13 / 37
12
しおりを挟む昼食を共にしてから、レティシャの部屋に医者が数名訪れた。
「………う~ん……皆さん如何思われます?私は殿下の声帯が切れている様に思うのですが」
「手術の腕はまぁ、大した事は無いですが、この位置に切られていると、そうなるかと」
「それで、如何なんだ!声は出る様になるのか?」
「レティシャ殿下がいつこの手術をされたかにもよりますが、発声出来る声があるなら、練習で回復は可能かと」
「練習すれば以前の様な声が戻るのか!」
「お、王太子殿下………ま、まだ練習も初めて……ません……から……」
興奮気味に医者を詰るリーヒルに、レティシャは呆気に取られる。
「王太子殿下、この手術をした医者は何処に?」
「牢獄だ………レティシャの声を奪ったのだからな……病気でも無かったにも関わらずにな」
「なんと……」
「確認させて下さい。レティシャ殿下の発声練習にも関わりますから」
「分かった、案内しよう……それで、レティシャの発声練習はいつから開始する?」
「それについては方針をまとめ、またご報告を致します」
牢獄に居るレティシャの声を奪った医者は、レティシャの馬車の事故後直ぐだったと自供した。
医者に依頼した者は、身分と名も偽り、一度しか会ってはいないと言う。しかし、手紙のやり取りと、その者の仲間と名乗る者が、確認をしに来る等、連絡は取り合っていた。だが、医者の手を離れてからは一切連絡は途絶えたと話す。
「分からないんだ!手紙も読んだら燃やせと指示があり、住所や名前に手紙を送った事も無い!いつも部下が突然現れ、場所を移動しろ、の指示ばかりだ!ただ死なせるな、とも」
医者が知っていた住所にはその名前の者は住んでおらず、近隣の住民もその様な名前の者も居なかったという事実だけ。点在した場所全て調べ尽くすが、借家でありその契約は医者の名前で借りている。
1ヶ月も定住しない転居なのと、最近の出来事の為、家主はよく覚えていた。
レティシャが医者から手放されたのは、事故から半年後。立てる迄回復したものの、体力が無くなっていたレティシャは、よく睡眠で体力回復をさせられていたらしく、眠っていた時に娼館に連れて行かれた様だった。
医者の依頼主の部下だと名乗った者が、医者の許可無く連れて行ったという。それからは医者はレティシャの事は気にはなったが、犯罪に手を貸した事もあり、国外に逃げようとした。
医者である以上、貴重な存在の為、所在地は定期的に調べられる。国外に行くと言うなら、引き止められる事も多々ある。それで、リーヒルはその医者を調べたのだ。
其処からは手掛かり等何も無い。他の医者に任されたのか、死なせるなという事を信じるなら、医者か若しくは女が身を隠せる場所を探すしかない、と娼館に目を付けた。
合法な店では直ぐに見つかる。そうなっては困る犯人は、合法ではない娼館へと隠すかもしれないと虱潰しで一年半も探し、レティシャの特徴に類似する娼婦が居れば必ず、リーヒル自身で国中駆けずり回ったのだ。
「お前は、犯罪に加担したんだ。健康な人間を、不健康にしたのだからな……一瞬でも、その人間がこのシュピーゲル国の王女だと思わなかったのか?」
「…………い、いい上等な服を纏っているから、何処かの貴族様としか………その後、王女殿下が亡くなったと、聞いてまさか、とは………」
「何故、その時に報告を入れなかった!」
「っ!…………い、生命を取られる……と……あ、あと金も……」
人間の弱みに漬け込み、犯罪に手を貸す輩は多いが、態々事故を起こさせ、大怪我の末、手当てと生き長らせる意味があるのか分からない。
殺せと指示した者と、生かせよと指示した者が同一なのか違うのか。
「ヴァンサン、話したか?」
「殿下………これと言っては何も進展は……調べた事を話すだけで……ただ、俺の推測を話すなら………」
牢獄に医者達を連れて来たリーヒルに尋問をするヴァンサンが自身のメモをリーヒルに渡す。
「………これは……お前の見解だろう?」
「おかしいので、其処に行き着きました」
「…………この件については後から話そう……レティシャの声だが出せるかもしれない……その事で医者同士話をさせる」
「本当ですか!レティシャ殿下の声が!」
「だから、少し尋問は休め」
「分かりました」
医者同士の話し合いも、リーヒルとヴァンサンは聞いてはいたが、話に割り込まない様にしていた。
「へぇ………あの嬢ちゃん、レティシャって言うのか………へへへ……いい孔だったぜ……」
「…………お前……」
同じ独房ではないが、医者と娼館の男達を投獄した部屋が近かった様だ。リーヒルとヴァンサンの会話を聞いていたらしい。
「声出ねぇが、出させてみたかったぜ」
「誰に対して物を言っている!」
ヴァンサンは剣を抜き、牢獄に向けて翳した。
「知らねぇな……お前等は俺達を切ってこんな所に押し込んだんじゃねぇか………俺達は仕事してただけだぜ?」
確かにこの男達からしたらそうだろう。だが一国の王女監禁と強姦の罪は重い。
「此処は首都だ。王城の地下牢獄……この方はリーヒル王太子殿下!貴様等が汚した方は、レティシャ王女殿下だ!」
「ヴァンサン、声を控えろ」
「し、しかし殿下……」
「へぇ~、じゃあ俺達ゃ王女の孔にぶっ込んだってのか!いい冥土の土産になるぜ、なぁ?」
「…………くっ!……ヴァンサン!扉を開けろ!」
「え?殿下?」
「いいから開けろ!」
殺気立つリーヒルに、ヴァンサンは首を横に振る。
「なりません!殿下!脅すなら兎も角、今貴方は殺気立ってます!」
「いいから貸せ!」
リーヒルはヴァンサンが持つ牢獄の鍵を奪った。
3
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
余命わずかな私は、好きな人に愛を伝えて素っ気なくあしらわれる日々を楽しんでいる
ラム猫
恋愛
王城の図書室で働くルーナは、見た目には全く分からない特殊な病により、余命わずかであった。悲観はせず、彼女はかねてより憧れていた冷徹な第一騎士団長アシェンに毎日愛を告白し、彼の困惑した反応を見ることを最後の人生の楽しみとする。アシェンは一貫してそっけない態度を取り続けるが、ルーナのひたむきな告白は、彼の無関心だった心に少しずつ波紋を広げていった。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも同じ作品を投稿しています
※全十七話で完結の予定でしたが、勝手ながら二話ほど追加させていただきます。公開は同時に行うので、完結予定日は変わりません。本編は十五話まで、その後は番外編になります。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる