【完結】鬼畜皇太子にロックオンされまして…………

プロローグ

　大国に挟まれ、迫害を受けながらも裕福な国として古来よりその地に住むツェツェリア族の国、ジェルバ国。この国から産出される宝石を狙い、大国に挟まれて数百年、何とか【輸出量】を近隣諸国に平均に渡す事で、その地に留まっている、言わば弱者の国だった。軍事力も大国に囲まれている事で反抗的になれば直ぐに滅んでしまうだろう、とジェルバ国の王は頭を悩ましていた。

「国王陛下、大変です！」
「如何した？」
「1人、国民が行方不明になっていたようです！」
「何だと！？」

　たった1人でも、少数しか居ないツェツェリア族にとって、欠ける訳にはいかない事情があるジェルバ国。子供だろうが、老人だろうが、国民全員の【涙】が必要で、その【涙】で出来た宝石が、ジェルバ国を守っていた。ジェルバ国を囲む様に大国が3国あるその全ての国に【迫害をしない】という条件のみで生かされている国で、対価は払われ裕福ではある国なのに、年間の輸出量を欠かすと均衡が崩れ兼ねなかった。

「まだ少女の様で、国境の壁の外に出て行った可能性もあり……以前から国の外に出たい、と洩らしていたようでして………」
「…………いつから居ないのだ、その少女は」
「昨夕からだそうです………街の者総出で探し回りましたが見つからず……」
「…………国外に出て捜索しては、他の民の身の危険が………」
「その少女の両親は探して欲しいと………」
「……………無理であろう……手掛かりはあるのなら話は変わるが………もし国外に出たら命の保証さえ………」

　国王も、民の無事を祈り頭を悩ました。
　過去にも何度となく、国外へ出て帰って来た者は居らず、行方不明になった者を捜索した者さえも戻らなかった。ただ、無事であれば良い、と願うのみ。

「大変です！！陛下！！」
「今度は何事だ！！」
「国境の壁を崩され、山賊が国に侵略を！！」
「何だと！！」
「既に、民の何十人かは拉致をされている模様！！直ぐに兵達も其方へ行かせました！！陛下、ご指示を！！」
「民を守れ！！山賊を捕まえろ！！民を奪われるな！！」

　玉座に腰を落とす国王は、頭を抱える。

「なんて事だ………今日は隣国のモルディア皇国の、皇太子が来るというのに……………はっ！！マシュリーは部屋に居るだろうな！？今直ぐ確認をして参れ！！」
「はっ！！」
「お父様、わたくしは此処に居りますわ………今日は騒がしくて気になって、来てしまいました………早く鎮圧して下さいませ」
「マシュリー………其方が街中に行っておらず良かった………」
「今日は出るな、と仰ったじゃありませんか………来客がお見えになるのでしょう？」

　ゆっくりと、侍女を引き連れ国王の側にやって来る王女、マシュリー。凛とした佇まいだが、柔らかな微笑みを国王に向けた、ジェルバ国の唯一の王女。美しい金髪に金の瞳の外見は、ジェルバ国王族の証明であり、ツェツェリア族唯一無二の血脈だった。