聖女は鳥になって過去に2度戻り、夫を入れ替える【完結】

Lynx🐈‍⬛

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奇妙な3人での生活

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 王宮近くの屋敷は庭も無い、建物だけの屋敷。
 馬車を降りると、ゴードンが出迎えてくれた。
 カチュアはゴードンの姿を見て、ホッとする気持ちと、悲しい気持ちが入り混じる。

『カチュア、先ず部屋に案内するよ、暫くゆっくり過ごすといい、頬の腫れの手当をしたらお茶にしよう』
『兄上、何故カチュアはそんな顔に?』
『その理由は、まだ聞いてない。カチュアが嫌でなければ教えてくれればいい』

 ヴァルム家の兄弟にはカチュアも色々とよくしてもらっていた。
 優しいバッシュと無口なゴードンだが、幼い頃は屋敷も近い為、お互いの屋敷を行き来してよく遊んだものだった。
 今この時でも気を使ってくれるバッシュに安心を覚えたカチュア。

『手当てしたら、お話させて下さい』
『じゃあ、後で』

 手当てをしてもらい、バッシュとゴードンが居る部屋に案内されたカチュア。
 バッシュかゴードンの私室らしいその部屋は、落ち着きのある優しい雰囲気の調度品に包まれた部屋だった。
 醜聞を憚り、人払いしたバッシュは、カチュアに何が起きたのか聞いてくる。
 カチュアも素直に説明を始め、バッシュもゴードンも納得するように頷いた。

『………まぁ、仕方ないよね、暫くヴァルム家からは王は選ばれてないから』
『…………たからと言って、父は酷いです。バッシュ様もゴードン様も立派で尊敬出来る方達なのに……』
『………尊敬………か……ゴードンはともかく、俺にその言葉は似合わないよ』
『…………そんな事は無いと思います』

 少なくとも、カチュアの前では、尊敬出来る兄の様な人だったバッシュ。
 兄弟姉妹が居ないカチュアにとっては、バッシュは兄の様に思っていた。
 だが、バッシュはではなくとなる、とカチュアの脳裏を掠めて行った。
 好きな人と一緒に住むこの屋敷で、好きな人の兄と夫婦生活を送らねばならない、と思ったら、急に怖くなっていたカチュア。
 出来るのだろうか、妻を………と。

『…………カチュア………君は覚悟があるの?俺の妻になる………君は、あの5人の中で、よく知らない男に嫁げる程の度胸は無いと思っていたよ』
『…………っ……』
『………だから、俺を選んだんじゃないか、とね……』
『……………ご推察通りです………でも、妻となるからには……夫となる方に尽くす覚悟はありました』
『ありました…………か』
『……………っ!』
『カチュア………俺はね、君を指名したのは、ゴードンの為なのさ』
『え?………ゴードン様…………の?』

 無言を貫くゴードンを見たカチュアだが、ゴードンはカチュアと目が合うと反らしてしまう。

『…………カチュア、今から俺が言う事は他言無用にして欲しい』
『………他言無用?』
『してくれる?』
『……………バッシュ様が仰っる事なら』
『………良いのですか?兄上、本当に伝えても』
『カチュアなら、漏らさないだろう』
『………兄上が良ければ……』
『………?』
『カチュア…………子種は、ゴードンから貰って欲しい。』

 衝撃的な事を言われたカチュア。
 となるのは、バッシュでは無かったのか、と。

『…………俺は、女性に子を孕ませる事が出来ないんだよ…………だから、俺の妻になった状況で、ゴードンに抱かれて欲しいんだ。君はゴードンが好きだったろ?………ゴードンも君を……』
『兄上!…………それは俺に言わせてくれ…』
『………あぁ、そうだね』

 クスクスと微笑むバッシュとは裏腹に、何を言われているのかさえ、理解に苦しみ始めるカチュア。

『…………カチュア……俺はずっと君が好きだったんだ……』
『…………ゴードン様………』
『だけどね、カチュア………一応、君は俺の妻になるのだし、閨に関しては俺の監視下で、という事になる』
『……………え?………み、見られながら、という事ですか?』
『それはそうさ………俺の妻になる人を房事中に、俺が違う所に居ては不審がられるだろ?』
『…………そ、そこ迄しなければならないのですか?』
『当然さ……ヴァルム家から久々に王を出す為に……ゴードンも来年妻を迎えさせ、ゴードンの子を孕ませ、選択肢を増やす……俺は、子種が無いらしいからね………勃ちはするが、子は望めない。だから、ゴードンに頼むしかないと思っていたら、ゴードンが好きなカチュアが今年花嫁探しに参加したからね……カチュアを他の男に奪われては、ゴードンも協力してくれないだろうと思って、話したらゴードンは協力すると言ったんだ。カチュアが他の男に奪われては俺達兄弟の計画は頓挫する。今年、カチュアが誰にも指名されなかったとしても、そうしたらの俺の道が絶たれてしまうから、俺が指名した、という流れさ』
『…………バッシュ様は好きになられた方は居られないのですか?』
『居るよ?カチュア………君以外好きだと思った女は居ない。だから、ゴードンに頼むしかないのさ………ゴードンなら、カチュアを取られたとしても、納得するからね』
『……………わ、私……頭が追いつかない………』
『………まぁ、徐々に慣れてくれたらいいよ、カチュア』

 バッシュはゴードンに目配せさせ、ソファから立ち上がり、向かいに座るカチュアを挟む様に座り直した。
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