暗闇の麗しき世界へ【完結】

Lynx🐈‍⬛

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 麗子にもハグされ、戸惑っていた麗禾。
 その光景に母娘間の今迄の扱い方は何だったのか、と不思議そうに見ていた組員達も多かった。そして勿論、晄や榊も複雑な顔を見せていた。

「麗禾~!怖かったろ?2度も誘拐なんて目に遭って…………」
「お、お母さん迄…………な、何なの?こんな抱き締める事な………」
「子供の頃、あんな怖い思いして、泣きやまずに暴れたアンタを思い出したら………心配だってするでしょ!アンタは私の娘だよ!」

 要は、誘拐で怖い思いして、その事で麗禾の記憶が消えたので、2度と誘拐事件に巻き込まれ無い様に、監視は常にする様になり、度を越して自分の様に強い精神力を育て様とし、姿や嗜好を娘に真似させていた、というらしい。暴力に関しては、麗子はその様に育てられたとの事で、自分の分身に麗禾をしたかったのだという。
 子供だとしても、1人の人間で個性も性格も違うのだから、娘が母に反発するのは当たり前で干渉が増えていった様だ。

「ぶ、不器用な家族だな………」
「……………だったみたいですね」

 麗禾をずっと抱き締めて離さない麗子を見つめながら、晄は呆れていた。

「中に入ってくれ、黒龍組の」
「あ、はい」

 もう、大学は閉まっていて、理事である麗禾の父が解錠し校舎の中に入れてくれた。

「神崎の頭、あの馬鹿は如何するつもりなんです」
「……………青葉に死体にして贈り付ける……落とし前としてな………アイツが青葉会会長の甥だったとは俺も知らなかったよ………」
「如何いう経緯でアイツを神崎に?」
「駅地下………という場所は、戸籍を与えられてない子供達が集まる場所なんだ………ストリートチルドレンとして朔夜は其処で育った………本人曰く、父親が死に生活苦になって、母親と隠れ住んだそうだ。這い上がろうと一攫千金を目的に格闘家を目指していたが、その頃に目を付けていた」

 暴走族に入ってしまった朔夜は、それから少年院に入ったので、麗禾の父が引き取ったのだと説明する。

「暴走族に居た時期から面識は持っていたんだが、神崎組に入ってからもその頃とは変わらなかったんで、歳も近く、極道もんには見えにくい奴を麗禾の護衛に付けた………しかし、頭は弱いからな………麗禾と跡目を継いで貰おうとは思ってもいなかったし、黒龍との約束もあったんで、朔夜の申し出は断り続けた」
「申し出?お父さん何、それ」
「自分が神崎組を守るから、麗禾をくれ、とな」
「……………え……ヤダ……」
「麗禾は朔夜にそんな感情無かったもんね」
「うん、友達みたいに思ってたから」

 あからさまに拒否した麗禾だが、盗聴器やカメラが出てくる前なら、そこ迄拒否はしなかっただろう。

「それに、変態じゃないの………盗聴器やカメラをこの娘の部屋に仕込んで……」
「姐さん、俺は貴方達両親が仕掛けた物だと、疑ってましたよ?」

 そう、麗禾も疑っていた。監視下に置きたい両親は、全て知りたいのだろう、と。

「誰が娘の裸見たいのよ。盗聴器なら分かんないけど…………麗禾に男の影が出て来たら仕掛けたかもね」
「お、お母さん………」

 その1歩手前だったのだと知ると、その前に見つかって良かった、と思える。

「ですが、麗禾はモテますよ………言い寄って来た男も居ただろ?」
「……………それは……まぁ……はい……」
「何それ!お母さん知らないわよ!」
「恐らくですが、朔夜が引き離してたんでしょうね………盗撮する趣味ありましたから」
「気持ち悪っ………アンタ!早く朔夜処理しちゃって!」

 自分はやって良いけど、他人にされるのはとことん嫌な麗子は、益々麗禾に干渉しそうだ。
 
「お父さん、朔夜は如何やって、神崎の家から出られたの?一時期、捕まえてたでしょう?」
「神崎の家の座敷牢から畳を引き剥がして逃げられた………構造を把握されていた……隠し通路としても使えるからな」
「え?それ私も知らないよ?」
「頭が悪い、と思っていたのが仇となったんだ………そもそも、朔夜が育ったのは駅地下の廃墟になった空き店舗や地下通路を拠点として、迷路になっている場所だ………それに慣れているから、道を覚えるのが得意だったんだろう………大学の侵入経路も然り」

 恩を仇で返した朔夜だが、何故自分が神崎組と敵対していた青葉会ではなく神崎組に入ったのかが分からなかった。

「朔夜は出生の事、出自の事を如何して知ったとか知ってますか」
「……………そこ迄はな………始めから知っていて、言わなかったとは朔夜の性格じゃあり得んし…………隠し事も下手だったしな」
「そうよね、だから麗禾と晄さんの結婚話も朔夜には言わなかったぐらいだし」
「神崎組に入ってから知った、とか?」

 朔夜本人がこの場には居ないので、憶測でしか無い。

「それなら納得出来るな………」
「私、気になる事があるんだけど、私を誘拐した人は青葉会の会長の弟で、その人が朔夜のお父さんだった、て言ってた……それで何故戸籍無い、てなるの?………出生届を出せば戸籍持てるでしょ?」
「認知されなかった立場、とか」
「朔夜は私を青葉会に連れて行ったら、戸籍を持てる、て言ってた」
「まだ、青葉会会長の養子では無かったのか」
「朔夜が言うには………」
「騙されてたのかもな、アイツも」

 結局の所、青葉会が全ての元凶ではある、という事以上、もう答えは出なかった。
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