聖女は鳥になって過去に2度戻り、夫を入れ替える【完結】

Lynx🐈‍⬛

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「今年はどんな女が居る?バッシュ」
「…………あぁ、初物が10名程居るね。興味深い令嬢が1人」

 令嬢達が集まるサロンを見下ろせる部屋から眺める男に、声を掛けた男。
 ぞろぞろと、3人やって来た。
 先に来ていた、バッシュ・ドム・アッシュ・ヴァルムと、弟ゴードン・ヴェル・メル・ヴァルム兄弟に、コルロフ王朝の第二王子デューク・ゲルバー・アル・コルロフと、第三王子ロイス・イルマ・ケイン・コルロフ、従兄弟のグレゴリー・アーバン・イアン・デュケイン公爵が話掛け、隠し窓から覗く。
 ゴードン以外、この5人が今回花嫁探しをする王子達だ。
 王子であるデュークとロイスの従兄弟にもあたるバッシュとゴードンも、王位継承権を持っている。
 花嫁を迎えなければ王子達は、次期王になる為の足掛かりにもならない。
 王が退位する迄に、子を成し、その子が優秀でなければ、嫡男でなくとも王位に就けるというコルロフ王朝。
 決定権は全て王にあるのだ。
 だからこそ、王子達は選ぶ令嬢を吟味しなければならない。

「興味深い令嬢?誰だ?」

 デュークがバッシュに問うと、バッシュはとある令嬢を指差す。

「第一ヴァイオリンのリーダーに指名された、カチュア・ロマ・シューヤ・スペリオール侯爵令嬢。他の令嬢が下手過ぎて、彼女が公爵令嬢達を押し退けてた所さ」
「カチュアはヴァイオリンだけじゃない、弦楽器全般、玄人の腕前だから」
「ゴードンは知ってる令嬢なのか?」

 ロイスとグレゴリーも、ゴードンに目線を配る。

「ヴァルム家の屋敷とスペリオール家の屋敷が近いからね、彼女の噂はそれなりに入ってるよ」

 バッシュがゴードンの代わりに口を開く。

「…………兄上、カチュアを選ぶつもりなのか?」
「……さぁね?」
「美姫が多くて迷うなぁ……。」
「グレゴリー、お前は女なら誰でもいいじゃないか」
「デューク、ではお前は選べるのか?この中から1人を」
「去年は兄上のライナスも選んで男を産ませたからなぁ………焦るんじゃないの?グレゴリー」

 去年、デュークとロイスの兄、第一王子のライナスも花嫁探しで妻を娶り、息子を産ませ王位継承の資格を持ったばかり。
 その弟であるデュークとロイスは焦りもあるのだろう。
 王になれなければ、王の判断で継承権を持つ王子達の命の危険もあるのだ。
 勿論、その血を継ぐ子供や、伴侶となる妻が妊娠していた場合もだ。

「俺は王位に興味ないからなぁ………阿呆らしいじゃないか、王が次代の王を産ませた子供の優秀さで決める等…………それによって選ばれない男達の反乱を煽ぐ事に為りかねないのに」
「それなら、グレゴリーお前が選ばれればいいだけじゃないか。そしてそんな反乱が起きないようにお前が目を光らせておけばいい」
「王なんて堅苦しいのはゴメンだね、デューク。ライナスに王になってほしくないから、今年俺も花嫁探しに名乗り出ただけ………お前やロイスもそうだろ?」
「…………あぁ……」
「……………絶対嫌だ」
「バッシュ、お前は?」
「俺?…………俺は片想いしている令嬢が初参加する、て聞きつけたから名乗り出ただけさ」

 バッシュは、隠し窓から令嬢達を眺めるだけで、目線は泳がしていた。
 聞いていたゴードンも同じように令嬢達を眺めている。

「バッシュ、俺達の誰かが先にその令嬢を手に入れたらお前は如何するんだ?」
「被ったらマズイから教えといてくれ」
「…………嘘だな……狙う気だろう?」

 デュークとグレゴリーが面白そうにバッシュの想い人を聞き出す。
 しかし、バッシュは口を割らない。

「バレたか………所で、コーウェンは来てないんだな、あいつも花嫁探しに名乗り出たのに」
「コーウェンは父親の命令で逆らえず、渋々だって聞いたよ」
「あいつは趣味に没頭したい奴だからなぁ」

 もう1人の花嫁探しする王子、コーウェン・ラム・ノーウェン・ゴルーグは姿を表さない様子。

「声は掛けたんだけどね」

 ロイスがデュークやグレゴリーに話す。

「去年もあいつ参加したのに花嫁選ばなかったしな」
「好きな令嬢が居たりして………シシシッ」
「バッシュやゴードンは聞いてるか?コーウェンの事」
「…………いや?何も」
「俺も聞いてないな」
「そういや、何でゴードン居るのさ」
「そういえば………花嫁探しに名乗り出てないのに……」

 ロイスとグレゴリーがゴードンがバッシュと居るのが自然過ぎて、今頃気が付く。

「………俺は、兄上にただ付き添ってただけだ、もう出てく」
「…………ゴードン、お前も出たかったんだろ?バッシュと同じ令嬢か?」
「…………年功序列で兄上が今年出るから、俺は遠慮しただけだ」

 一瞬、肩を震わせたゴードンだが、直ぐに動揺を隠すと、部屋を出ていった。

「………ビンゴだな」
「ビンゴ」
「バッシュ、如何すんの?」
「…………さぁね」
「誤魔化すねぇ、バッシュ………ククッ」

 デュークだけでなく、グレゴリーもゴードンの動揺に気が付いていた。
 バッシュは誤魔化す事をやめない。
 暫くすると、また練習を再開した令嬢達。
 その演奏に耳を傾けた男達は、皆カチュアに目線が行く。

「へぇ~、カチュア嬢なかなかだな」
「上手いね」
「だから言っただろ?玄人だと」
「演奏だけではまだ分からんが、暫く見てみるか」

 グレゴリー、ロイス、バッシュ、デュークがカチュアに対しそれぞれの印象を述べるのだった。
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