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しおりを挟む「ふぁぁぁぁ……」
「デカイ欠伸だな………もう21時か……風呂に入って来い」
付きっきりで勉強を見てくれていた秀平が、欠伸する未央理に言った。
「………え……?」
「だから、今日は勉強終わりって言ってんだ」
「う、うん………入ってくる」
「風呂出たら教えてくれ、俺の部屋は分かるだろ?この階の角部屋」
「あ、うん………」
「部屋に居るから」
未央理の勉強部屋を出て行った秀平だが、全く変わった感じもない。
「………今日もスるんかな………ヤダな……キスマークもファンデとコンシーラーでやっと消したのに……」
夫婦という関係にはしたくない未央理。
無理矢理夫婦にされて、初夜経験されて、身体を奪われた。
夫婦でも同意の無いセックスをする事は犯罪だというのに、未央理が本心で初夜以外で嫌な事はされてはいない。寧ろ、未央理に時間を作ってくれている。教員の仕事がどんな忙しさかは知らないが、1日中教員で居なければならないという事はない筈だ。
「………さっさと寝ちゃえばいっか……」
入浴を済ませ、髪を乾かさずにパジャマを着て秀平の部屋のドアをノックする。
『はい』
「お風呂空いたから」
『ちょっと待て、少し話あるから』
「ん?何?」
部屋からの声を待たない方が良かったかもしれないが、何方にしても追いかけられるだろう、と未央理はドアの前で待った。
「っ!………な、何で髪も乾かさずに出たんだ」
「ドライヤーが部屋にあったから」
「………脱衣場にもあるから使っていいぞ?」
「使っていいなら使う、ありがとう………おやすみなさい」
「ちょっと待ってって!話あるって言ったろ!」
「………手短で宜しく」
「俺も風呂入りたいから手短に済ます」
「何?」
秀平はドアを閉め、壁に凭れた姿勢で腕を組んだ。
「昨日のセックスの事だが……」
「っ!」
「俺は謝らないし、今後も続けるつもりでいるからそのつもりで」
「………何で!1回でいいじゃん!初夜だけで義理果たしたよ!」
夫婦なら、そんな義理はないのだが、未央理はなるべく避けたい事なので、なんとか理由を付けたい様だ。
「何だよ、義理って……夫婦だぞ?勿論、君が学生の内は妊娠させられないから避妊には気を付けるが、ヤらないとは俺は言わない」
「ヤらなくていい……」
「理由は?」
「………好きな人とがいい……」
「で?今好きな人が居るのか?」
「い、居ないけど………アンタみたいな横暴な人じゃないだけは言える」
「………残念だが、そんな理由で離婚には応じない」
「ちっ!」
未央理に好きな人が居て、その人とじゃないと駄目だ、と言い切れないだけあって、秀平も引く事は出来ない。
「そこでだ……金曜、土曜の夜はセックスするからな」
「………は?」
「君の学業に支障が無い様に考えたら、金土がいいだろうからな」
16歳でセックスレスでいいとは思わないが、無理矢理経験させられ、それでもスルーしようと迄思っていたのだ。
「勝手に決めないでよ!」
「だから、話てるんじゃないか」
「却下!」
「却下は無し……結婚している以上、俺も他の女を抱かない。操を立ててるんじゃないか」
秀平だって、まだ20代半ばで性欲もあるだろうに、未央理以外抱こうと考えていない様で、未央理はそんな事をしなくていい、と親切心を出す。
「………別にいいじゃん、別に女が居ても……セックスさせてくれる女ん所に行けば?」
「………君は、第二第三の君を増やす事になっても気にしないのか?」
「………な、何もそこ迄は言ってないよ」
「大叔父の所業を許していると言ったようなものだ」
「私は離婚して欲しいって言ってんのに!離婚して、高校も辞めてお母さんを看取るのよ!」
「高校は辞めさせない、君のお母さんの事は大叔父が診てる。君は安心してこの家に居ればいい」
「その代わりに、抱かせろって?私の気持ち、皆全く考えてくれてないじゃん!」
「くっ!」
直ぐに感情的になる未央理に気を付けて話をしようと、腕を組んでいた秀平だが、未央理は感情的になってしまったので、腕を掴んでしまった。
「ヤダ!離してよ!皆嫌い!アンタもあの親父も!藤枝の家も!私一人蚊帳の外で、訳分かんないのに、親父に引き取られて、直ぐにこんな結婚………何でよ!知ってんなら教えてよ!」
「………今は言えない………」
「何で……言えないの……私の事なのに……」
「………み……っ!」
ポロポロと涙が溢れ、風呂上がりに持っていた着ていた服を力なく落とし、我慢していた感情を露わにする。
「………っ!」
未央理を泣きやませようとしたのだろう。秀平の腕が未央理の背に回され抱き寄せられた。
「泣くな……未央理………今は自分のすべき事を頑張れ………泣いてる間は撫でててやる」
「…………っく……」
「そうすると、君は落ち着くんだろ?」
「っ!………な……な……で………それ……」
「いいから泣いて吐き出せ……」
秀平に背中や頭をずっと撫でられる未央理は、記憶の片隅に追いやっていた思い出を、引き出しから取り出される様に浮かび上がった。
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