領主は私です、婿の貴方は何様ですか?【完結】

Lynx🐈‍⬛

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過去

街中デート

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 マキシマスに出会った数日後、ロゼッタは漁港に来ていた。漁獲量や、旬の魚の品質等の変更があれば、それだけで領土内の収入が変わり、税収も変える必要も出てくる場合があるからだ。

「今年の漁獲量はどう?」
「今年もいい獲れ具合ですよ、お嬢様」
「良かったわ、美味しい魚がまた食べれるのね」
「ちょっと、そこの旦那!漁師以外、ここは立入禁止だよ!」
「………何かしら?………あら、あの方は……」

 粗方、漁港での仕事も終わっていたロゼッタは、その侵入者に近寄っていく。

「あれ、君はサブリナの……」
「マキシマス様、ごきげんよう……ここは市場ではありませんよ?漁師以外立入禁止にしている区画なので、魚をお求めなら市場にご案内します」
「え?ここは入っては駄目だったのか………皆さん、申し訳ない」
「いろいろバタつく場所ですから……私は父の仕事の手伝いで入る事は許可されてますけど」
「そういえば、君は次期領主だったね」
「はい………もっと皆が住みやすい街にしていきたい、と思ってます」
「大丈夫さ!お嬢様が領主になりゃ、この街もまだまだ安泰さ!」
「あとは、良き伴侶を見つけておくれ!」
「間違いない!」

 漁師達がロゼッタを慕っている事がよく分かる言葉が飛び交う。

「慕われてるね」
「私等まだまだです。女に領主等務まるのか、とよく言われてます」
「努力が報われているから、今の言葉が出てるんじゃないか?」
「…………そうだといいんですが………市場にご案内しますね、何かお探しでした?」
「美味い白身魚が食べたくてね」
「侍従の方達は連れて来られたのではないのです?公爵様直々にお買い物なんて」
「…………あぁ、別荘の方は事足りてるんだ。王都の本邸へ差し入れさ……俺は転移魔法が使えるから買った後、王都へ持って行くんだよ」
「…………凄いですよね、魔法が使えるなんて……王宮魔道士様の魔法は高等技術と聞きました………私等さっぱり魔法が使えなかったので羨ましいです」

 柔らかい笑顔で素直な気持ちで話すロゼッタ。その表情を見ていたマキシマスも自然に笑顔になった。

「君は、サブリナとは全く違う性格なんだな」
「え?似てませんか?………私もサブリナもとても頑固で意地っ張りですけど」
「…………プッ………確かにサブリナは頑固で意地っ張りだな……俺が言ったのは、観察力や洞察力かな………サブリナには見られないから………君は、あの屋敷で俺を帰らせてくれただろう?サブリナの我儘を懐柔し、俺の表情を汲み取ってくれた。漁港の漁師達も君を認めているのは、君が彼らに寄り添う姿勢があるのが分かるからね……慕われてなければあんな言葉は出ないさ」
「サブリナは違うんですか?私の前では、私を立ててくれる控えめな子なので」
「…………へぇ……そういう感じではなかったね……そうか………やはりサブリナとは付き合えないな………」
「…………何かおっしゃいました?」
「あ、いや………こっちの話さ」

 市場で魚の購入を手伝うロゼッタ。美味しい魚の見分け方等マキシマスに教える等おこがましいとは思いつつ、マキシマスは楽しそうにロゼッタの説明を聞いていた。

「お嬢様、其方の旦那はあんたのいい人かい?」
「違うわよ、王都から妹がお世話になった方がこの街に遊びに来ているの」
「サブリナお嬢様は最近見かけないけどお元気かい?」
「サブリナは先日王都から帰って来たわ。また市場に来るかもしれないから、その時は宜しくね」
「綺麗になったろうねぇ、サブリナ様」
「えぇ、見違えたわ、私も」

 何処に行っても、ロゼッタに声を掛かる民衆達。愛されているロゼッタにマキシマスは好感を持てた。

「マキシマス様、まだお時間ありますか?」
「あぁ、あるが何処かに案内してくれるのか?」
「今の時間干潮なんです。海に降りてみませんか?」
「海に降りる?」
「貝が採れるんですよ、今旬ではないのでオススメはしませんけど、お酒で蒸し焼きすると、美味しいんです…………あ、この貝なんか特に………砂を抜いてからお酒で蒸し焼きすると、貝が開くのでそれが食べれる合図です」
「貝が食べれるのか………」
「なかなか、新鮮なお魚や貝を王都に運べないんですよね……運べたらもっと美味しく食べれるんでしょうけど」

 手やドレスが汚れても構わず、貝を10個程採るロゼッタ。そして、マキシマスが買った魚と一緒の袋に入れる。

「よく貝同士で表面を擦り合わせて、砂を抜いて下さい、と料理人に伝えて下さいね、マキシマス様」
「君のドレスが汚れてしまったな………すまない」
「気にしないで下さい、洗えば落ちますから………汚れるのを嫌がって美味しい物を食べれないの、て損じゃありません?…………人に対してもそうだったらいいんですけど……」
「何だ、君も苦手な人が居るのか………クスクス……」
「…………仕方ありません……領主にならなければなりませんし、サブリナを自由にさせてあげたいから………好きな事を好きなだけ………あの子も我慢してきていたと思うから……」
「…………優しいな、君は」
「妹にだけですよ?………侍従にはガミガミ怒ったりしますから」

 思っていた以上に時間を掛けてしまった様で、干潮時間が終わりかかってしまった。慌てる様に、海から上がるロゼッタとマキシマス。

「そろそろ行かなければ……魚が悪くなる」
「そうでしたね、お引き留めして申し訳ありませんでした。」
「いや、俺こそ楽しかったよ………送ってあげたいが、サブリナに会いたくないんだ。すまないが一人で大丈夫か?」
「はい、ここから屋敷は近いですし………あの、サブリナに会いたくない、てどういう意味でしょう?」
「…………いずれ分かる……今は会う気になれない………ロゼッタ……また君に会いたいんだが明日もここで会えないか?」
「…………はい……大丈夫です……」

 この時、ロゼッタは何故会えると言ったのか、思わず出た言葉に鼓動が早まった。

「良かった………じゃあ、俺は行く……また明日」

 空間が歪み、マキシマスは魔法で消える。初めて見た魔法に夢なのでは、と思ってしまったロゼッタだった。
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