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しおりを挟む翌朝、部屋に押し込まれたレイノルズとミューゼを見送る為、サブリナとアステラが2人が出て来る場所で待っていた。
だが、出発時刻になっても、2人は出て来ない。
「如何したのでしょうか」
「…………待ちくたびれそうだな。ガーヴィンも待たせてるのに」
「そうですわね」
「陛下」
「ガネーシャか、如何だった?」
レイノルズとミューゼに用意した部屋は、他の来賓達が泊まる場所から離している。
来賓達の目に触れさせない配慮がなされているが、流石に待たせられると、目に触れてしまう。
「今起きられた様で………しかも、危機感がお持ちではない様子」
「何だと?何処迄鈍いんだ、あの男は」
「えぇ、2人共に全裸でしたし、始め様と……」
「…………まぁ……相変わらずですわ」
「節操無いな………あの2人が出たら、寝具を総取り換えしたいな」
「同意です」
宿屋でもないのだから、我が家の様に情事を行う気が知れない。
それにこれから起こるであろう、レイノルズの処分への危機感の無さだ。お互い慰め合ったのかもしれないが、それにしても不謹慎だ。
『放せよ!自分で歩く!』
『ちゃんとそれも持って来てよ!あぁ!髪型決まらないわ!』
「最後迄煩いな」
「……………オルレアンの者は、あの2人の様な者は稀ですので」
「サブリナが居るんだから、そんな事は思わない」
「それなら良かったですわ」
更に待たされて、渋々出て来たレイノルズとミューゼ。
「あ!サブリナ!」
「ちょっと!あと数日滞在予定だったのよ!何故帰らされるの!」
「オルレアンで罪人の容疑が掛かってる者に、ファルメルに滞在させる理由等無い。そして、そこの女………」
「な、何ですの?」
「ファルメルの王妃なるサブリナに対して無礼過ぎる態度は、俺は許さん。其方のファルメルでの無礼な所業も、オルレアンの国王に報告させる」
「はぁ?私は正論を言っただけですわ、アステラ国王!」
「もう煩いのはゴメンだ………早く2人を乗せて出発しろ………最短で送り届けよ。オルレアンの侍従達が気の毒だ」
「はっ!」
「ち、ちょっと!乱暴しないでよ!」
嵐の様に過ぎ去ったレイノルズとミューゼ。
結局、サブリナはレイノルズと話さなかったが、もうお別れは済んでいる。
亡命する直前の会話だけで、もうサブリナは離縁に向けて動いていたので、特には話は無かった。
「さて、腹が減ったな」
「はい」
「ガーヴィンと3人で食事をしよう」
「2人でガーヴィン様を迎えに行きませんか?」
「そうだな、行こう」
ガーヴィンを迎えに行き、朝食の場に着いた時、食事の匂いがサブリナに異変を齎した。
「ゔっ………」
「サブリナ様!」
口を押さえ、顔が青褪めている。
「サブリナ!」
「…………だ、大丈夫です………何故か匂いで気持ち悪くなってしまって……」
「お医者様をお呼びします!」
「頼む!」
サブリナは妊娠していた。
求婚を承諾してから、避妊に気を付ける事なく抱き合っていたのだから、妊娠する可能性は高い。
「直ぐに精の付く食事に作り変えろ!」
「はい!直ちに!」
「あと、サブリナの両親に報告だ!国中に知らせ………は………まだか……」
「陛下、まだ結婚もしておりませんから、サブリナ様が安定期に入られてからの方が宜しいかと。妊娠初期は何が起きるか分かりませんから」
「そうなのか?…………ガーヴィンの時はあまり気にしてはいなかったからな………サブリナに俺の子…………」
「まさか、こんなに早くに子に恵まれるとは思っておりませんでしたわ………アステラ様」
「何だ?何か欲しい物あるか?」
「……………ふふふ……いいえ……元気な子を産める様に、わたくし頑張りますわ」
「……………サブリナ………あぁ……ありがとう……」
この知らせをサブリナの両親、ユーザレスト公爵夫妻に届けられた頃、レイノルズとミューゼと入れ違いで、オルレアン国からマイルが到着した。
「父上、全て終わらせて参りました」
「マイル、ご苦労だったな。手間だったろう」
「いいえ、サブリナが基礎を作ってましたから、それに合わせて動いていただけです。盲点だったのは、王太子に俺の名が挙がった事だったので、それには焦りましたが」
本当に嫌だったのか、顔を歪めているマイル。
「そうか………でも逃げ出せて良かった」
「サブリナは元気にしていますか?会いたいのですが」
「サブリナは………そうだな……お前が謁見を求めるなら直ぐに会えるだろうが、体調も少々心配でな」
マイルもサブリナの事で動いていただけあって、妻や息子の事より、心配でもあった様だ。
「何かあったのです?」
「妊娠したそうだ」
「妊娠?まさかレイノルズ殿下の子じゃないでしょうね!」
「違いますよ、マイル」
「母上、違うとは」
「お相手はアステラ陛下だ」
「え?もう?妊娠?婚約発表する話を聞いたばかりですよ?」
相手がレイノルズでないだけ安堵している。
「まぁな………愛し合っておるし、私は嬉しく思う」
「意外ですね………お会いした事がないので、気になります。直ぐに面会を求めないと」
「少しはゆっくりしなさい、デイジーとアベルもお前に会いたがっていたのだから」
「えぇ、王城の返事が来る迄、2人と一緒に過ごしますよ」
「そうしなさい」
それから暫くして、アステラがマイルと面会する、と許可が出たので、ユーザレスト公爵と共に登城する事となった。
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