貴方は私を虐げてきたのではないのですか?【完結】

Lynx🐈‍⬛

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 車が三条家に着いた。
 藤枝家と大差無い豪邸で、もう未央理も驚かない。

「部屋に案内する、来い」
「………ねぇ……」

 玄関の前で、一歩も入ろうとしない未央理が
秀平に声を掛けた。

「何だ?」
「藤枝には誤魔化してくれない?」
「何をだ?」
「私、やっぱり此処には住めないよ……いや、住みたくない」
「………」

 玄関で、お手伝いさん達が未央理と秀平を見比べて動向を見守っているのだが、秀平はお手伝いさん達に目配せさせる。

を連れてきてくれ」
「は、はい………」
「未央理様、此方へ」
「え!……ま、また此処でも!」

 お手伝いさん達に、腕を捕まれ囲まれた未央理。
 彼女達が未央理の名前を言ったという事は、秀平の妻だと認識したからに過ぎない。
 女性に手を出す訳にはいかず、連れて行かれた部屋を見て、それには未央理も驚いた。

「な、何だこの部屋!」
「何だじゃない、俺達のプライベートの部屋だ」
「デッカいベッドがあってプライベートの部屋って言える?」
「寝室も兼ねてる。君の服はこの部屋のクローゼットから好きな服を着るといい。勉強部屋は隣だ。少しでも成績が落ちたら、学校以外でも勉強を見てやる。君の成績は決して良くはないから、毎日勉強は家でもしてもらうがね」

キングサイズのベッドが一番邪魔な様な気がする部屋に、ソファとローテーブル、ドレッサーぐらいしかないのだ。プライベートの時間を過ごす気にもならない、ホテルの様な部屋だった。

「着物から着替えるといい……着慣れてないんだろう?」
「う、うん……」
「着替えたら、家を案内する」

 確かに振り袖姿を1日中は辛いものがある。

「未央理様、お着物の衣紋掛はこちらにお掛け下さい。陰干しが必要ですから」
「あ、はい……」

 掻きたくない冷や汗もいっぱい出た未央理が振り袖を脱ぐと、長襦袢が湿っていた。

「………えっと…服はクローゼット………っと……え………こ、高級ブランド……物……着ろっての?コレ……」

 お洒落が好きな未央理が憧れるブランドの服ばかりが並ぶクローゼットの中。バックも数点箱に入っていて、それも手が簡単には出せない物ばかりだ。

「さ、流石にサイズは合わないよね………あ、合ってるよ……」

 サイズ表示を見れば、未央理と合っていて、振り袖以外持ち出せなかったからか、仕方なくその服を着る事にした。

「あ、あの……着替えましたけど……」

 お手伝いさんが部屋の前に居て、未央理に家の中を案内する、と聞かされてはいたので、部屋から顔を出した。

「お似合いです、未央理様」
「あ、ありがと……」

 高級ブランドの服に少し照れ臭く、お手伝いさんに案内された部屋へと入った。

「秀平様、未央理様がお着替えになられました」
「ん、そうか…………なかなか似合ってるじゃないか」
「………ど、どうも……」
「家を案内する、付いて来てくれ」

 三条家は元々、武道を教えていた関係で道場も完備されていた。その家には秀平と秀平の祖父の護と2人きりで住んでいて、住み込みのお手伝いが居るのだと聞いた未央理。

「ご両親は?」
「海外で乗った飛行機事故で既に他界している。それが十年は前の事だ。それから祖父母と住んでいたが、祖母も三年程前にな」
「兄弟も居ないんだ」
「………弟も居たがな……両親と一緒に」
「………な、なんかごめんなさい……言いたくない事聞いたみたいで………」
「過去の事だ……立ち直ったしな……基本、君は家事はしなくていい……お手伝いさん達がしてくれるから、君は学校の勉強と、今迄の様に所作を身に着ける事をしてくれればいい」

 幾つかの場所を案内されて、三条家のリビングへと入ると、お茶を用意された。

「飲むといい……ミルクと砂糖多めにしてある筈だ」
「………何で知って……」
「大叔父から聞いている」
「………あの人から?私、あの人の前でカフェオレなんて飲まなかったし、あの家でも飲んだ事が無いわ」
「………大方、君のお母さんから聞いたんじゃないか?入院も病も伝わってるんだ」
「………確かに……でも、そんな良好な関係には見えなかった……」

 病院での央と理子の関係は、央に怯える様にしていた理子だ。怯える理子が、未央理の好きな物等教えるとは思えない。

「夕飯迄少し時間もあるし、君が疑問に思う事でも答えてやろうか?」
「………何で結婚に了承したの?」
「………君こそ、不思議だな……」
「誤魔化さないでよ」
「………祖父も年を取ったからな。そろそろ身を固め様と思っただけだ」
「………嘘だ……アンタぐらいの容姿なら、モテるよね……しかも私高校生だよ?教員なんでしょ?リスクだらけじゃん」
「高校生の結婚は親の承諾あれば出来るんだよ、知らないのか?」
「………聞いた事はあるけど……」

 カフェオレのカップを包み込む様に持ち、口に運ぶ未央理が、この家でやっとホッとする程に落ち着いた。久し振りのカフェオレの味を喉に通したからかもしれない。
 そして、秀平との話も強ち悪い印象は無く、藤枝の家に居るよりかは、招かれてくれている感じがした。

「………相手なんて、誰でも一緒だ。欲しい相手以外はな……」
「じゃあ、欲しい相手を手に入れればいいじゃない」
「………するさ、必ず」
「………で、私と離婚してくれる、て言うの?それならそれ迄でいいから、藤枝を誤魔化してあげる………なんなら協力するよ、アンタの欲しい相手がアンタに振り向く迄」
「………へぇ……君に出来るのか?
「分かんないけど、離婚出来るなら協力するって言ってんじゃない」
「………」

 秀平の珈琲を飲んでいる目は眼光鋭く、何やら不適な笑みを浮かべていた。
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