19 / 49
過去
謹慎からの脱出
しおりを挟む屋敷の自室に謹慎させられたロゼッタ。マキシマスの事を言えず、ロベルトとの婚約破棄にも出来なかった事が悔しかった。
「サブリナの事迄言わなければならないもの…………お父様はサブリナとマキシマスが婚約していると思っているから………何故知られたの?…………マキシマス……貴方に知らせたい……」
コンコン。
「…………はい」
『私、お姉様』
「サブリナ?…………どうぞ」
「お姉様も、やっと男に目覚めたの?」
「…………サブリナ、言い方が下品だわ……やめなさい」
サブリナはロゼッタの部屋には入らず、入り口で顔だけ出す。何故入らないのかは分からないが、ロゼッタはサブリナへの後ろめたさから、自室の入り口迄歩く。
「何故、そこに居るの?入ってきたらいいじゃない」
「私はココでいいの………お姉様の部屋には入らないわ、入り口で話しましょ」
「…………別にいいけど、私はお父様から謹慎を命じられているんだから、少しだけよ?」
「勿論よ…………そこだと大きな声出さなきゃならないじゃない、もう少しこっちに来てくれない?内緒の話なの」
「内緒の話?」
「そう…………内緒の話」
「!!」
入り口迄来ると、サブリナに腕を引っ張られ、部屋から出される。
「大変!!お父様!!お姉様が脱走するわ!!」
「サブリナ!!」
ドンッ!!
「ぐっ!!」
「よぉ、ロゼッタ」
逃げると思わせ、尚且つ捕まえた、と思わせようとしているのか、ロベルトに捕まえられてしまったロゼッタ。ロゼッタは大人しく部屋に居たのに、サブリナに部屋から出され、ロベルトに押さえつけられている。状況からすれば、誰が見てもロゼッタが逃げると思われてしまう。
バタバタバタバタ………。
「ロゼッタ!!」
「……………お……と………」
「お父様!お姉様が逃げようとしたの!」
「義父上、ご安心を。ロゼッタを逃げないようにしましたから」
声を出しにくい様にロベルトにされてしまい、違うと言えないロゼッタを見た父。
「…………駆け落ちでもする気だったか、ロゼッタ」
「…………ち………う……」
「お許し下さい、義父上。僕のロゼッタへの好意が彼女には重かったかもしれません。僕はロゼッタを困らせ、別の男に走らせる様な事が無いよう、言い聞かせます」
「お父様、早くお姉様とロベルト様と結婚させましょ?…………でないと私もマキシマス様と結婚出来ないわ」
「……そうだな、早々に式を予定しよう。領主としてまだまだ未熟なロゼッタにはまだ早いと思っていたが、他の男の存在があるなら、諦めさせねばならんからな………ロベルト……結婚式前に子供が出来ても構わん………ロゼッタを繋ぎとめておいてくれよ」
「………はい、義父上」
「…………ま……っ…………」
父はロゼッタの苦しそうな表情を見ても、ロゼッタへの怒りから気にも止めず、去って行く。
「ふふふ………良かったわね、お姉様……やっと結婚出来るわね」
「…………サ……リ…」
「離してあげたら?もう……死んじゃうわよ?」
「あぁ、忘れてた………ほらよ、ロゼッタ部屋に入ってろよ。後から来てやるからよ、身体清めて待ってな」
強引にまた部屋に押し込まれたロゼッタ。咳が止まらず、それでもサブリナとロベルトを引き止めようと声を出す。
「サブリナっ!………貴女………マキシマス……様に振られたじゃ……ない!!」
「…………だから?お姉様に関係ないわよね?………マキシマスにも恨みあるのよ、私……また違う男探す前に、お姉様が結婚してくれないと、自由になれないでしょ?だから、早く子供作ってお父様を安心させてあげてよ………ロベルトがお姉様がいい、て言ってるんだから、ロベルトの願い聞き入れてあげたら?ふふふ………」
「俺は義父上に頼まれてる事があるんでな、子作りは夜迄まってろよ?いい子のロゼッタ」
大人しくしていたのに、大人しくしていたら侵されてしまう。想いが通じ合ったマキシマスとキスが出来たのは昨日だ。
「マキシマス………助けて………マキシマス……」
呼んだ所でマキシマスが来るとは思えない。今日も約束の時間が近付くが、今のロゼッタの状況が伝えられない上に、マキシマスを待たせてしまう。
ロゼッタは窓を開け出れる事が出来るのか確認する。窓から出る事等考えた事も無かった為、部屋の窓全てを確認した。
「…………いい子だって言うなら、いい子なんて辞めるわ………この木を伝って降りれそう…………ゴクッ」
ドレスを捲り、枝を掴み、木の幹から降りるイメージトレーニングをすると、折れなさそうな太い枝の先に手を伸ばす。
「………もう……ちょっ………と!」
掴むと、窓の縁から落ちるように反動を付け、空いた片手も枝に捕まり、少しずつ幹の方へ移動した。
「…………な、何年振りかしら………こんなお転婆………」
幹にしがみつくと、またゆっくり降りると、ドレスは木の破片でボロボロだ。だが、そんな事も気にせず兵に見つけられない様に海岸へ走った。
2
あなたにおすすめの小説
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
お姉様優先な我が家は、このままでは破産です
編端みどり
恋愛
我が家では、なんでも姉が優先。 経費を全て公開しないといけない国で良かったわ。なんとか体裁を保てる予算をわたくしにも回して貰える。
だけどお姉様、どうしてそんな地雷男を選ぶんですか?! 結婚前から愛人ですって?!
愛人の予算もうちが出すのよ?! わかってる?! このままでは更にわたくしの予算は減ってしまうわ。そもそも愛人5人いる男と同居なんて無理!
姉の結婚までにこの家から逃げたい!
相談した親友にセッティングされた辺境伯とのお見合いは、理想の殿方との出会いだった。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます
久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」
大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。
彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。
しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。
失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。
彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。
「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。
蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。
地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。
そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。
これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。
数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。
『有能すぎる王太子秘書官、馬鹿がいいと言われ婚約破棄されましたが、国を賢者にして去ります』
しおしお
恋愛
王太子の秘書官として、陰で国政を支えてきたアヴェンタドール。
どれほど杜撰な政策案でも整え、形にし、成果へ導いてきたのは彼女だった。
しかし王太子エリシオンは、その功績に気づくことなく、
「女は馬鹿なくらいがいい」
という傲慢な理由で婚約破棄を言い渡す。
出しゃばりすぎる女は、妃に相応しくない――
そう断じられ、王宮から追い出された彼女を待っていたのは、
さらに危険な第二王子の婚約話と、国家を揺るがす陰謀だった。
王太子は無能さを露呈し、
第二王子は野心のために手段を選ばない。
そして隣国と帝国の影が、静かに国を包囲していく。
ならば――
関わらないために、関わるしかない。
アヴェンタドールは王国を救うため、
政治の最前線に立つことを選ぶ。
だがそれは、権力を欲したからではない。
国を“賢く”して、
自分がいなくても回るようにするため。
有能すぎたがゆえに切り捨てられた一人の女性が、
ざまぁの先で選んだのは、復讐でも栄光でもない、
静かな勝利だった。
---
王様の恥かきっ娘
青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。
本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。
孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます
物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります
これもショートショートで書く予定です。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる