貴方は私を虐げてきたのではないのですか?【完結】

Lynx🐈‍⬛

文字の大きさ
10 / 41

9

しおりを挟む

 ---アイツ……サドだ……絶対にサドだ……

 未央理が出校して、職員室に入った時、秀平は未央理の肩に手を置いた。

『先週末、ご説明した通り、彼女は僕の妻です。教え辛い立場かと思いますが、一生徒として扱って下さい。君は、僕と夫婦だとは知られたくはないだろう?先生達にもその事は説明済みだから、君も僕とは一線置くように』
『………分かりました……』

 教員達の挨拶中に突き刺さる目線。
 明らかに女教員からの目線を未央理は感じた。
 家で未央理に対する態度と違う態度から、未央理には素を見せていると分かる。学校での態度は、スマートで朗らかな青年、というイメージなのに対し、未央理の前では横暴で優しくはない。
 授業が始まり、早々に秀平の授業で、分からない問題に当てられて、答えられない未央理に補修を言い渡された。
 高学歴の大学へ進学する生徒を輩出する学校で、三流高校に居た未央理に分かる筈もない。

「あ、居た!三条さん!」
「………」

 ---あ、私、だった

「何?」
「三条先生と同じ名字だから親戚か何か?」
「………え?違う……かな……親戚って程近くない」
「どういう意味?」
「………父親が理事長の従兄弟だから……で、理事長の孫が三条先生ってだけ……」
「………あぁ、遠い親戚は親戚なんだぁ」

 それぐらいは隠さなくてもいい、とは事前に秀平には言われてはいた未央理。

「ま、まぁそうなるかな……」
「親戚なら知ってる?彼女居るのかな?」
「し、知らないけど……先生に聞いたら?」
「教えてくれないんだよねぇ、ガード固くてさ」
「そ、そう……」
「好きな人は居るっぽいんだけどな」
「………へぇ~、そうなんだ」
「何か、親戚筋で分かったら教えてよ。私、明日香って言うの。斎藤 明日香」
「わ、分かった……」

 同じクラスらしい女子生徒。親しくなれるかは分からないが、声を気軽に掛けられてホッとする。未央理に悪意が感じられない声掛けは久し振りだ。

「聞き覚えのある声が聞こえたと思えばお前か」
「………な、何か用?」

 教室移動だろうか、教科書を持ち歩いていた崇から声が掛かった。

「別に……編入した生徒が馴染んだか聞きたかっただけ」
「藤枝君、彼女知ってる娘?」
「編入生だよ。一応生徒会長だからね、今朝挨拶して顔見知っただけさ」
「珍しいね、この学校に編入なんて……編入して行く子は多いけど」
「余程優秀なんじゃない?」
「………っ!」

 1学年上の崇は生徒会長だと教えられていた。相変わらず、澄ました顔には未央理は腹立たしいが、を装う姿は有り難い。
 未央理も、好き好んで崇と関わりたくは無いからだ。
 何とか授業を全て終えた未央理だが、帰り支度をしていると、秀平に止められた。

「三条さんは居残り補修ですよ」
「………予定、あるんですけど…」
「聞いてません。勉強が不十分だと僕が判断したので、補修します」

 確かに言われた事だが、未央理は授業後、前の高校に行こうと思っていた。6限の授業をサボり行く事も考えたが、初日にサボりはと思い、さっさと逃げる様に教室から出ようと思っていたのだが、席は教壇の前で、秀平にはバレてしまう。

「嫌です」
「居残りです……それとも、家庭訪問でもしましょうか?」
「………家庭訪問……て何?……だって……」

 すると、秀平は未央理と目線を合わし、小声で言った。

「帰ったらみっちり個室で……と思わないのか?」
「………っ!………補修………します……」
「いい心掛けです………皆は部活に行く者は部活に、帰宅する者は早く帰りなさい」
「さよ~なら、先生」
「はい、さよなら」

 生徒達も穿け、教室に2人きりになる未央理と秀平。

「………身体は大丈夫か?」
「それ、今言う?」
「一応、心配してるんだがな」

 秀平は教壇に戻り、教科書を開いた。

「崇と一緒の事言うんだ………意味は違うだろうけど」
「崇?………あぁ、兄貴か」

 せっかく片付けた教科書を未央理も出す辺り、補修を受けるつもりにはなったのだろう。

「兄なんて思ってないし」
「………まぁ、アイツはそうだろうな………ほら、教科書開け。補修始める」
「マジでやるんだ……」
「帰ったらまだ勉強教えるつもりだがな」
「じゃあいいじゃん!家でも!」
「今日、付いて来れなかったから、見せしめの補修だ………明日は無いようにしろよ。俺だって暇じゃない」
「………暇無いなら付き合う必要無いじゃん」
「それなら、俺が教える手間を省いて貰えないかな」
「………頭悪くてすいませんね」

 三十分程、補修をさせられた未央理だが、秀平に終わり掛けに言葉を掛けられた。

「裏口から帰れ。車が迎えに来ている筈だ」
「………へ?」
「送り迎えの車が多いからな。君はまだウチの車の運転手の顔も覚えてないだろ……暫くはそうやって帰れ」
「………私には、歩いて帰る権利は無い訳?」
「そう言って、君は帰らず遊びに行くと予想しているからな」
「ぐっ………前の学校の友達ぐらい会いに行ってもいいじゃん!」
「駄目………門にはガードマンが居るからな、裏口から出ないと俺に報告が来る。そうなれば君に持たせたGPSで探すぞ」
「スマホ置いて来たもん」
「………スマホだけがGPSだと思うな、馬鹿め……俺が帰った時に君が居なければするからな」
「な………何だと……」

 スマートフォンにGPSが付いているのは聞いていたので、三条家に置いて来たのに、他にもあるとは知らない未央理は、素直に裏口で待つ車に乗り、三条家へと帰ったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】私は義兄に嫌われている

春野オカリナ
恋愛
 私が5才の時に彼はやって来た。  十歳の義兄、アーネストはクラウディア公爵家の跡継ぎになるべく引き取られた子供。  黒曜石の髪にルビーの瞳の強力な魔力持ちの麗しい男の子。  でも、両親の前では猫を被っていて私の事は「出来損ないの公爵令嬢」と馬鹿にする。  意地悪ばかりする義兄に私は嫌われている。

冷徹義兄の密やかな熱愛

橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。 普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。 ※王道ヒーローではありません

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

元彼にハメ婚させられちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
元彼にハメ婚させられちゃいました

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

私は愛されていなかった幼妻だとわかっていました

ララ愛
恋愛
ミリアは両親を亡くし侯爵の祖父に育てられたが祖父の紹介で伯爵のクリオに嫁ぐことになった。 ミリアにとって彼は初恋の男性で一目惚れだったがクリオには侯爵に弱みを握られての政略結婚だった。 それを知らないミリアと知っているだろうと冷めた目で見るクリオのすれ違いの結婚生活は誤解と疑惑の 始まりでしかなかった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...