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しおりを挟むその夜、サブリナはいつもの様に、過ごしていても、何処か心、此処に非ずだった。
昼間にアステラから求婚された後、ガーヴィンと過ごしても、ガーヴィンから母上と呼ばれ続け、ガーヴィンの世話役の侍女から、サブリナが代母となる事を喜ばれた。
『良かったです!私では母にはなれませんでしたし、側室にもなれなかった身ですので』
其処で、サブリナはファルメル国の側室の定義を知った。
側室になるのは平民。アステラの一声で、側室になれても、アステラの一声で直ぐに、側室を外される。しかも、ガーヴィンが産まれてからは身体を繋げる事をアステラは拒んでいる様で、アステラの性欲処理のみの扱いなのだそうだ。
寵愛を求めるのを禁止し、アステラが好む様に動ける者だけ、王城の一角に留まらせているのだと言う。
側室に、好きな男が出来たら、アステラは直ぐに側室の望む様に外し、それ相当に値する金品を渡して送り出すらしい。
アステラの性欲処理がその日出来る女にだけ頼む所が、側室達に愛情が無い様に思えた。
---よくよく考えたら、その側室達は都合の良い存在?男性は、愛情が無くても女性を抱けるの?
ガーヴィンの侍女も平民らしいが、アステラに選ばれる事は無かったらしい。
選ばれる選択はどんな基準かは分からないし、サブリナは側室達に会った事はない。
どの部屋に居るかさえも知らないのだ。
王城に居ても、すれ違うのは侍女や侍従、衛兵に貴族達で、侍女服以外の服を着た女を見た事も無い。
「疲れた………」
「っ!…………こ、今夜はお早かったのですね………」
「あぁ…………仕事を終えて直ぐに身体を洗って、部屋に来たからな」
普段より数倍早い、アステラの仕事の終了。
今迄のアステラなら、日を跨いでから部屋に戻ってきていた。
「サブリナ…………其方を抱く前に確認させて欲しい」
「何でしょう?」
アステラがサブリナの座る長椅子の隣に座った。
すると、徐ろにサブリナの手を握ると、アステラは俯いてしまう。
「そ、其方は………俺に側室が居る事をどう思っている?」
聞き辛い事なのだろう。
だが、サブリナは平然と答え始めた。
「…………あぁ……もし、わたくしの夫になる方が、アステラ陛下でしたら嫌ですわ、きっと」
その答えで、アステラは顔を上げて、サブリナの手を握った手に力が篭った。
「分かった………明日にでも側室は城から出す。役目を終わらせよう」
「え?…………わたくしの意見で左右して良い事ですの?ファルメル国の決まりで側室を持っておられたのではないのですか?」
ファルメル国の王族代々の決まり事だと勝手に思っていたサブリナ。それでなければ、子供が居る事に不思議には思わないし、平民から側室を迎えるのは、正式な妃を迎えても子供が出来なかったら、の心配があるから決定事項だと思っていたのだ。
「いや、必ずしも側室が居る必要はない……もし、サブリナとの間に子供が居なくても、もうガーヴィンが居るしな。それに、ガーヴィンも其方を母上、と呼んだだろう?」
「そ、そうなのですが、わたくし………側室達に疎まれながらアステラ陛下の妃にならねばならないのなら、覚悟が要ると思ってましたので」
「…………確かにそのまま側室を置いていたらなるだろうが、明日朝には側室は排除する。如何なる理由で王城に彼女らが戻って来ようとも、もう登城も許さぬ…………もう、其方だけだ……俺の相手をするのは………」
「お、お待ち下さい!」
サブリナは不安だった。
女として、受け入れて貰える身体なのか、と。
「何だ?何故待つ?もう要らないだろ、側室は」
「わ、わたくし………アステラ陛下にご満足頂ける身体では無かったら、と思うので………」
「……………プッ………あはははははは……」
「あ、アステラ陛下?…………な、何故お笑いに………」
「…………あぁ、すまない………先日、ガネーシャに邪魔されたあの日、覚えているか?」
「あ、はい………」
「あの後、昂ぶって抑えるのが大変だった…………」
「た、昂ぶって………え?………あの……意味分からないのですが………」
幾ら、知識豊富なサブリナでも、閨事で使われる様な言葉は詳しくはない。
すると、意地悪そうな顔をしたアステラはサブリナの手を握る手を服の上から局部に持って行く。
「っ!」
「……………コレが準備万端だった……と言う事だ………理解出来たか?」
「お、お放し下さい!………そ、そんな大切な場所をわたくしが触れる等………」
「俺の伴侶なら許す場所だ………愛している、サブリナ………」
「っ!」
耳元に掛かる低い声。
求婚された時も熱を帯びた低い声で、サブリナに愛を語った声だ。
その途端、背筋が凍る様にサブリナは震えても、身体が火照る。
「…………如何した?サブリナ………艶っぽい顔をしてる…………もっと、見せてくれると嬉しいが?」
「…………お、お放し下さい………そんな卑猥な………ち、知識では知ってはおりますが、実際に触れて良いのか………わたくしには………」
「口に咥えてもいいぞ?直にこの手に納め、上下に扱き、先をその可愛い唇で吸い、舌で割れ目に食い込ませられると、俺は嬉しい………特に、惚れた女にされるのを頭の中で描き、毎日抜いた…………今夜はその女が相手をしてくれると思ったから、側室の居る場所には行く事なく、早々に仕事を切り上げて、風呂に入り直ぐに此処に来た」
「……………も、もう……ひ、卑猥過ぎて………」
サブリナは顔が真っ赤だ。
耳元の甘い声に、自分の手はアステラの局部。
少しずつ、ヒクヒクと蠢くそのアステラの熱は、サブリナの手の中で大きくなっていた。
アステラも想像して、反応したのだろう。
横に居る恥ずかしがるサブリナの顔に。
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