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過去
疑惑
しおりを挟む屋敷に戻り、父の書斎へ行くロゼッタ。鍵が掛かっていないのは父がよく忘れるからだと思い、書斎の扉をノックせずに入ったロゼッタ。父はこの日視察で別の領土へ行っているので、書斎には誰も居ないと思っていた。しかし、ロベルトが父の書斎を漁っている。机の上も、床にも書類が散らばっている。
「ロベルト様、ここは父の書斎。貴方が入れる部屋ではありません」
「いいじゃないか、ロゼッタ。いずれは領主になるんだ、義父上がどの様に領主として働いているかを見学したくてね」
「留守中に見学も何もありません、今すぐ出て下さい。それに貴方が領主になるのではありません。私が次期領主です」
「冷たい事を言うなよ、ロゼッタ……もう直ぐ夫婦になる仲じゃないか……な?」
ロベルトは漁るのを止め、ロゼッタの側に来ると、腰に手を回す。
「!!………止めて下さい!まだ夫婦ではありません!!」
ロベルトの手を払い除けるロゼッタ。
「海水の匂いがするな……海に行っていたのか?」
「漁港に用事がありましたから」
「ふ~ん………海臭くて堪らんな………この街は………臭い臭い………たまには肉の塊が食いたいぜ」
「………では、この街には住めませんね……父が貴方に何を言って、婚約者にしたか分かりませんが、私は海が嫌いな方に、この街に住むのは無理だと思っていますので、いつでも婚約破棄して頂いてもいいんですが?」
「それは出来ないんだよ、ロゼッタ………義父上は俺をお気に入りだからな………それにお前は身持ちが硬いが、いい女だ。浮気もしないだろうしな………貞淑な女を妻にすれば、俺は動きやすい………更なる幸運なのは跡継ぎが女だって事だ……俺は次男だからな跡継ぎが女の貴族を狙ってた……俺の所の領土にもお前達美人姉妹は評判が良かったし、そんな美味い環境、俺には好都合なのさ………早く結婚式を早めようか、と話もしてある……サブリナはあのなよなよした男と結婚したいらしいから、俺から義父上にお願いさせて貰ったさ!順番を先越されたくないだろ?」
ロベルトの魂胆が一気に見えた。婿養子に入り、好き勝手にされる、とロゼッタは恐怖さえ感じる。如何しても苦手なのが変わらないロベルトの真意が見え隠れしていたのはこういう訳だったのか、と。
「………わ、私はまだ結婚は考えてません!」
「サブリナが先に結婚したら、お前は肩身狭いだろうなぁ……クククッ……だから、俺が貰ってやる、て言ってんじゃねぇか」
「貴方は私と結婚して何がしたいの?」
もう言葉使いになんて気にしていられない。睨むロゼッタに気にする素振りもないロベルト。むしろ面白そうに見ている。
「そんな顔するとはな……面白いじゃねえか………そんな女を組み敷くのが楽しみだ」
「………組み敷く………な、なんて事を!」
「決まってんじゃねぇか、どうせお前処女だろ?その歳で処女で美人……めちゃくちゃにしてやるよ………お前を俺の物にして、領主になって好き放題遊べるなんて最高じゃねぇか」
「だから、貴方は領主じゃないわ!権限も与えない!書斎から出てって!」
「へぃへぃ、今はお前の言う通りにしてやるさ、まだ妻じゃねぇしな」
身体が震える。触られた腰が気持ち悪い。ロベルトが出て行った書斎で何を物色していたのか、慌てて確認しようとするが、手が震えて出来ない。
「お、お願い………動いて………私の手……」
ロゼッタが楽しかったマキシマスとの時間も余韻にも浸れず、ただひたすらに書斎に篭った。夕飯の時間になり、侍女が呼びに来ても、ロベルトがダイニングで食事をしていると思ったら怖くて行けなかった。
「イーサン………お願いがあるの」
翌朝、ロゼッタは執事にお願い事をする。
「如何されました?お嬢様」
「お願い……私の部屋にも鍵付きの扉にして頂戴、今すぐ」
「お嬢様?」
「…………私、ロベルトが怖いの………結婚しなければならない事は分かっているわ……でも、お父様に何としても白紙にしてもらいたいの………結婚前に、私………襲われるかもしれない………」
「…………ロベルト様がその様な事をするとは思えませんが………」
「お願い!!本当に怖いのよ!!あの人が!!」
切羽詰まるロゼッタの申出にただならぬ気迫を感じたイーサンは、直ぐに扉を鍵付きの物に変えるように、指示を出した。
「ロゼッタお嬢様、直ちに……」
「……………ありがとう………頼むわね……」
そのロゼッタの焦りに、影でサブリナは見ていた。
「お姉様には、領主になって貰わなきゃならないのよ……ここ迄頑張って来た私の努力を水の泡になんてさせないわ………ロベルト、て言ったっけ………あの婚約者になんとしても頑張って貰わなきゃ………」
サブリナは腕を組み、案を考えたのだった。
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