領主は私です、婿の貴方は何様ですか?【完結】

Lynx🐈‍⬛

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過去

謹慎からの脱出

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 屋敷の自室に謹慎させられたロゼッタ。マキシマスの事を言えず、ロベルトとの婚約破棄にも出来なかった事が悔しかった。

「サブリナの事迄言わなければならないもの…………お父様はサブリナとマキシマスが婚約していると思っているから………何故知られたの?…………マキシマス……貴方に知らせたい……」

 コンコン。

「…………はい」
『私、お姉様』
「サブリナ?…………どうぞ」
「お姉様も、やっと男に目覚めたの?」
「…………サブリナ、言い方が下品だわ……やめなさい」

 サブリナはロゼッタの部屋には入らず、入り口で顔だけ出す。何故入らないのかは分からないが、ロゼッタはサブリナへの後ろめたさから、自室の入り口迄歩く。

「何故、そこに居るの?入ってきたらいいじゃない」
「私はでいいの………お姉様の部屋には入らないわ、入り口で話しましょ」
「…………別にいいけど、私はお父様から謹慎を命じられているんだから、少しだけよ?」
「勿論よ…………そこだと大きな声出さなきゃならないじゃない、もう少しこっちに来てくれない?内緒の話なの」
「内緒の話?」
「そう…………内緒の話」
「!!」

 入り口迄来ると、サブリナに腕を引っ張られ、部屋から出される。

「大変!!お父様!!お姉様が脱走するわ!!」
「サブリナ!!」

 ドンッ!!

「ぐっ!!」
「よぉ、ロゼッタ」

 逃げると思わせ、尚且つ捕まえた、と思わせようとしているのか、ロベルトに捕まえられてしまったロゼッタ。ロゼッタは大人しく部屋に居たのに、サブリナに部屋から出され、ロベルトに押さえつけられている。状況からすれば、誰が見てもロゼッタが逃げると思われてしまう。

 バタバタバタバタ………。

「ロゼッタ!!」
「……………お……と………」
「お父様!お姉様が逃げようとしたの!」
「義父上、ご安心を。ロゼッタを逃げないようにしましたから」

 声を出しにくい様にロベルトにされてしまい、違うと言えないロゼッタを見た父。

「…………駆け落ちでもする気だったか、ロゼッタ」
「…………ち………う……」
「お許し下さい、義父上。僕のロゼッタへの好意が彼女には重かったかもしれません。僕はロゼッタを困らせ、別の男に走らせる様な事が無いよう、言い聞かせます」
「お父様、早くお姉様とロベルト様と結婚させましょ?…………でないと私もマキシマス様と結婚出来ないわ」
「……そうだな、早々に式を予定しよう。領主としてまだまだ未熟なロゼッタにはまだ早いと思っていたが、他の男の存在があるなら、諦めさせねばならんからな………ロベルト……結婚式前に子供が出来ても構わん………ロゼッタを繋ぎとめておいてくれよ」
「………はい、義父上」
「…………ま……っ…………」

 父はロゼッタの苦しそうな表情を見ても、ロゼッタへの怒りから気にも止めず、去って行く。

「ふふふ………良かったわね、お姉様……やっと結婚出来るわね」
「…………サ……リ…」
「離してあげたら?もう……死んじゃうわよ?」
「あぁ、忘れてた………ほらよ、ロゼッタ部屋に入ってろよ。後から来てやるからよ、身体清めて待ってな」

 強引にまた部屋に押し込まれたロゼッタ。咳が止まらず、それでもサブリナとロベルトを引き止めようと声を出す。

「サブリナっ!………貴女………マキシマス……様に振られたじゃ……ない!!」
「…………だから?お姉様に関係ないわよね?………マキシマスにも恨みあるのよ、私……また違う男探す前に、お姉様が結婚してくれないと、自由になれないでしょ?だから、早く子供作ってお父様を安心させてあげてよ………ロベルトがお姉様がいい、て言ってるんだから、ロベルトの願い聞き入れてあげたら?ふふふ………」
「俺は義父上に頼まれてる事があるんでな、子作りは夜迄まってろよ?いい子のロゼッタ」

 大人しくしていたのに、大人しくしていたら侵されてしまう。想いが通じ合ったマキシマスとキスが出来たのは昨日だ。

「マキシマス………助けて………マキシマス……」

 呼んだ所でマキシマスが来るとは思えない。今日も約束の時間が近付くが、今のロゼッタの状況が伝えられない上に、マキシマスを待たせてしまう。
 ロゼッタは窓を開け出れる事が出来るのか確認する。窓から出る事等考えた事も無かった為、部屋の窓全てを確認した。

「…………いい子だって言うなら、なんて辞めるわ………この木を伝って降りれそう…………ゴクッ」

 ドレスを捲り、枝を掴み、木の幹から降りるイメージトレーニングをすると、折れなさそうな太い枝の先に手を伸ばす。

「………もう……ちょっ………と!」

 掴むと、窓の縁から落ちるように反動を付け、空いた片手も枝に捕まり、少しずつ幹の方へ移動した。

「…………な、何年振りかしら………こんなお転婆………」

 幹にしがみつくと、またゆっくり降りると、ドレスは木の破片でボロボロだ。だが、そんな事も気にせず兵に見つけられない様に海岸へ走った。
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