5 / 19
城崎
しおりを挟む翌朝、咲田の屋敷で目が冷めた瑠璃。
「服も用意しといたぞ」
「…………ありがとうございます」
秘書でもある瑠璃の戦闘服であるスーツが、咲田は用意していた。ロングタイトとジャケットのセットスーツは正直有り難い。拓夢から受けたキスマークより増えた痕は、咲田が追加したのだろう。見えない様肌は隠せている。
「朝飯も食ってけ」
「時間無いので、結構です…………明日、何時に空港に行けばいいですか?」
「迎えに行くから、今住んでる場所教えろ」
「今夜、社長のマンションに泊まると思いますけど……時間さえ教えて貰えば間に合う様に行きます」
勘が働く咲田の事だ、干渉はされたくない瑠璃は早々と咲田の屋敷を出た。
「瑠璃の男を探して殺せ」
「城崎じゃないんですか?」
「城崎はカムフラージュに決まってんだろ……瑠璃にバレねぇ様に居住地も探れ」
「はっ」
瑠璃は車を走らせると、バックミラーをこまめに確認して運転する。
「出張準備………常にしておいて良かった………」
住んでいる家に帰る事なく、空港に行けばいいと思うだけで安心する。疑わしい間は帰れない為、拓夢の身は安全が保証される迄は、会いには行けないだろう。だからこそ、拓夢が出張で助かった。
会社に着いた瑠璃は、車の中を調べる。GPSが車に付けられていたら困る為隈なく探す。
「…………やっぱり」
車の中に私物はあまり置いていなかったのもあり、GPSは直ぐに見つかると、他の車に取り付けた瑠璃。
「これだけだといいけど………」
そう思いつつ、業務がある為エレベーターに乗った瑠璃。咲田との壁は幼い時から常に作っていた瑠璃は、隠し持っていたスマホを取り出す。拓夢との連絡用を起動し、連絡があったかを確認した。何件も未読のメッセージに拓夢からの心配が伺える。
『大丈夫、昨夜残業でバッテリー切れてたのを今知ったの、こっちは変わりないよ』
と、全メッセージを読み終えて返信すると、1階で止まる。
「おはよう」
「おはようございます」
城崎がエレベーターに数人の社員と乗って来る。
「ニヤついてたが、彼氏か?」
「違いますよ………漫画を呼んで面白いシーンだったんで、笑ってました」
「咲田さんも漫画読むんだな」
「いけませんか?………私だって漫画ぐらい読みますよ」
「意外だな」
瑠璃はスマホの電源を落とし、バックに入れる。咲田からの疑いがある以上、城崎経由で知られる訳にはいかなかった。
「社長、昨日の3件終わりましたので、後程ご確認を」
「…………もう?流石だなぁ」
「確認後に、褒めて下さい………終わらせただけ、と言われたくありませんし、私は明日から出張ですから」
「…………あぁ、本当……急ですまないな」
「そう思われるなら、急な仕事はご勘弁下さい」
昨日の案件を確認した城崎は、満足そうに瑠璃を褒めた。
「褒美は夜な」
「了解しました」
業務は業務で熟し、就業時間を過ぎた。
「終わったか?」
「…………あ、はい……引継ぎのメールで……送ったら終わりです」
「なら、帰るぞ」
「はい」
戸締まりをし、残業する社員達に後は任せ、瑠璃の車に乗り込む城崎。助手席に乗るとセットしていた髪を崩し、ポケットからピアスを出すと、舌に着けた。
「あぁ、クソ真面目は疲れるぜ」
「…………素を隠し過ぎます」
「煩ぇ………お前よりマシだ」
「恐れ入ります………社長のマンションで?」
「…………あぁ、お前に試したいモンあるからな……裕だけに楽しませるかよ」
「……………」
『裕』とは咲田の事だ。
夜道を走る街並み、助手席のシートを倒し、ダッシュボードに足を投げ出している城崎は、おおよそ一般的な雰囲気等は皆無。夜の街に合う風貌に激変し、信号待ちになると交差点で女を引っ掛ける程のタラシだ。
「よぉ、今度俺とセックスしねぇ?」
「きゃははっ!彼女に運転させて何言ってんの?」
「何?3Pでもする?」
「きゃはははは…………」
「いいねぇ、3P」
「社長お戯れはそれ程に………動きますよ」
「あ!連絡先っ!」
「バイバ~イ!」
不服そうに瑠璃を助手席から睨む。
「いい女だったのに」
「一般人は交通ルールは守ります」
「…………ちっ……まぁいいや……今から極上とセックスするからな」
「……………」
城崎のマンションに着くと、部屋に入るなり、城崎は瑠璃を抱き締めた。
「口開けろ………好きだったろ?舌ピアス」
「……………っ!」
城崎が瑠璃の車で着けたピアスの意味はコレだった。プラチナのピアスはひんやりとして、その舌で触れて来られるとゾクゾクする。その感覚が瑠璃の身体を硬直させた。この硬直が瑠璃の悦楽を増長させて、身体が喜びで溶け始める兆候だ。
「…………んふっ……はっ……」
舌ピアスが瑠璃の口内を侵す。上顎に擦り着ける様なキスは、城崎の腕や背にしがみつく程酔わされる。
ジャケットを城崎に脱がされると、合図の様に城崎のシャツのボタンを外していく。城崎の背には入墨が満遍なく描かれていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
42
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる