13 / 41
12
しおりを挟む『お兄ちゃん、何で泣いてるの?』
公園のブランコで少年が人目を憚らず泣いていたのを小さな女の子が声を掛けた。
『………あっち行け……』
『………よしよし……』
『なっ!………触るな!いいからあっち行けよ!』
頭を急に撫でられて驚いたのと、恥ずかしさで女の子を拒否する少年。
『お母さんがね、泣いてる子の頭や背中を撫でてあげると落ち着くから、って言ってたから撫でてあげるの………みおりもね、お母さんに撫でて貰うと落ち着くんだ~』
『………』
拒否したのに、笑顔で気にしない女の子はそれでも少年を撫でようとしている。この女の子を見ると分かってしまう。人の痛みが分かる子だと。
『………もっと撫でてくれる?』
『うん!』
それから、度々少年はその公園に訪れ、女の子と話をする様になった。
『あの日、お父さんもお母さんも死んだんだ……だから泣いてた』
『みおりもお父さん居ないよ?同じだね』
少年は女の子が泣く事があるのだろうか、と不思議と笑うしか出来ない子だと思ってしまっていた。つまらない話や愚痴ばかりしている少年なのに、いつも笑い飛ばして励まされていたのだ。
だが、その女の子とは会えなくなった。
引っ越ししたのか、病気で来れなくなったのかは分からない。だが、少年は探したくて、家の権力を駆使して探させた。
そして、その女の子を見つけた時、衝撃な事実に運命を感じたのである。
「………ん…………あれ……ベッドに居る……」
未央理が起きた時は、大きなベッドに1人眠っていた。秀平の姿はなく、時計を見ると深夜2時だ。
「泣き疲れて寝ちゃったのか………あのお兄ちゃんな訳ないよね……アイツが……偶然偶然………う~………偶然って事で!」
「何が偶然だ?」
「うわっ!な、な、な……」
「………君が泣き疲れて眠ったから、心配でソファで寝てたんだろうが………もう、大丈夫そうだな………部屋で寝てくる……二度寝して寝坊するなよ」
「あ………」
「………如何した?」
「な、何でもない……」
「そうか………じゃ、おやすみ」
秀平の服が変わっていなかった。泣いて疲れて運んできてくれた筈で、服も変わってないとなると、風呂にも入り損ねただろう。
思い出した少年が秀平なのかの確認も出来ないまま、気恥ずかしさで謝る事も出来なかった。朝、また顔を合わせたら謝らなければならないな、と思いそのままベッドに潜り込んだ。
「謝る………謝る………謝らな………きゃ……」
そう思えば思う程、秀平の事が気になり出していくのを、未央理は予感していた。
「………っ!もう!」
そう考えると、眠かったのに頭が冴えてきてしまった。
「すげぇ顔………」
「………煩い」
朝食の食卓で目の前で食べている秀平に、朝一で突っ込まれて、未央理は朝一で謝る事を逃した。
「首筋………隠さないのか?昨日は隠してたのに」
「………え!………あっ!」
「目の下のクマと首筋、隠してから学校に行けよ……生徒達から突っ込まれるぞ……あいつ等もセックスに興味あるお年頃なんだから」
「………誰が付けたのよ!」
「夫」
「っ!」
一足先に食べ終えた秀平は、歯を磨きに洗面所へと行ってしまう。
「………また謝り損ねた……」
秀平は歯を磨き終えると出勤してしまうので、学校で会った時に言うか夜しかない。
「未央理様、お弁当と一緒に疲労回復薬ご用意しておきました。本日、抜き打ちテストをするから、眠くなるなよ、と秀平様が」
「………何で優しくすんのよ~………」
食器が無い場所を狙い、未央理はテーブルに突っ伏した。
秀平の訳分からない行動に、未央理の思考は惑わされている。
「秀平様はお優しい方ですよ、捻くれた方でもありますが」
「捻くれてる………すっごい捻くれた性格してると思う………何でテストの為に飲まなきゃならないんだ!違うだろ!原因はアイツなのに!」
「未央理様が可愛くて仕方ないんですよ、きっと」
「違いますから!絶対に!」
「未央理様、登校のお時間ですが」
「………あ……行ってきます!今朝も美味しかったです。ご馳走様でした!」
未央理を送り出したお手伝いさん達には、そのやり取りが楽しい様で、クスクスと笑っていた。
「可愛らしいわね」
「未央理様は、秀平様に好意はまだ無さそうだけどね」
「政略結婚だしね……でも、未央理様………キスマーク隠さず登校してったけど大丈夫かしらね……バッチリ首筋に痕残ってるのに」
このキスマークが、後程波乱を起こすのだが、お手伝いさん達には到底結果は分からないだろう。
「おはよう」
「あ、おはよう……斎藤さん」
「明日香でいいよ、仰々しいし…………ね……彼氏?」
「………彼氏?」
「ココ」
「………あっ!しまった!トイレ行ってくる!」
昨日、少し喋った明日香が挨拶に来たので、未央理も挨拶を返したのだが、明日香に隠していなかったキスマークを見られた未央理。
---ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!勘ぐられちゃマズイんだってば!
「っと!」
「きゃっ!」
「廊下は走るな………って……如何した?授業始まるぞ?」
「トイレに………ごめん!急ぐの!」
ホームルームに行こうとした秀平にぶつかった未央理だが、キスマーク部分を手で隠していたので、秀平も直ぐに何事かは理解した。
「………ったく……隠さなかったのか……言ったのに」
先に教室に来ると、教室内は明日香によって、未央理のキスマークの話がもう広まっていた。
「すっごいクッキリよ!クッキリ!どれだけ俺の物主張してんのか、てぐらい!昨日は分からなかったけど、今日見てびっくり!」
「………あの馬鹿……」
これにより、未央理の彼氏情報聞きたさに、クラスメイトの女子達は浮足立ち、男子達は未央理に興味が湧いた様だった。
それだけ、秀平は強く未央理の首筋を吸ったので、まだ数日は消えないだろう。
その日、数学の抜き打ちテストを行なった秀平だが、未央理はずっと秀平を睨みつけていて、テストどころではなかった。
5
あなたにおすすめの小説
【完結】私は義兄に嫌われている
春野オカリナ
恋愛
私が5才の時に彼はやって来た。
十歳の義兄、アーネストはクラウディア公爵家の跡継ぎになるべく引き取られた子供。
黒曜石の髪にルビーの瞳の強力な魔力持ちの麗しい男の子。
でも、両親の前では猫を被っていて私の事は「出来損ないの公爵令嬢」と馬鹿にする。
意地悪ばかりする義兄に私は嫌われている。
冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
私は愛されていなかった幼妻だとわかっていました
ララ愛
恋愛
ミリアは両親を亡くし侯爵の祖父に育てられたが祖父の紹介で伯爵のクリオに嫁ぐことになった。
ミリアにとって彼は初恋の男性で一目惚れだったがクリオには侯爵に弱みを握られての政略結婚だった。
それを知らないミリアと知っているだろうと冷めた目で見るクリオのすれ違いの結婚生活は誤解と疑惑の
始まりでしかなかった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる