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現在
ロベルトの暴力
しおりを挟むロゼッタはマキシマスの屋敷にはその日行かなかった。待っていたと思う。でも甘える訳にはいかない、と拒否をする。私室に戻るロゼッタはロベルトに会いに行った。
ロベルトと寝室を分けたのは、子供が出来ないと言われて、ロベルトが娼館通いを始めてからだ。
「ロベルトはまだ部屋に居る? 」
「はい、出ておられません。」
「…………何かあったら駆け付けてくれる?」
「勿論です」
兵に声を掛け、ロベルトの私室に入る。元は、ロゼッタと共有した部屋だ。この部屋にはいい思い出は全くない。陵辱と暴行が繰り返された部屋だ。
「ロベルト、入るわ」
ノックするのも面倒で、一声掛けて扉を開ける。
「…………何だ?こんな夜更けに………抱かれに来たか?」
「誰が貴方なんかと……私が来た理由は、貴方を屋敷から出てってもらうわ」
「は?………何言ってやがる」
「聞こえなかった?貴方はこの屋敷から出てけ、と言ったの」
ロベルトはロゼッタを嘲笑う。
「遺言状を忘れたか、ロゼッタ!子供を産むのがお前の父親の遺言じゃないか!」
「サブリナが妊娠したもの……後は私がサブリナを守っていくわ………だから貴方は実家に変えるなりして頂戴。領土に留まるのは許さないわ………裁判で離婚は成立させてみせる………私は子供が産めなくてもいいの……サブリナの子を領主になるべく育てていくわ。だから安心して頂戴」
「ふざけるな!お前を領主にしてやったのは俺じゃねぇか!婿が見つからねぇお前に、俺が名乗り出てやったからだ!」
「…………私は頼んでません………それに、父が貴方を屋敷に連れ込んで、私の意思も聞かず婚約者だ、と言っただけ……私は貴方に愛情も無いわ」
「俺は出ていかないからな!離婚もしない!」
頑なロベルトにウンザリしてしまう。
「分かったわ、では貴方の実家に、私が立て替えた女達の中絶手術費用の請求書を送ります」
「!!」
「いいわよね、ロベルト…………私は貴方から受けた暴力の治療費は鵜呑みにしてあげる。裁判沙汰になるのが嫌なら、離婚届に署名して出て行って!出なければ、私は貴方の実家に請求書と、まだ居座るなら慰謝料も要求するわ!」
バチンッ!!
「ロゼッタ様!!」
「許さねぇぞ!ロゼッタ!!」
ロゼッタはロベルトにビンタされる。兵の前だろうが、ロベルトはお構い無しだった。
「兵達の前で暴力奮ったわね、ロベルト………貴方達、証言を頼んだら言ってくれる?」
「勿論です、ロゼッタ様」
「…………あ………す、すまない……ロゼッタ……俺はお前と別れたくないんだ……愛しているんだ…………お前がアイツに逃げるから……」
「…………アイツ?誰かしら?……私にその頃の記憶は無いわ、この人は何を言っているの?分かる?貴方達」
「分かりませんが………」
「ですって………ロベルト、また会う時が来たら、裁判の場かしら?……………屋敷から追い出して」
「畏まりました」
「あ、そうそう………夫の役目、ご苦労様でした。あと貴方の物は全て処分しますから、必要であればご実家に送っておきますね」
ロベルトは兵達にまたも引き摺られながら、屋敷から追い出された。それだけでロゼッタの心が軽くなる。ロゼッタはその場に座り込む。
「…………はぁ……」
「大丈夫か?ロゼッタ」
「!!…………マキシマス………さ……ま……」
「話があるんだが……今日も来てもらおうか……放っておくと、いつまでも君は仕事しそうだ」
「…………でも、誰かに一声掛けて……」
「ロゼッタ様!大丈夫でござ………貴方様は………」
ロベルトを追い出した騒ぎにイーサンや侍従達もわらわらと駆け付けて来た。
「夜分に失礼……今夜、ロゼッタを連れて行く………話があるんでね……朝には帰す」
「ロゼッタ様………」
「………私もマキシマス様に話があるから行ってくるわ」
「…………分かりました、ですがロゼッタ様貴女様はまだ既婚者…………」
「分かっているわ………そんな事にはならないから」
「……………行こうか、ロゼッタ」
「えぇ………少し行ってくるわね」
マキシマスはロゼッタに手を添え、立ち上がらせると、空間を歪ませ転移させた。
「ロゼッタ、やはりサブリナは危険だ」
マキシマスの屋敷に着くなり、第一声がサブリナを拒絶するマキシマス。
「如何してですか?何もおかしな事はなかった筈です!」
「………君がサブリナから少し離れた時があっただろう?食事を運ばせようとした時だ」
サブリナが何をしたというのか、さっぱり分からないロゼッタ。マキシマスはロゼッタの嵌めるブレスレットから音を出す。
『……………やっと……実が熟した……お姉様……ロベルトと離婚なんてさせないわ……』
サブリナの声がブレスレットから発せられた。
「サブリナ?」
「心の病で精神年齢が5歳ぐらいの女が発する言葉だと思うか?ロゼッタとの会話はお姉ちゃんこれはお姉様で、悪意の感じる声色だ」
「……………嘘よ……あの子なら私の幸せを望む筈……」
「幸せを望むなら、何故離婚させない、と言うんだ?ロゼッタがロベルトを嫌っているのは、サブリナだけが知っていた事ではない。屋敷に居る全ての侍従達も知っていた事実だ」
ロゼッタは手で顔を覆う。泣く事を忘れていたのに、先程の涙よりサブリナのこの言葉が悲しくて一気にあふれ出した涙。こればかりはマキシマスもロゼッタを抱き締める。
「ロゼッタ………俺が居る……俺に甘えろ」
「………わあああぁっ…………」
ロゼッタもその優しさに縋る様に、マキシマスの背中に腕を回した。
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