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しおりを挟む「っ!…………放して!」
「お嬢!来るんだ!」
麗禾は大学の女子トイレ内で攫われた時、スマートフォンのロックは解除したまま攫われていた。意識を失い欠けた矢先に設定機能を指で押してしまった状態でロックが機能し、意識を失ったらしい。
しかし、朔夜が裏門駐車場から出ようとした際に、麗禾を乗せた台車が何かに乗り上げて、麗禾は気付いたのだ。
---れ、連絡を…………か、解除………あ………しまった!
睡眠薬らしき物を嗅がされたが効きが甘かったのかもしれない。それからは意識をハッキリし、スマートフォンを操作している時に、台車からスマートフォンが落ちたのだ。光が入らず顔認証のロックも解除がしにくかったのもあり、丁度解除してしまっていたのだ。
そして、台車から下ろされた時、朔夜を突き飛ばし逃げていた。
スマートフォンは落としてしまい、居場所が分からない。暗くて臭い何処か、としか知らず、やみくもに逃げ惑っても迷うだけなのだが、朔夜が何をするか分からないので、逃げ出したのだ。
「捕まえた………麗禾……青葉会で皆が歓迎してくれる………神崎の組長夫婦じゃ、麗禾は不幸にしかさせない………俺………無戸籍だったけどさ………青葉会のおやっさんが、麗禾連れて来るって言ったら養子にしてくれたんだ…………な?大事にするから………俺と青葉会の跡目を継ごう…………神崎組も潰してやるし、麗禾を怖がらせた俺の親父だって言った奴や怖い思いした黒龍組の奴らも潰すから…………」
「っ!……………な、何を言ってるの………確かに私はお父さんやお母さんに利用されてきたわ!でも………あの時を境にして、以前はそうじゃなかった!…………私を誘拐しようとしたのも、貴方の父親じゃないの!殺されたのも正当防衛だった、て聞いたわ!あれがどれだけ私を極道嫌いにしたか分かる?組員達はそれぞれ私を大切にはしてくれた!私が嫌がってもね!黒龍組だっていい迷惑よ!巻き込まれたんだから!」
やっと思い出して来た事件の事を、話していても震えが止まらなかったが、目の前の朔夜を睨むぐらいの力は出た。
「麗禾は優しいからなぁ…………その優しさで俺だけ包んでよ………」
「私が…………優しい?………馬鹿な事言わないでよ!優しい、て言うのは自分を犠牲にして迄、闇に落ちるのを厭わない、人を信用したくても裏切られる事を怖がって、人を遠ざけたりする臆病な人の事を言うのよ!私は誰かの犠牲にはなりたくないし、人から裏切られる事を怖いなんて思わない!裏切られても信用したい人なら信用し尽くして、信じて貰えるまで傍に居たいわ!嫌だと言われてもね!」
麗禾は自分より晄の方が優しい人だと思っている。乱暴だし冷たい態度を取るが、責任を取れない事は、突き放して迄厳しい言葉を言う。
女に対する言葉で知ったのだ。
性欲は処理したいのに、好きでもない女を抱く事も、身を削るのだと。そんな関係で子供が出来たら子供は不幸だろう。愛情が2人には無いのだから。
だから、麗禾は寂しい人だと晄に言ったのだ。晄の心を傷付けて、麗禾は貪られ、苦しそうな顔をした晄の腕の中で抱かれた。
最初の時とは全く違う抱き方で心は疲弊したから、晄の全てを否定出来ない。
「伏せろ!麗禾!」
「っ!」
背後から、晄の声が響き、その声で咄嗟に反応した麗禾。
「ぐあっ!……………あぁぁっ!………痛ぇぇぇっ!」
「さ、朔夜!」
顔を上げて朔夜を見たら、朔夜の肩に刃物が刺さっていた。
「麗禾!怪我無いか!」
「……………っ!………うっ…………こ、晄さ………」
「麗禾…………良かった………」
「ど、如何して此処が?」
「神崎の頭が駅地下の何処かに居るんじゃないか、とな………目星付けて、手分けして探してた…………」
「お父さんが?」
「……………ちょっと待ってろ………コイツは縛りあげないとな………」
黒龍組の組員達を引き連れていて、朔夜を縛っていく。
「如何するんですか?朔夜を」
「如何するかは………まぁ、神崎の頭の意見が強いだろうな…………俺は消したいが………お前は嫌だろ?」
「……………そう………ですね………」
麗禾は朔夜を恨む気持ちは無いので、消す行為は違うとは思っている。だが、それは思いの強さだ。父が如何するかの意思が強く出る。
朔夜を信じ、麗禾を任せていたのに裏切られたのだから。
「何だよ、消したいなら消すぞ」
「……………警察に捕まっちゃいますよ?私との結婚も遅れちゃって良いんですか?」
「っ!…………そ、それは………」
「……………朔夜の事は父に任せます。青葉会との因縁があるのは父ですし」
晄が、散り散りに探しに出た組員や父達を呼び出し、一先ず麗禾の居る場所にと集まった。
外に大勢で出ては目立って警察が来てしまう。
「麗禾!無事で良かった!」
「…………お父さん……」
予想外に、麗禾はこの後、父に抱き締められて無事を確かめられた。
「お、お父さん?」
「お父さんが、朔夜を宛てがったばかりに………すまん………」
「ううん………良いの………朔夜が居て、私の今があるのには変わりないし………朔夜が明るく接してくれたから、元気貰えてたのもあって………あの嗜好には…………嫌だったけど……」
「母さんも心配していた…………一旦、分かれて出て落ち合おう…………大学に来てる」
「うん………分かった」
麗禾は晄と数人の黒龍組の組員と、大学に到着すると、麗子が涙目で出迎えてくれたのだった。
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