスヴェン……」
「スヴェン卿は男だろ!騎士だったんだ、自分の身ぐらい守れる」
「「…………いやぁ……如何かな……」」
ルティアもベルイマンもその辺りは疑心暗鬼だ。
「うわっ……息ぴったりだね、義姉上とベルイマン」
「ベルイマン!」
「スヴェンを知る者は、多分そう思います」
「お兄様は優しい人ですし………剣も嫌々持つぐらいだったので……」
「鍛え直させてやろうか……」
リアンが義理の兄になる男が貧弱そうだから、鍛え直さようとボヤいた時、無駄な足掻きになる考えなのをベルイマンは伝える為、ルティアを送り出そうとした。
「ティア、スヴェンに近々会いに行くと伝えておいてくれ」
「はい、ベル兄様」
「なっ!」
「無駄ですよ、フェリエ侯爵家の男達は、武術には不向きな性格です。フェリエ侯爵は争いを好みませんし、スヴェンはもっとその傾向がありました」
「そうなんです、皇太子殿下………お兄様は、私とお父様が言い争うのさえも見て見ぬ振りする臆病な性格なので………最近は、私とお父様の喧嘩に割って入って止めには来てくれる様にはなりましたけど」
「喧嘩するの?ティア………フェリエ侯爵と」
「しますよ?普通でしょう?意見が合わなかったら」
フェリエ侯爵家ではごく当たり前の光景なのだ。
ルティアとフェリエ侯爵との言い争いは、ほぼ毎日繰り返されている。
「殿下方からすれば、あり得ないでしょうねぇ」
「ライナス………お前も両親と喧嘩出来るのか?」
「しますよ、俺だって」
「俺もしますよ?」
「ベルイマン迄………」
「羨ましがる殿下方等放っておいて、もう馬車に乗れ、ティア」
「あ、はい」
「っ!………ベルイマン!エスコートをお前がするな!………どさくさ紛れにティアを愛称呼びするな、と言っただろ!」
「ジェスター殿下がエスコートしないからですが?」
帰宅が遅くなっているのに、帰らせようとしないから、ベルイマンはルティアをエスコートしようとしていた。
「分かったよ!帰すよ!」
「プッ………皇太子殿下、ありがとうございます」
「ティア、またね」
「はい…………っ!」
馬車に乗る為のエスコートをされている最中、リアンがルティアの頬にキスを仕掛けた。
「ごちそうさま」
「も、もぅ!びっくりしたわ!」
「横顔可愛いからさ」
馬車の扉を閉じる時、悪戯っぽく笑うリアンに怒る気を失せたルティア。
真っ赤に染めた頬を隠したルティアに、リアンの後ろで、見て見ぬ振りしてくれた、クレイオやライナス、ベルイマンに感謝する。
それだけ恥ずかしかったからだ。
「出発してくれ」
「はっ」
「また来ます」
「待ってるよ、ティア」
帰宅したらフェリエ侯爵に怒られない様に、リアンから手紙も預かっている。
ドレスの仕立てに掛かる時間では無いからだ。
手紙が無くても、フェリエ侯爵からは行き先は知っているので、怒られる事は無いと思われるが、念の為に持たせてくれた。
王城から馬車で然程遠くない距離のフェリエ侯爵家。
帰宅すると、フェリエ侯爵が開口一番、怒ってきた。
「遅いではないか!何を遊んで来た!」
「別に遊んで来た訳じゃありません。帰宅許可が出なかっただけです」
「本当だな?」
「…………疑うなら、殿下からの手紙を読んで下さい」
「待ちなさい!お前に聞きたい事がある!」
「何ですか?」
「ベルゼウス伯爵令嬢に喧嘩振ったのは本当か!」
「…………は?」
侮辱されたのはルティアの方なのに、また違う噂が父から聞かされる。
「如何なんだ!」
「逆です………知りもしない相手に何故私が喧嘩を振るんです?今日王城で、呼び出されて侮辱されたのは私の方です」
「嘘を吐いておらぬな?」
「苛立ったのは私ですよ………呼び出しておいて、挨拶も無く、下位爵位の令嬢のあの方が、敬語も無く見下したんですから………私は一応、上位爵位の方には敬語を使うように、とお父様から口を酸っぱく聞かされてますから、そんな無礼はしませんし、そう扱われられなくて苛立ちましたが、礼節を弁えなかった事を注意しただけです。幾ら歳上の方でも、上位爵位に対しての礼儀知らずは許せません」
「…………本当だな?」
「本当です!」
「…………そうか………ベルゼウス伯爵令嬢が王城で泣いておったと聞き、その理由がルティアから虐められた、と言っておったのだ」
「泣く?………泣きそうな性格じゃ絶対になさそうなんですけど………」
「…………とりあえず、ルティアが泣かせた、と思い、事実をルティアから聞いてから、と謝罪はしてはいないが……」
一応、娘の方を信用して、事実確認してから、というフェリエ侯爵の対応には、ルティアも大事にされているとは思えたが、ルティアの方が泣きたい、と思える誹謗で、ルティアは大きく溜息を漏らした。
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