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初夜は何処迄も甘く♡
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しおりを挟む大聖堂の結婚式が始まり、厳かな雰囲気で誓いの言葉を交わすマシュリーとルカス。
「では、誓いのキスを」
「……………」
マシュリーとルカスが見つめ合い、ルカスがマシュリーのヴェールを上げる。その後のキスがマシュリーには不安を感じつつ目を瞑る。軽いキスならいいが、ルカスはそうならない可能性があるのだ。ステンドガラスから差し込む光で、マシュリーの金の髪が輝くと、幻想的な2人の姿に誰もが魅了された。
「マシュリー………」
「……………」
ポソっと声が掛かり、ルカスの息を感じると、そっと重なる唇。その瞬間、ステンドガラスに差し込む光が強くなり、大聖堂の参列者や、大聖堂の外から悲鳴に近い叫び声が飛び交った。
「「!!」」
ルカスがその気配からマシュリーを守る様にステンドガラスに目を向けて警戒する。
『モルディアの末裔よ………』
「!!……………誰だ!」
『我は神よりの使徒………かつて、モルディアの神力を封印した者の1人だ』
神々しく、光輝く男でも女にも見える神秘的な神の使徒となるその人は、皇帝とルカスに向かい話す。参列者の者達は警戒心が強く、大聖堂の中で逃げ惑い、警備の兵士達は武器を取り、皇帝や皇妃、ルカス、マシュリーを守ろうと近寄って来た。
「…………武器を引け!」
「「「!!」」」
皇帝は兵士達に命令を下すと、使徒は言葉を続けた。
『……………我は、モルディアの末裔を試し100年の神力を封印した……今ここで、モルディアの神力の封印を解く』
「100年にはまだ数年あったのでは………」
『ツェツェリアもかつて、神の末裔………神はツェツェリアの行く末を嘆き、神の血を持つ者同士の殺戮を止めたかった……それがこの日を境にそのいがみ合いが終わると、神は予見されたのだ』
「……………ツェツェリアの宝石も神力なのか……」
『そうだ………婚姻を結び、日を跨ぐ頃、封印を解く様にしてある………我はその知らせに来ただけだ…………またモルディアがかつての殺戮をする様であれば、今度こそ神力は消滅させる………良いな?モルディアの末裔達よ』
「…………了解した………父上も良いですね?」
「勿論だ、先祖の過ちは二度と子孫にはさせぬ」
『……………その誓い……破るなよ……ツェツェリアの末裔よ……モルディアの祖の罰は今ここで許された……ツェツェリアもモルディアを許されよ』
「…………はい、勿論です」
結婚式の誓いより、重さがある誓い。この誓いは、未来にも引継いで行かなければならない、と改めて思わされた瞬間だった。
パニックになった大聖堂と周辺は、使徒が消えてから直ぐに落ち着き、外に居た者達からは、大聖堂に向けて天から光が落ちて来た、と話していた。神秘的なその光を見た者は、始めは驚きふためいたが、幸せな気持ちになったという。
結婚式が終わり、城では夜会が開かれた。話をするのは、昼間の結婚式の話で持ち切りで、モルディア皇族の神力の封印を解かれた事にも喜ぶ者も多かった。
「一体、モルディア皇族の神力はどんな物なのか……」
「素晴らしい物だろう、きっと」
「まさか、ツェツェリア族も神力があったとは………ツェツェリア知事改め、ジェルバ公爵となられた公爵に話を伺おうぞ」
夜会が始まり、マシュリーはルカスと共に入場する。ウエディングドレスのまま、髪型を変えてルカスと共に入るマシュリーに、柔らかな笑顔を見せる夜会参加者達。
「美しい方だ」
「ツェツェリアの方々は皆美しいのだろうか……まだ自治区への出入りは許可が無ければ入れぬからなぁ」
「お近付きになりたいわぁ、マシュリー妃殿下に」
皇帝の乾杯の挨拶が終わり、マシュリーとルカスはファーストダンスをする事が決まっていて、ルカスのエスコートで広間の中央にマシュリーも付いて行く。
「ルカス様、今回は退室出来ませんからね」
「………あ、拒否された……」
「わたくし達が主役ですのよ?婚約の発表の夜会でも、わたくし達が主役でしたのに……」
「…………分かってるよ……あぁ、早く終わらないかなぁ」
始まったばかりの夜会で、既に終わらせたいらしい。マシュリーからすれば、大事な交流の場を無駄にしたくはないので、楽しみにしていたのだが、ルカスは早くマシュリーとイチャイチャしたいだけ。
「…………連れ出さないで下さいね?」
「………はぁ………」
ダンスが終わると、後は自由ではある。他の貴族からダンスを誘われ、誘うのも自由で、マシュリーとルカスが終わると、マシュリーには貴族男性から、ルカスは貴族女性から誘われる。
「…………すまないが、マシュリーは私の許可した者以外、誰とも踊らせない………先ずは、私を通して頂きたい」
「で、では許可を!」
「駄目だ」
「私は、殿下と踊りたいですわ」
「私はマシュリー以外とは踊らない………すまないな」
中央から逃げる様に、玉座の方へマシュリーを連れて行くルカス。流石の貴族達は玉座の方迄、追い掛ける勇気は無いようだ。皇帝や皇妃の前で、断られているのにはしたなくお願いに当たるのは、恥ずかしい行為ではあるからだ。
「ワインを」
ルカスは椅子に座ると、侍女にワインを頼む。2杯持ち込まれたワインのグラスを、マシュリーにも手渡す。
「飲む?」
「ありがとうございます、頂きますわ」
玉座の上で、親しく会話を始めるマシュリーとルカスの仲睦まじくする姿を見せた事は、モルディア皇国の民に幸せを与えた。
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