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【あらすじ 紗耶香&裕司視点】Mにされた女はドS上司に翻弄される
誤算続き
しおりを挟む羽美の元カレのストーカー、晃司が先走った。
紗耶香が探し出し、話を晃司にすると、羽美に会いたいの一心で近付いたのである。
「何て事してくれたのよ!あの男!」
「紗耶香、俺はストーカー被害届の取下げられるか、の相談に行く、て言っただけだぞ?何で先に動くんだよ、アイツ」
「知らないわよ!」
結果的に被害届の取下げは出来ず、身分証明書を偽造する必要も無かったのだ。
紗耶香の駒が、紗耶香の言う通りに動かない。そして、最も信頼するお目付け役裕司が、紗耶香の知らない行動を起こしたのだ。
紗耶香は、裕司が航や羽美と知り合いだと知らなかったのは、裕司が言わなかっただけなのだが。
数日後、裕司が店長として勤務するバーで暴力事件を起こしたのだ。
「裕司!」
「…………おぉ、航。どした?」
息せき切って、航が裕司に詰め寄った。
「何でここが分かった?」
「彬良に聞いたんだよ!この界隈にお前が働くバーがある、て聞いたからよ!」
「…………彬良め……俺の事は航に伝えるなって言ったのに……」
バーで1人開店準備をしていた裕司を、挟む様にカウンターの前に立つ航。
「お前、何を隠してる」
「何も隠してねぇよ」
「嘘つけ………ココ……白河酒造と繋がってるだろ!」
「…………知らねぇな………あぁ、羽美が結婚したんだって?よくお前許したな」
「あぁ?……認めてねぇよ!まだ」
裕司には分かる。
航が理由無しに、妹の羽美の結婚を簡単に認める訳はない。紗耶香に航と父親が経営している店を妨害された事で羽美が結婚したのだ。それでも航は反対して結婚は許さないと、裕司は思っていたのだが、店と妹を天秤に掛ける事もない程、航は羽美と結婚した律也を認めている、と。
「認めてんじゃねぇか………よっ!」
「ぐっ!」
裕司はカウンターを飛び越え、航を蹴り倒す。
「てめぇ!いきなり何しやがる!」
「…………お前が羽美と店を守った様に、俺も守りたいものがあるんだよ!」
「だから、それと会わせろって!」
「やなこった!」
「ゔっ!」
航は、反撃をしてこない。それには裕司も疑問に思ったが、航と喧嘩をして何方も無傷でいられる訳もなく、一方的に航に暴行を加える裕司。
「………裕司……俺に………こんな事して……守れるのか?………プッ……」
「っ!」
航は、唇を切ったのか、血を吹き飛ばす。料理人姿で、泥と裕司の靴跡が着いた航は、その姿で、唇を拭った。
「大事なもん守れるのかよ!」
「うるせぇ!」
抵抗も何もしない航は裕司のサンドバッグだ。暫くして、航は気を失う。
「はぁ………はぁ……航………俺は……どっちも……守れねぇのかな………紗耶香も……お前も………助けてくれよ………」
裕司は目頭を押さえ、スマートフォンを取り出した。
「もしもし………彬良………ちょっと手伝ってくれね?」
裕司の友人の1人、彬良を呼び出す。
「な!航!…………裕司!お前何しやがった!」
「………運んでくれねぇか?彬良……ちょっと先の路地裏でいいからさ」
「病院だろ!」
「直ぐに見つかるさ………それに、直ぐ俺は警察に捕まるだろうしな」
「…………お前の場所、航に教えるんじゃ無かった……コイツはな!『お前に借り返す』て言ったから教えたんだぞ!何を今企んでる!」
彬良に胸ぐらを掴まれても、呆然と力なく、足元に転がる航を見下ろす裕司。
「………俺も……航を助けてやりたい、て思ったんだよ………でも、航より大事なもんが、闇に更に堕ちるのを黙って見てられなくてよ……」
「…………俺1人で運ぶ………その手、早く手当てしとけ………表歩けねぇからトイレの小窓から航を渡せ………」
彬良により、路地裏に放置された航。
「航、気をしっかりしやがれ!俺はお前に裕司を任せるぞ!いいな!」
「…………へっ……彬良……悪ぃな……」
「………ったく……救急車呼んどいてやるよ」
救急車が到着し、航は全治3ヶ月という重傷だった。特に酷かったのは包丁を持つ右手。
白河酒造からの妨害があったとしても、まともに営業は出来ないなら、ゆっくり休め、と裕司の気持ちでもあった。
営業が出来るとなると、航は無理をするに違いないからだった。
しかし、裕司の思い通りにはするつもりは無かった航は、被害届は出すものの、証言もしない曖昧な態度で、警察に任意同行させ、裕司と裕司が守りたかった紗耶香を白河酒造から排除させたのだ。警察沙汰になれば、社会的に排除になる事が多々ある。
航は羽美を紗耶香から離し、紗耶香を助けたかった裕司を白河酒造から引き離そうと、賭けにはなるが、やってみせたのである。
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