20 / 49
過去
マキシマスの屋敷へ避難
しおりを挟む「はぁはぁはぁ…………何処?………まだ来てない?」
人に見られない様に隠れる場所を探し、マキシマスが来るのを待つロゼッタ。すると、空間が歪み、マキシマスが姿を現した。
「マキシマス!!」
「…………ロゼッタ!!如何したんだ!その姿!」
マキシマスがロゼッタの姿に仰天した。
「………知られたの…………私が結婚間近だと勘違いされ、屋敷に祝いの品を持ち込んだ民衆から、父に………ロベルトと結婚する、て民衆に思われて………私がずっとロベルトとの婚約を破棄したい、て言っていたから、父に相手は誰だ、て………私、言えなかったから……謹慎を命じられたんだけど、ロベルトとの結婚を急ぐ、と」
「………やはり、俺が行けば良かったんだ………」
「私…………屋敷帰ったら、ロベルトに侵されちゃう……もう、子供作れ、て父に言われてしまった…………」
「……………ロゼッタ………」
マキシマスは服が汚れるにも関わらず、ロゼッタを強く抱き締めた。するとまた空間を歪ませる。気が付けばマキシマスの屋敷に居たロゼッタ。
「イヴァンカ!イヴァンカは居るか!?」
「…………は、はい!………ま、まぁ……ロゼッタ様、如何されたんですか!?」
「イヴァンカ、ロゼッタの着替えを………俺はちょっとまた出掛ける。ロゼッタを一人にするな、いいな」
「は、はい!」
切羽詰まる様な表情で緊張感を漂わすマキシマスは、服に付いた汚れを魔法で取り払うと、また転移魔法を使った。
「ロゼッタ、君の屋敷に行ってくる」
「…………え?……マキシマス?」
追い掛けようと手を伸ばしたが、イヴァンカに止められた。
「危のうございます!ロゼッタ様!」
「………で、でも………」
「マキシマス様にお任なさいませ」
「…………」
消えゆく空間の歪みの中のマキシマスは微笑みを向ける。イヴァンカに肩を掴まれ、動きを止めたロゼッタではあるが、心配だった。
「さぁ、お着替えを……マキシマス様が数着ですが、ロゼッタ様へお贈りしたいと、ドレスを作らせておりました。先日出来たので良かったです。美しいピンクゴールドの髪に合うドレスですよ、着飾ってマキシマス様のお帰りをお待ち下さい」
「…………イヴァンカは、何か聞いているの?マキシマス様から」
「暫くこちらに滞在していれば、そりゃ領主様の美人姉妹のお噂は何かと入りますよ……それにサブリナ様とお付き合いしていたマキシマス様が、ロゼッタ様に好意を寄せられたのですから、興味無い訳はありません。ここだけの話ですが、マキシマス様のお父様にちょくちょく聞かれてまして………あ、反対のお声は今の所ありませんからね!」
「…………身持ちの軽い女だと思われてるでしょうね……婚約者が居る身で、サブリナの恋人だったマキシマス様に恋する私の事等……」
「………私は、ロゼッタ様をそうは見ておりませんよ?」
イヴァンカに連れられ、部屋に入ると他の侍女達がロゼッタ用にドレスを並べていた。
「………高価過ぎるわ…………私は質素でいいの………」
「まぁまぁ、今日ぐらいは着飾って下さいませ」
「…………今日だけよ?」
着替えて待つしかなかったロゼッタ。屋敷には戻れない。戻ったらまた謹慎どころでは無くなる筈だ。
「ロゼッタ様、お茶をお持ちしました」
「…………イヴァンカ……一人で居ると嫌な事を考え込んでしまうの……話相手になって貰えないかしら……貴女の仕事が落ち着いてからで構わないから」
「お付き合い致します」
数人の侍女も話に付き合ってくれて、王都の話やロゼッタが住む街の話、久しぶりに仕事以外の話をマキシマス以外の人間と話をした気がする。
「………ん?帰られますよ、マキシマス様が」
「え?」
イヴァンカや、侍女達が立ち上がる。ロゼッタはイヴァンカが何故分かるのか分からなかった。マキシマスが帰って来るのを。
「帰った………ロゼッタは?」
「あちらに」
「……………マキシマス……」
「……………綺麗だ……ロゼッタ」
ロゼッタに背を向け、帰って来たマキシマス。目の前のイヴァンカが手を翳し、ロゼッタが居る方向に座るロゼッタを促す。ロゼッタは遅れて立ち上がるが、屋敷の事を聞こうとしたのが、マキシマスは全く別の事を言った。
「当然でございましょう?ロゼッタ様は元が良いご令嬢なんですから」
「……………ロゼッタ……綺麗だ……」
「………さっきから、それしか言ってないわよ?マキシマス」
「………あ、す、すまない………あまりにも綺麗過ぎて……」
抱き締められそうだったので、イヴァンカ達の目が気になり後ろに下がる。
「あ、あの………如何なったの?お父様は何て?」
「あぁ、今から話す……イヴァンカ」
「はぃはぃ、下がりますよ………マキシマス様、お父上様が此度の事、説明するようにとの事でしたわ………仕事を放り出したんですから」
「……………分かっている。ロゼッタに説明したら、父上に会いに行く」
「それが宜しいかと………失礼致します」
イヴァンカ達が部屋を出て行くと、マキシマスがソファに座る。
「ロゼッタも座って」
「………お茶入れましょうか?」
「いや、君の屋敷で飲んできたし今はいいよ………今から話す事は君にいい話ではないかもしれない……君の父上が、俺の父に会うのを条件に話合う……だが、ロベルトの両親と、君の父上との約束があるから、難航するだろう………俺が屋敷で君の父上とだけ話を願い出たら、ロベルトだけでなくサブリナも割って入って来てぐちゃぐちゃになったから、実行出来るかはまだ分からない」
「マキシマスは、父に何と言ったの?」
「え?………ただ、サブリナとは交際していたが、性格の不一致や価値観の違いで別れるつもりだったが、サブリナの早とちりで婚約者だと紹介されただけだ、と………まぁ、かなりご立腹だったがね………更にご立腹になったのはロゼッタの事だったが……」
「…………何て?」
「サブリナと一緒に会ったロゼッタに一目惚れをした、と……サブリナとの結婚をもう考えられなくなっている時に不謹慎だとは思ったが、サブリナには別れを伝えてから、ロゼッタに結婚を前提に付き合ってくれ、と話をしている…………とね」
「…………それでお父様は………」
「その時に、サブリナとロベルトが乱入したんだよ………それからはハチャメチャだ」
「…………話、まとまらなさそう……」
「ああ、まとまらないな………だから、言いたい事だけ言って帰って来た」
マキシマスは続ける。ロゼッタの身の安全を考え、ロベルトから守る為、別荘に暫く住まわせる。ロベルトという婚約者が居るのに、マキシマスがロゼッタを口説いたのだから、それに相当する慰謝料等をロベルト側に支払う。サブリナに関しても誤解を招いた事もあるのでサブリナにも慰謝料を支払う。ロゼッタは領主となる身ではある為、領主の任はロゼッタの意思も踏まえ今後話し合っていきたい。マキシマスの妻として、公爵夫人でありながら領主での仕事が出来るかどうかを考えたい、とマキシマスは伝えたらしい。だが、ロゼッタの父はロベルトもサブリナも部屋から追い出したものの、全部その通りに出来るものか、とマキシマスの父は言い、良い顔はされず、先ずはロベルトの両親と話し合いたいと言ってきたらしい。
マキシマスが帰宅して、その後ロベルトとサブリナに何を言われるか、ロゼッタは不安ではあった。
2
あなたにおすすめの小説
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
お姉様優先な我が家は、このままでは破産です
編端みどり
恋愛
我が家では、なんでも姉が優先。 経費を全て公開しないといけない国で良かったわ。なんとか体裁を保てる予算をわたくしにも回して貰える。
だけどお姉様、どうしてそんな地雷男を選ぶんですか?! 結婚前から愛人ですって?!
愛人の予算もうちが出すのよ?! わかってる?! このままでは更にわたくしの予算は減ってしまうわ。そもそも愛人5人いる男と同居なんて無理!
姉の結婚までにこの家から逃げたい!
相談した親友にセッティングされた辺境伯とのお見合いは、理想の殿方との出会いだった。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
王様の恥かきっ娘
青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。
本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。
孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます
物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります
これもショートショートで書く予定です。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる