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観察
しおりを挟む(俺の眼で見ろ、て?………ふざけんなよ!)
お婆の部屋から出て、一人になりたくて、そのビルの屋上に上がりに行こうとしたシヴァ。
後ろからはソロも付いてくるのだが……。
「一人にしてくれよ。」
「…………駄目ですよ。」
「…………なら邪魔すんな。」
「御意。」
屋上に来ると、ジュディスが先客として、的をめがけて鞭を放っていた。
「はぁはぁ………もう!!苛々する!!」
彼女もまた苛立ちを隠せない。
「何で君の武器は鞭なんだ?」
シヴァが声を掛ける。
「…………ソロ……か……。シヴァ………は居ない?」
「………あ、シヴァ?」
(あれ?あいつ何処に……。)
ジュディスは、2人が入れ替わってるのを知らない。
ソロがシヴァで、シヴァがソロだと思っている。
ジュディスが居たので、隠れたようだ。
「シヴァ、て何歳?」
「………さ、さぁ……確か53ぐらいだったかな?」
「げっ!36歳差!!」
「…………何だよ。」
「……………あ、いや、こっちの話。」
(そんな年齢差のある相手と結婚しろ、て?何考えてんの?お父様!同じぐらいの年齢じゃない!)
ジュディスが結婚に異を唱える理由はソレなのか、と思わざる得ないような苛立ちだった。
(………年齢差で、まさか嫌だって事か?)
「何でシヴァを気にするんだ?」
「………だって、シヴァ・カムラ、てカムラ国の王子でしょ?」
「………そこまで知ってるのか?カムラ国の内情はトップシークレットだぞ?」
「はっ!!」
「…………まぁ、いい……。だが、シヴァ・カムラと名乗る男は、彼だけじゃない。称号みたいなもんだ。傭兵として仕事に行く時は、誰か1人はカムラを名乗る。彼は俺の師でもあるから、カムラを名乗る許可が王妃から出ている。それに、彼は王子じゃないよ。」
「……………王子じゃない、んだ………。」
(ん?何かホッとしてる?)
ジュディスは何故結婚に異を唱えるのか……。
「君はヤケにカムラの王子を気にするんだな。」
「………え?………気に……ならないと言えば嘘になるけど、あの歳で王子?て思ってたから……てだけで……。」
何て答えて誤魔化すのが正解だったのか、と思ったら変な答え方になったジュディス。
「あ、居た!ジュディス!婆様が呼んでる。」
アーヴァインが呼びに来た。
「分かった、ありがとう、今から行く。」
少しホッとした顔のジュディスは、鞭を丸め、ベルトに括って、下に降りていった。
残されたシヴァにアーヴァインは、
「ジュディスに興味持つなよ、あいつには婚約者が居るんだから。」
「………へぇ……それは君?」
「………俺はただの仲間だ。」
アーヴァインは、そう言うとビルの中に入って行った。
残されたのはシヴァだけ。
「歳の差の結婚が嫌だっただけか?」
「違うでしょうね、取って付け加えて、じゃないですか?シヴァ様の年齢を知らない筈ですし、今更歳の差等と言わない筈です。」
ソロが、シヴァの近くに来る。
「………だが、シヴァ・カムラが王子だと知っていたぞ?普段から入れ替わってたから、ソロがシヴァだと思ってても不思議じゃない。」
「………勘違いされてる事は訂正したいですね。」
「別に、勘違いさせたままでいいじゃないか、俺も結婚する気はないんだから。」
「シヴァ様………ロートシルトは大国です。何故大国と言われるようになったか、お忘れですか?」
「…………知ってるさ。先見の眼だろ?」
「先見の眼は、他の国も欲しがる能力なのもご存知の筈。先見の眼は女性継承と聞いた事もあります。ジュリアナ王女には数多くの縁談話もあったでしょう。それが何故カーネリアン様がシヴァ様のお相手にジュリアナ王女を選ばれたのか、という意味もお考え下さい。」
「それでは尚更、彼女が王位継承者としてロートシルトに残っていた方がいいじゃないか!」
「………そこなのです、それを私も聞きたかったのですが………それとは別な事を言われてしまったので……。」
「また話せる時に聞いてみるさ。ジュリアナ王女の側に居るんだから、いずれ分かる。」
シヴァの疑問点が多くのしかかるのだった。
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